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12月19日(水)
第62話
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「こんなとこまで、垂れてますね」
暁斗が俺の鎖骨辺りをティッシュで拭った。
そのまま、俺のネクタイを緩めて、しゅるしゅると布の擦れる音を立てながら抜き去っていく。Yシャツのボタンを外されていけば、甘い情事への期待に胸が熱くなる。
暁斗は下だけ脱いだ格好だった。少し緩めたネクタイが邪魔そうで、抜いてやろうと、手を伸ばした。けれど、暁斗の方が逸早く俺のシャツの前をはだけさせて、両肩から滑り落とした。
くすっと意味深な笑みを浮かべながら、やんわりと抱き締められた。肩に暁斗の顎がのし掛かり、素肌の胸は暁斗の布越しからでも伝わる体温に安堵する。けれど、背中に回された腕が、何か不可解な動きをしていることに気がついて、イヤな予感がした。
「これ、どうなってるんだ?」
「袖の端を結んだだけですよ」
暁斗が身体を離すと、背中に回った腕が動かせなくなっていた。身動いでみてもびくともしない。両腕が拘束されると、途端に自由が利かなくなるようで、じとりと得たいの知れない悪寒が背筋を走った。
「痛いことはしませんから」
「暁斗ってSっ気あるよな」
虚勢を張って、暁斗に冗談ぽく笑いかけた。以前、ネクタイで手首を縛られたときのことを思い出す。
「そんなことありませんよ。…………でも、縛りたい願望はあります」
「それが。……もう、いい」
男の俺のことを、女のように犯したい、という願望そのものが、サディストであることを物語っているようにも思えた。けれど、甘んじて彼を受け入れようとしている俺も、似たようなものなのかもしれない。
「宅飲みしましょうか」
「なんだよ?」
互いに着衣を乱れさせて、とても呑むような雰囲気ではないはずだった。
暁斗は笑みを浮かべたまま、汗をかき始めた缶ビールを掴んだ。プルタブに指をかけて、プシュッと缶を開ける音が響く。暁斗は、そのまま口に押し当てて、缶ビールを傾ける。けれど、飲み込む気配はなく、俺の唇に暁斗の唇が重なる。
呆気に取られているうちに、顎を引かれて口を開かされれば、そのまま生温かいビールが流れ込んでくる。仕方なく飲み込んだ。
「これ、宅飲みじゃないだろ」
暁斗は俺の問には答えずに、熱っぽい眼差しで、口移しで温くて不味いビールを飲ませてくる。胃の中が熱くなり、じわじわと身体中にアルコールが回ってくる。
頼るものがなくなって、暁斗の肩口に頭を預けると、熱い溜め息を吐いた。
「暁斗、これイヤだ……」
「もう少し呑んでくださいよ」
酒は強くない。胃の中に何もなければ、すぐに酔いが回ってしまう。居酒屋で一杯呑んだものの、ツマミが少なかったため、それがやっとだった。
暁斗は容赦なく、何度も無理に口移しでビールを流し込んできて、缶の半分ほどが胃の中に入ってきていた。ドクドクと動悸が激しく脈打ち、顔に熱が上がってきて、自分でも顔が赤くなっているだろうことが容易に想像がつく。
「佑介って、本当に下戸ですね」
「もう、やめろよ」
飲みきれない液体が唇の端から垂れていく。暁斗が舌先で舐めとりながら、そのまま首筋に舌を這わせてきた。ソファに横倒しに寝かせられて、上半身を探るように撫で回される。
「は、……ん、」
鼻から抜けるような声が漏れて羞恥心が煽られる。けれど、寝かせられると、アルコールが更に頭に回ってくるようで、目の前の暁斗の顔がぼんやりとしてくる。
「佑介、とろんとしてきましたね」
「ん、んん……」
暁斗がじっと瞳を覗き込んできて、愛しそうに唇を重ねてきた。暁斗の首に腕を回そうとして、腕が動かせなくて、なんだか、それがとても切なくて、涙腺がゆるんだ。
暁斗が俺の鎖骨辺りをティッシュで拭った。
そのまま、俺のネクタイを緩めて、しゅるしゅると布の擦れる音を立てながら抜き去っていく。Yシャツのボタンを外されていけば、甘い情事への期待に胸が熱くなる。
暁斗は下だけ脱いだ格好だった。少し緩めたネクタイが邪魔そうで、抜いてやろうと、手を伸ばした。けれど、暁斗の方が逸早く俺のシャツの前をはだけさせて、両肩から滑り落とした。
くすっと意味深な笑みを浮かべながら、やんわりと抱き締められた。肩に暁斗の顎がのし掛かり、素肌の胸は暁斗の布越しからでも伝わる体温に安堵する。けれど、背中に回された腕が、何か不可解な動きをしていることに気がついて、イヤな予感がした。
「これ、どうなってるんだ?」
「袖の端を結んだだけですよ」
暁斗が身体を離すと、背中に回った腕が動かせなくなっていた。身動いでみてもびくともしない。両腕が拘束されると、途端に自由が利かなくなるようで、じとりと得たいの知れない悪寒が背筋を走った。
「痛いことはしませんから」
「暁斗ってSっ気あるよな」
虚勢を張って、暁斗に冗談ぽく笑いかけた。以前、ネクタイで手首を縛られたときのことを思い出す。
「そんなことありませんよ。…………でも、縛りたい願望はあります」
「それが。……もう、いい」
男の俺のことを、女のように犯したい、という願望そのものが、サディストであることを物語っているようにも思えた。けれど、甘んじて彼を受け入れようとしている俺も、似たようなものなのかもしれない。
「宅飲みしましょうか」
「なんだよ?」
互いに着衣を乱れさせて、とても呑むような雰囲気ではないはずだった。
暁斗は笑みを浮かべたまま、汗をかき始めた缶ビールを掴んだ。プルタブに指をかけて、プシュッと缶を開ける音が響く。暁斗は、そのまま口に押し当てて、缶ビールを傾ける。けれど、飲み込む気配はなく、俺の唇に暁斗の唇が重なる。
呆気に取られているうちに、顎を引かれて口を開かされれば、そのまま生温かいビールが流れ込んでくる。仕方なく飲み込んだ。
「これ、宅飲みじゃないだろ」
暁斗は俺の問には答えずに、熱っぽい眼差しで、口移しで温くて不味いビールを飲ませてくる。胃の中が熱くなり、じわじわと身体中にアルコールが回ってくる。
頼るものがなくなって、暁斗の肩口に頭を預けると、熱い溜め息を吐いた。
「暁斗、これイヤだ……」
「もう少し呑んでくださいよ」
酒は強くない。胃の中に何もなければ、すぐに酔いが回ってしまう。居酒屋で一杯呑んだものの、ツマミが少なかったため、それがやっとだった。
暁斗は容赦なく、何度も無理に口移しでビールを流し込んできて、缶の半分ほどが胃の中に入ってきていた。ドクドクと動悸が激しく脈打ち、顔に熱が上がってきて、自分でも顔が赤くなっているだろうことが容易に想像がつく。
「佑介って、本当に下戸ですね」
「もう、やめろよ」
飲みきれない液体が唇の端から垂れていく。暁斗が舌先で舐めとりながら、そのまま首筋に舌を這わせてきた。ソファに横倒しに寝かせられて、上半身を探るように撫で回される。
「は、……ん、」
鼻から抜けるような声が漏れて羞恥心が煽られる。けれど、寝かせられると、アルコールが更に頭に回ってくるようで、目の前の暁斗の顔がぼんやりとしてくる。
「佑介、とろんとしてきましたね」
「ん、んん……」
暁斗がじっと瞳を覗き込んできて、愛しそうに唇を重ねてきた。暁斗の首に腕を回そうとして、腕が動かせなくて、なんだか、それがとても切なくて、涙腺がゆるんだ。
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