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皐月
第十五話
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日曜日の朝は、布団から抜け出すことが少しばかり億劫である。少し開いたカーテンの隙間からは、陽射しが差し込み、早く起きろと急かすようであった。
溜め息混じりに寝返りを打てば、背を向けて眠っている男が居た。深夜の二時過ぎに店仕舞いした男を、意味もなく起こすのは憚られる。それでも、腕を伸ばして、布団からはみ出している大きな背中に指先で触れれば、確かにぬくもりを感じられた。
僅かに手にした温かさは手放し難く、もっと、確かな熱を欲してしまう。少し身動いで、額を背中に押し当てれば、貴俊の熱や匂いに胸が一杯になる。しばらく、いや、ずっと、こうしていたくなる。
「おはよう、」
声と共に、頭に大きな手が被さってくる。背中を向けていた身体が寝返りを打って、向かい合わせになれば、子供をあやすように頭を撫でられた。とろんと眠たそうな目元に、可笑しくなって、口元が緩んでしまう。
ゆっくりと後頭部を押されると、自然に唇と唇が重ね合わされる。男の唇から漏れる息は、ツンと酒臭い。それでも、もっと、深く、肺が満たされるまで、吸っていたくなる。舌を潜り込ませれば、応えるように擦り合わされた。いつかの甘い悦楽を思い出し、腹の奥が熱くなる。
劣情を含んだ指先で、男の太股を撫でた。男が身動いで、唇を離したので、そっと唇を耳元に寄せる。
「久しぶりに、するか?」
耳を甘噛みして、首筋に軽く唇を落とす。
「…………悪い、疲れてて、」
少しの沈黙と、掠れた声。思わず溜め息が溢れた。自分から誘って、かわされることにも、もう慣れてしまった。
「それに、下にハルが寝てるから、」
「…………そっか、」
言い訳がましい理由を口にする男の胸を押して、引き離すと、布団から起き上がった。ハルくんが居間で寝泊まりする回数も増えた気がする。
「真人」
呼ばれた方に顔を向けた。
「籍を入れてくれって話だけど、」
「……うん」
蒸し返された話題に、顔が強張った。
「忘れてくれていいから」
「え……、」
「俺はこんな風に自由にやっているから、『外』で働いている真人の立場をちゃんと理解できていなかったのかもしれない」
呆気に取られる。真剣な眼差しに、何を言えばいいのか、わからなくなる。
「もう無理は言わない」
腕を引かれて抱き止められる。背中に回された腕の力があまりにも強くて、一瞬、息が止まる。
「だから、ここに居てくれるよな?」
切な気な声色に、胸が苦しくなる。
「どこにも行ったりしないよ」
貴俊の背中に腕を回して、肩口に頬を押し当てた。この場所以外には、行きたいところなど、在りはしない。それでも、いつまでも、この場所に居てもいいのか、答えを見出だせずにいる。
溜め息混じりに寝返りを打てば、背を向けて眠っている男が居た。深夜の二時過ぎに店仕舞いした男を、意味もなく起こすのは憚られる。それでも、腕を伸ばして、布団からはみ出している大きな背中に指先で触れれば、確かにぬくもりを感じられた。
僅かに手にした温かさは手放し難く、もっと、確かな熱を欲してしまう。少し身動いで、額を背中に押し当てれば、貴俊の熱や匂いに胸が一杯になる。しばらく、いや、ずっと、こうしていたくなる。
「おはよう、」
声と共に、頭に大きな手が被さってくる。背中を向けていた身体が寝返りを打って、向かい合わせになれば、子供をあやすように頭を撫でられた。とろんと眠たそうな目元に、可笑しくなって、口元が緩んでしまう。
ゆっくりと後頭部を押されると、自然に唇と唇が重ね合わされる。男の唇から漏れる息は、ツンと酒臭い。それでも、もっと、深く、肺が満たされるまで、吸っていたくなる。舌を潜り込ませれば、応えるように擦り合わされた。いつかの甘い悦楽を思い出し、腹の奥が熱くなる。
劣情を含んだ指先で、男の太股を撫でた。男が身動いで、唇を離したので、そっと唇を耳元に寄せる。
「久しぶりに、するか?」
耳を甘噛みして、首筋に軽く唇を落とす。
「…………悪い、疲れてて、」
少しの沈黙と、掠れた声。思わず溜め息が溢れた。自分から誘って、かわされることにも、もう慣れてしまった。
「それに、下にハルが寝てるから、」
「…………そっか、」
言い訳がましい理由を口にする男の胸を押して、引き離すと、布団から起き上がった。ハルくんが居間で寝泊まりする回数も増えた気がする。
「真人」
呼ばれた方に顔を向けた。
「籍を入れてくれって話だけど、」
「……うん」
蒸し返された話題に、顔が強張った。
「忘れてくれていいから」
「え……、」
「俺はこんな風に自由にやっているから、『外』で働いている真人の立場をちゃんと理解できていなかったのかもしれない」
呆気に取られる。真剣な眼差しに、何を言えばいいのか、わからなくなる。
「もう無理は言わない」
腕を引かれて抱き止められる。背中に回された腕の力があまりにも強くて、一瞬、息が止まる。
「だから、ここに居てくれるよな?」
切な気な声色に、胸が苦しくなる。
「どこにも行ったりしないよ」
貴俊の背中に腕を回して、肩口に頬を押し当てた。この場所以外には、行きたいところなど、在りはしない。それでも、いつまでも、この場所に居てもいいのか、答えを見出だせずにいる。
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