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side-B
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散々好き放題やられて呆けていたが、ようやくダルい身体を起こした。背後では、男がパソコンを触っていたから、なんとなはしに手元を覗き込む。結婚式の披露宴で流すであろう、ありがちな新郎新婦の思い出の動画のようだった。
「こんな寒い動画、作ったのか?」
「彼女の希望だったからな」
彼の二十七年間は、さぞかし輝かしいものだったのだろう。彼の人生はキレイにまとめられていて、どの写真も太陽のような笑顔が溢れている。
けれど、その中に、オレが写っている写真は一枚もなかった。彼にとって、オレは隠したい存在なのだろう。
それにしても、幼少期の彼は、こんなに純粋で、天使のようだったのに、今では男の尻を掘って悦ぶサディストだ。人生はわからないものだな、なんて可笑しくて笑えてくる。
「この子たくさん写ってるな」
「んー? 幼馴染だからな」
中学生の彼の隣で微笑んでいる、愛らしい少年が気になった。少し内気そうに見えるが、目元が綺麗で、どこか艶っぽい。
「なんだよ?」
「この子とも寝たのか?」
「こいつは……そういうんじゃねぇよ」
珍しく不快感を露に睨まれた。
大切なオトモダチってやつなのだろう。オレにはそんな友人はいないから、よくわからないが、友情というものは、きっといいものなのだろう。
彼はオレから目を逸らして、少し考え事をしているようだった。
「なあ、明日の二次会、本当に来るのか?」
「は? 連絡を寄越したのはお前だろ?」
唐突に嫌そうな顔で聞かれて、殴り付けられたような痛みを感じた。
オレが呼ばれたのは、今日のこのセックスのための口実だったのだと突きつけられたのだ。けれど、すぐに動画の愛らしい少年が脳裏を過っていく。
「もしかして、オレがお前の友だちに、余計なこと言うんじゃないかって疑ってるんだ?」
「別に。お前が変なこと言ったら、お前の写真の使い方考えるだけだから」
「あはは、相変わらず、ゲスいなぁ」
どのハメ撮り写真のことか、わからないぐらいに、卑猥な写真はたくさん撮られた。まだ、持っていたのかと呆れなくもない。それともただのハッタリだろうか。
「そんなことしないから。お前との関係なんかバラしてもオレになんの得もないだろ」
今さら被害者ぶるつもりもない。オレだって楽しんだし、彼は極悪非道というほどでもなかった。ただ、下半身がだらしなく、オレというチョロいカモを暇潰しに相手をしていたに過ぎない。
服を着込んで、身なりを整える。そうして窮屈な首輪を外して、彼に手渡した。誕生日のプレゼントだとかで、犬用の首輪をつけられたときの屈辱と倒錯した快楽は、忘れたことはなかった。けれど、もう、オレにはこれは必要ない。
「バイバイ。ご主人さま」
笑顔でさよならを言うと、いきなり髪を掴まれて、壁に頭を打ち付けられた。ぶちぶちと髪が千切れる音。目の前に星が飛び、脳が揺れる。
「生意気なんだよ」
男が馬乗りになって、オレの首に首輪を巻き付けた。ギリギリと締め付けられて、首が絞まり、息ができない。血走った瞳に、明確な怒りを感じた。
「一生つけてろよ、くそ犬ッ」
彼には情緒とか、感傷とか、そういうものが、欠落しているのだろうか。意識が遠退きかけ頃に、首の絞まりが弱まった。酷く噎せて、必死に酸素を吸い込んだ。
「とっとと、出てけよ」
男はそう言い放つ。
急な激昂の意味がわからなかったが、彼のいうことは絶対だった。彼はオレの方を見ようともしない。オレは咳き込みながらも無言で、部屋を後にする他なかった。そうして、近くの公園に立ち寄ると、無理やりつけられた首輪を外してゴミ箱に捨てる。いらないものを押し付けられたのが気に食わなかったのだろうか。
もう、どうでもいいことだけれど。
「こんな寒い動画、作ったのか?」
「彼女の希望だったからな」
彼の二十七年間は、さぞかし輝かしいものだったのだろう。彼の人生はキレイにまとめられていて、どの写真も太陽のような笑顔が溢れている。
けれど、その中に、オレが写っている写真は一枚もなかった。彼にとって、オレは隠したい存在なのだろう。
それにしても、幼少期の彼は、こんなに純粋で、天使のようだったのに、今では男の尻を掘って悦ぶサディストだ。人生はわからないものだな、なんて可笑しくて笑えてくる。
「この子たくさん写ってるな」
「んー? 幼馴染だからな」
中学生の彼の隣で微笑んでいる、愛らしい少年が気になった。少し内気そうに見えるが、目元が綺麗で、どこか艶っぽい。
「なんだよ?」
「この子とも寝たのか?」
「こいつは……そういうんじゃねぇよ」
珍しく不快感を露に睨まれた。
大切なオトモダチってやつなのだろう。オレにはそんな友人はいないから、よくわからないが、友情というものは、きっといいものなのだろう。
彼はオレから目を逸らして、少し考え事をしているようだった。
「なあ、明日の二次会、本当に来るのか?」
「は? 連絡を寄越したのはお前だろ?」
唐突に嫌そうな顔で聞かれて、殴り付けられたような痛みを感じた。
オレが呼ばれたのは、今日のこのセックスのための口実だったのだと突きつけられたのだ。けれど、すぐに動画の愛らしい少年が脳裏を過っていく。
「もしかして、オレがお前の友だちに、余計なこと言うんじゃないかって疑ってるんだ?」
「別に。お前が変なこと言ったら、お前の写真の使い方考えるだけだから」
「あはは、相変わらず、ゲスいなぁ」
どのハメ撮り写真のことか、わからないぐらいに、卑猥な写真はたくさん撮られた。まだ、持っていたのかと呆れなくもない。それともただのハッタリだろうか。
「そんなことしないから。お前との関係なんかバラしてもオレになんの得もないだろ」
今さら被害者ぶるつもりもない。オレだって楽しんだし、彼は極悪非道というほどでもなかった。ただ、下半身がだらしなく、オレというチョロいカモを暇潰しに相手をしていたに過ぎない。
服を着込んで、身なりを整える。そうして窮屈な首輪を外して、彼に手渡した。誕生日のプレゼントだとかで、犬用の首輪をつけられたときの屈辱と倒錯した快楽は、忘れたことはなかった。けれど、もう、オレにはこれは必要ない。
「バイバイ。ご主人さま」
笑顔でさよならを言うと、いきなり髪を掴まれて、壁に頭を打ち付けられた。ぶちぶちと髪が千切れる音。目の前に星が飛び、脳が揺れる。
「生意気なんだよ」
男が馬乗りになって、オレの首に首輪を巻き付けた。ギリギリと締め付けられて、首が絞まり、息ができない。血走った瞳に、明確な怒りを感じた。
「一生つけてろよ、くそ犬ッ」
彼には情緒とか、感傷とか、そういうものが、欠落しているのだろうか。意識が遠退きかけ頃に、首の絞まりが弱まった。酷く噎せて、必死に酸素を吸い込んだ。
「とっとと、出てけよ」
男はそう言い放つ。
急な激昂の意味がわからなかったが、彼のいうことは絶対だった。彼はオレの方を見ようともしない。オレは咳き込みながらも無言で、部屋を後にする他なかった。そうして、近くの公園に立ち寄ると、無理やりつけられた首輪を外してゴミ箱に捨てる。いらないものを押し付けられたのが気に食わなかったのだろうか。
もう、どうでもいいことだけれど。
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