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地元の国立大学への入学を機に、大学近くのアパートを借りて一人暮らしを始めることにした。新たな気持ちでキャンパスライフを楽しんで、新しい友人たちと遊び回っていれば、なんとなく彼女のようなものもできていた。
俺も彼女もあまり誠実なタイプではなく、お互いに浮気癖のある似た者同士。浮き沈みも激しく、くっついたり、別れたりを繰り返しながらも、だらだらと付き合い続けていた。
彼と出会ったのはそんな時だった。第一印象は、どことなく幼馴染に似ている気がした。顔立ちは全然違うのだけれど、そのときの髪型や、物静かな雰囲気のせいだろうか。
彼は時々、熱っぽい視線で俺を見つめていることがあった。だから、飲み会で隣りの席になったときに、酔ったフリで、そっと手を重ねてみたのだ。彼がびくりと肩を震わせるものだから、からかってやろうなんて軽い気持ちで耳元で囁いた。
「お前なら男でもイケるかも」
彼の艶っぽく上目遣いに、俺は、こいつなら抱いてもいいかな、なんて、やたら興奮したのを覚えている。
彼は俺のドコにそれほど惹かれたのだろう。えらく俺に心酔しているようだった。出かけた先で、なんとはなしに、これいいな、と口にすると「プレゼントするよ」と、すぐに財布の紐を緩めてしまう。
彼は実家が太いのだろう、なんてしばらくは楽観していたが、彼は俺へのプレゼントのために、バイトしながら必死に金を貯めていたようだった。
そんな彼の健気さに、いつの間にか俺の方が溺れていたのかもしれない。俺が望めば、彼は、どんなプレイも受け入れてくれた。女の身体とは全然違っていたが、どこもかしこも敏感で艶かしい。そんな彼のことが可愛くて、愛しくて、めちゃくちゃに犯したくて、泣かせたくて、鳴かせたくて、仕方がなかった。
どこまで俺の言うことを聞くのだろう。どこまで俺のことを愛してくれるのだろう。彼への想いが募るほど、プレイもエスカレートしていってしまう。
彼の誕生日に、赤い首輪をプレゼントをしてみれば、彼は不愉快そうに眉を曇らせた。それでも、俺がつけてやると、恍惚な顔をして悦んだ。
結局のところ、彼は、どれほど口でイヤがって、泣いても、喚いても、最後には俺の命令に従って、抱いて欲しいと縋ってくる。
俺たちの愛は歪んでいるのかもしれない。けれど、安っぽいうわべだけの関係とは違い、深いところで固く結ばれているのだ。だから、彼は、これからも、俺の側で、最愛の恋人として、ずっと、生きていくのだと信じていた。
「東京で就職しようと思う」
振り絞って発した彼の言葉など、取るに足らない世迷い言だと思った。少し冷たくしすぎて、拗ねてしまったのかもしれない、なんて楽観していた。彼が本気で俺から離れるつもりだなんて、そんなことがあるはずがないのだから。
それなのに、彼は俺を置いて本当に上京していった。俺たちの愛はいったいどこに消えてしまったのだろう。すぐに、俺のことが恋しくなって、地元に帰ってくるんじゃないか。そんな淡い期待に縋ってみれるほどの気力すらなかった。
彼からのメッセージに返信する気も失せて、俺はスマホを投げ捨てた。
俺はいつも気づくのが遅い。
彼は俺のことなど、愛してなどいなかったのだ。ただ自分の性癖を満たしてくれる男を求めていて、俺はもう、その役目が果たせなくなったのだろう。
もう彼を諦めざるを得なくて、それは幼馴染を諦めたときのような、身を裂かれるような痛みを伴った。
俺も彼女もあまり誠実なタイプではなく、お互いに浮気癖のある似た者同士。浮き沈みも激しく、くっついたり、別れたりを繰り返しながらも、だらだらと付き合い続けていた。
彼と出会ったのはそんな時だった。第一印象は、どことなく幼馴染に似ている気がした。顔立ちは全然違うのだけれど、そのときの髪型や、物静かな雰囲気のせいだろうか。
彼は時々、熱っぽい視線で俺を見つめていることがあった。だから、飲み会で隣りの席になったときに、酔ったフリで、そっと手を重ねてみたのだ。彼がびくりと肩を震わせるものだから、からかってやろうなんて軽い気持ちで耳元で囁いた。
「お前なら男でもイケるかも」
彼の艶っぽく上目遣いに、俺は、こいつなら抱いてもいいかな、なんて、やたら興奮したのを覚えている。
彼は俺のドコにそれほど惹かれたのだろう。えらく俺に心酔しているようだった。出かけた先で、なんとはなしに、これいいな、と口にすると「プレゼントするよ」と、すぐに財布の紐を緩めてしまう。
彼は実家が太いのだろう、なんてしばらくは楽観していたが、彼は俺へのプレゼントのために、バイトしながら必死に金を貯めていたようだった。
そんな彼の健気さに、いつの間にか俺の方が溺れていたのかもしれない。俺が望めば、彼は、どんなプレイも受け入れてくれた。女の身体とは全然違っていたが、どこもかしこも敏感で艶かしい。そんな彼のことが可愛くて、愛しくて、めちゃくちゃに犯したくて、泣かせたくて、鳴かせたくて、仕方がなかった。
どこまで俺の言うことを聞くのだろう。どこまで俺のことを愛してくれるのだろう。彼への想いが募るほど、プレイもエスカレートしていってしまう。
彼の誕生日に、赤い首輪をプレゼントをしてみれば、彼は不愉快そうに眉を曇らせた。それでも、俺がつけてやると、恍惚な顔をして悦んだ。
結局のところ、彼は、どれほど口でイヤがって、泣いても、喚いても、最後には俺の命令に従って、抱いて欲しいと縋ってくる。
俺たちの愛は歪んでいるのかもしれない。けれど、安っぽいうわべだけの関係とは違い、深いところで固く結ばれているのだ。だから、彼は、これからも、俺の側で、最愛の恋人として、ずっと、生きていくのだと信じていた。
「東京で就職しようと思う」
振り絞って発した彼の言葉など、取るに足らない世迷い言だと思った。少し冷たくしすぎて、拗ねてしまったのかもしれない、なんて楽観していた。彼が本気で俺から離れるつもりだなんて、そんなことがあるはずがないのだから。
それなのに、彼は俺を置いて本当に上京していった。俺たちの愛はいったいどこに消えてしまったのだろう。すぐに、俺のことが恋しくなって、地元に帰ってくるんじゃないか。そんな淡い期待に縋ってみれるほどの気力すらなかった。
彼からのメッセージに返信する気も失せて、俺はスマホを投げ捨てた。
俺はいつも気づくのが遅い。
彼は俺のことなど、愛してなどいなかったのだ。ただ自分の性癖を満たしてくれる男を求めていて、俺はもう、その役目が果たせなくなったのだろう。
もう彼を諦めざるを得なくて、それは幼馴染を諦めたときのような、身を裂かれるような痛みを伴った。
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