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沙夜の話
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神主さんと話をするために
私は昨日、もう一度一人で神社に行ってきたの
神主さんは、すべて知っていたわ
指輪のことも
御神木が村人の呪いの進行を抑えていることも
それなのに、隠していた
どうしてかわかる?
村人を外の世界に出さないためよ
神主さんは
終わらせようとしているの
桜居さんは気づいたかしら
村の中に外の世界の物があったこと
小麦粉や料理の調味料や薬
そんな些細なものだけど
あれは、神主さんが外の世界から持ってきたものなの
半年くらい前までは
神主さんは周期の間に村の外に出て
いろいろなものを村に持ち帰ってきたわ
でも
それはできなくなった
神主さんは
もうじき亡くなるわ
そして、
詠も……
半年前の神事で、
詠は死期を告げられていたそうよ
神主さんが
昨日、私にだけ話してくれた
二人を失ったら
村は
滅茶苦茶になる
村を出ようとする人もいるかもしれない
呪いは遺伝する
だから
神主さんは
外への唯一の通路を遮断するつもりなの
私たちが村から出たら
詠が吊り橋を落とすって言ってたわ
たぶん
今はもう橋は無くなってるから
村には戻れない
誰にも救えないわ
村も
神主さんも
詠も
誰にも救うことはできないの
誰にも……
桜居さんには想像できるかしら
神主さんや詠の背負っているものの重さが
あの人たちだって
本当は、誰かにすがりたいのよ
救いを求めているのよ
村人と同じように呪われ
痛みに苦しんでるのだから
たとえ
神霊と話せるような
不思議な力があったとしても
私たちと同じ
人間なのよ
全部を投げ出して
村から逃げ出して
好きなように生きたかったと思うの
でも
無理だった
二人は
村人たちに監視されているから
神社があの場所に建てられたのは
神事で託宣を授かることのできる人間――月使
それと
二人が過去に村を出ていたこと
それも知ってるわよね
神主さんと私のお母さん
二人はね、村から逃げ出したの
その頃の月使は
お母さんたちのお母さんだったから
大きな混乱にはならなかったけど
突然月使の後継者がいなくなってしまったことは
村で大きな問題になったの
一年近く経って
神主さんだけが村に帰ってきた
村の人たちは神社の隣に家を建てて
沢角家の人間をそこに住まわせたわ
逃げられないように
神社の周りは崖になっていて
石段以外のところから山を降りることができないから
神主さんが村に戻ったのは
周期が近づいていたのと
村に好きな人がいたのが理由
詠が教えてくれたわ
その人がお父さんだって
詠が生まれる前に亡くなってしまったそうだけど
もう一方のお母さんは一度も村には帰らなかった
私とお父さんを連れて戻ってくるまで
みんなお母さんが生きてるとは思ってなかった
神主さんだって
お母さんが死んでしまったと思ってたそうよ
でも、帰ってきた
御神木の枝から指輪を作ったのは神主さんなの
お守り代わりにと思って、
村を一緒に出るときにお母さんに渡したらしいわ
神主さんが指輪の効果を知ったのは
お母さんが帰ってきてからだから
14年前──
神主さんは指輪のことを知っても
誰にも言わなかった
ずっと隠していたの
なぜなら
村は終わろうとしていたから
神主さんは長く続いた悲しい村の歴史に
今、終止符を打とうとしているの
止めることなんてできない
できなかった、私には
私は……
何も……
私は神主さんや詠を見捨てて……
ただ
彩を連れて村を出ることだけを考えるようにしていた
神主さんと詠が死んでしまったら
沢角家の人間はいなくなってしまうわ
だけど
代わりになる人間が一人だけいるの
神主さんと二人で話をして
詠の死期のことを知って
なぜ神主さんが村を出ることを
許してくれたのかわかったわ
お母さんと血が繋がっている彩が
次の月使にされてしまうかもしれないと思ったからよ
だから私たちが村を出ることを許してくれたの
村の人間じゃない私と桜居さん
そして、月使の血族の彩
この三人が同時にいなくなれば
神主さんは心置きなくできるのよ
村を滅びへと導くことが
私は昨日、もう一度一人で神社に行ってきたの
神主さんは、すべて知っていたわ
指輪のことも
御神木が村人の呪いの進行を抑えていることも
それなのに、隠していた
どうしてかわかる?
村人を外の世界に出さないためよ
神主さんは
終わらせようとしているの
桜居さんは気づいたかしら
村の中に外の世界の物があったこと
小麦粉や料理の調味料や薬
そんな些細なものだけど
あれは、神主さんが外の世界から持ってきたものなの
半年くらい前までは
神主さんは周期の間に村の外に出て
いろいろなものを村に持ち帰ってきたわ
でも
それはできなくなった
神主さんは
もうじき亡くなるわ
そして、
詠も……
半年前の神事で、
詠は死期を告げられていたそうよ
神主さんが
昨日、私にだけ話してくれた
二人を失ったら
村は
滅茶苦茶になる
村を出ようとする人もいるかもしれない
呪いは遺伝する
だから
神主さんは
外への唯一の通路を遮断するつもりなの
私たちが村から出たら
詠が吊り橋を落とすって言ってたわ
たぶん
今はもう橋は無くなってるから
村には戻れない
誰にも救えないわ
村も
神主さんも
詠も
誰にも救うことはできないの
誰にも……
桜居さんには想像できるかしら
神主さんや詠の背負っているものの重さが
あの人たちだって
本当は、誰かにすがりたいのよ
救いを求めているのよ
村人と同じように呪われ
痛みに苦しんでるのだから
たとえ
神霊と話せるような
不思議な力があったとしても
私たちと同じ
人間なのよ
全部を投げ出して
村から逃げ出して
好きなように生きたかったと思うの
でも
無理だった
二人は
村人たちに監視されているから
神社があの場所に建てられたのは
神事で託宣を授かることのできる人間――月使
それと
二人が過去に村を出ていたこと
それも知ってるわよね
神主さんと私のお母さん
二人はね、村から逃げ出したの
その頃の月使は
お母さんたちのお母さんだったから
大きな混乱にはならなかったけど
突然月使の後継者がいなくなってしまったことは
村で大きな問題になったの
一年近く経って
神主さんだけが村に帰ってきた
村の人たちは神社の隣に家を建てて
沢角家の人間をそこに住まわせたわ
逃げられないように
神社の周りは崖になっていて
石段以外のところから山を降りることができないから
神主さんが村に戻ったのは
周期が近づいていたのと
村に好きな人がいたのが理由
詠が教えてくれたわ
その人がお父さんだって
詠が生まれる前に亡くなってしまったそうだけど
もう一方のお母さんは一度も村には帰らなかった
私とお父さんを連れて戻ってくるまで
みんなお母さんが生きてるとは思ってなかった
神主さんだって
お母さんが死んでしまったと思ってたそうよ
でも、帰ってきた
御神木の枝から指輪を作ったのは神主さんなの
お守り代わりにと思って、
村を一緒に出るときにお母さんに渡したらしいわ
神主さんが指輪の効果を知ったのは
お母さんが帰ってきてからだから
14年前──
神主さんは指輪のことを知っても
誰にも言わなかった
ずっと隠していたの
なぜなら
村は終わろうとしていたから
神主さんは長く続いた悲しい村の歴史に
今、終止符を打とうとしているの
止めることなんてできない
できなかった、私には
私は……
何も……
私は神主さんや詠を見捨てて……
ただ
彩を連れて村を出ることだけを考えるようにしていた
神主さんと詠が死んでしまったら
沢角家の人間はいなくなってしまうわ
だけど
代わりになる人間が一人だけいるの
神主さんと二人で話をして
詠の死期のことを知って
なぜ神主さんが村を出ることを
許してくれたのかわかったわ
お母さんと血が繋がっている彩が
次の月使にされてしまうかもしれないと思ったからよ
だから私たちが村を出ることを許してくれたの
村の人間じゃない私と桜居さん
そして、月使の血族の彩
この三人が同時にいなくなれば
神主さんは心置きなくできるのよ
村を滅びへと導くことが
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