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120、*波紋*
銀映シネマを出た上田綾と橋本邦は永和の綾の実家へと場所を移した。
綾にすればこのまま邦を帰すには忍びなかったのだろう。
誰にも知れず思いのままに振舞える所と言えばそこしかなかった。
邦にすれば最終電車に間に合いさえすれば構わないと云った所であった。
少しでも長く一緒に居たいと思うのも分からずではない。
しかし、この結果が思わぬ事態を招く事をこの二人は知らずに居た。
さて、深夜に帰宅した上田徹は愛のメモ書きを見て、直ぐに小浜哲司に電話を掛けた。
彼から思いも寄らなかった話を聞くや、その怒りは全身を強張らせた。
恐らく、明日には何らかの報復を中川鉄男に下すに違いない。
元より、それは興信所の宮を使っての事と成ろう。
それにしてもである。
徹は一人心の内で未だ帰って来ない綾への不信を高めていた。
『舞がこんな時に、一体、何処で何をしてるんだ!』
とは言え、彼自身もつい先ほど迄、吉住アツ美と例の工場の一室で肌を寄せ合って居たのである。
言って見れば、お互い様なのだが~。
深夜に帰宅した綾を徹は咎めた。
「こんな時間まで何処で何をして居たんだ!」
既に誰もが眠って居ると思い、足音を忍ばせて寝室に入るなり、徹の激しい叱責にあった綾は萎縮し答えに窮してしまった。
「・・・」
「だから、何処で何をして居たか聞いてるんだ!」
「何かあったんですか?」
徹の只ならぬ形相に声を細めて聞きただした。
「舞が又、襲われる所だったそうだ」
「えっ!ほんとうに?」
「あぁ、さっき哲司くんから電話で聞いた。中川鉄男が瓢箪山まで行ったそうだ。寸での所で、同級生のチャコとか言ったか、その子のお陰で無事に済んだそうだ」
「チャコちゃんが~」
「あぁ。君は明日にでも舞の所に行ってやるんだ。哲司くんの話だと、舞に何か考えが有るそうだ。そこの所をしっかり聞いてあげてな」
「はい、そうします」
二人の会話はそこで一旦途切れた。
たが、互いを訝る思いは深まるばかりであった。
この時も、徹からベーカリーを思わせる香りが漂って居たし、綾の髪は少し乱れが感じられて居る。
この様な状況を創り出したのは他でもない、舞への強姦事件である。
当事者は勿論の事だが、その波紋は幾重にも拡がり複雑になって仕舞った。
一日も早く、それの落とし所を探し、決着を付けねば、二人の関係は行く所まで行ってしまうかも知れない。
寝床に着いた綾は容易く眠りに付けなかった。
『私が邦と関わって居る間に、舞に危険が及んでいた』
いつまでもこんな事をして居られないと、綾が苦悶の中で足掻いて居たのは言うに及ばないだろう。
翌朝、綾は新たな決意を抱き瓢箪山の舞の下に向った。
綾にすればこのまま邦を帰すには忍びなかったのだろう。
誰にも知れず思いのままに振舞える所と言えばそこしかなかった。
邦にすれば最終電車に間に合いさえすれば構わないと云った所であった。
少しでも長く一緒に居たいと思うのも分からずではない。
しかし、この結果が思わぬ事態を招く事をこの二人は知らずに居た。
さて、深夜に帰宅した上田徹は愛のメモ書きを見て、直ぐに小浜哲司に電話を掛けた。
彼から思いも寄らなかった話を聞くや、その怒りは全身を強張らせた。
恐らく、明日には何らかの報復を中川鉄男に下すに違いない。
元より、それは興信所の宮を使っての事と成ろう。
それにしてもである。
徹は一人心の内で未だ帰って来ない綾への不信を高めていた。
『舞がこんな時に、一体、何処で何をしてるんだ!』
とは言え、彼自身もつい先ほど迄、吉住アツ美と例の工場の一室で肌を寄せ合って居たのである。
言って見れば、お互い様なのだが~。
深夜に帰宅した綾を徹は咎めた。
「こんな時間まで何処で何をして居たんだ!」
既に誰もが眠って居ると思い、足音を忍ばせて寝室に入るなり、徹の激しい叱責にあった綾は萎縮し答えに窮してしまった。
「・・・」
「だから、何処で何をして居たか聞いてるんだ!」
「何かあったんですか?」
徹の只ならぬ形相に声を細めて聞きただした。
「舞が又、襲われる所だったそうだ」
「えっ!ほんとうに?」
「あぁ、さっき哲司くんから電話で聞いた。中川鉄男が瓢箪山まで行ったそうだ。寸での所で、同級生のチャコとか言ったか、その子のお陰で無事に済んだそうだ」
「チャコちゃんが~」
「あぁ。君は明日にでも舞の所に行ってやるんだ。哲司くんの話だと、舞に何か考えが有るそうだ。そこの所をしっかり聞いてあげてな」
「はい、そうします」
二人の会話はそこで一旦途切れた。
たが、互いを訝る思いは深まるばかりであった。
この時も、徹からベーカリーを思わせる香りが漂って居たし、綾の髪は少し乱れが感じられて居る。
この様な状況を創り出したのは他でもない、舞への強姦事件である。
当事者は勿論の事だが、その波紋は幾重にも拡がり複雑になって仕舞った。
一日も早く、それの落とし所を探し、決着を付けねば、二人の関係は行く所まで行ってしまうかも知れない。
寝床に着いた綾は容易く眠りに付けなかった。
『私が邦と関わって居る間に、舞に危険が及んでいた』
いつまでもこんな事をして居られないと、綾が苦悶の中で足掻いて居たのは言うに及ばないだろう。
翌朝、綾は新たな決意を抱き瓢箪山の舞の下に向った。
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