ペンフレンド~君と綴った季節~

クニ

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152,*紆余曲折(うよきょくせつ)*

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 小浜家のでの一騒動は哲司の思惑通りには行かなかったが、強姦の被害者、舞と、加害者、吉住広志にとっては、僅かでは有るが区切りを得られたように思える。


 上田綾の実家での一件以来、影を潜めて居る中川鉄男はさて置き、佐々木写真店で何やら進展が有った様である。


 その日の営業を終えた佐々木写真店では、隆と両親が向き合って居た。

 隆は柄にもなく神妙な顔つきで彼らに話し掛けた。

隆 「そんでやけど~、店の方、立ち退きを迫られてるんやろ?」

母 「それはそうやけど、隆がとやかく口を挟む事や無い。父ちゃんと二人で何とか切り抜けるから~」

父 「そうや。母ちゃんの言う通りや。お前にまで気を使わせて悪いな」

  隆はここぞとばかりに息せき切って、
隆 「俺のせいなんや~」

 両親は何を言い出したのかと顔を見合わせている。

隆 「あんな・・・お、俺がしでかした事が原因なんや~」

 両親は益々訳が分からず、首を捻って居る。
 
母 「何がどうしたって?」


 隆は時折、言葉を詰まらせながら、中川鉄男と吉住広志と共に上田舞を強姦した事を告白した。
 その舞の父親の報復が今のような形に成って現れて居ると事細かに伝えた。

 いつの間にか店の所有者が替わり、何の前触れもなく立ち退きを言い渡された事に不審を抱いて居た隆の両親は、ここに来て、やっと、合点が行った様である。


母 「今言うた事に間違いは無いんやな?」

隆 「うん」

父 「そんでもって、どうするつもりなんや。口にしたのはそれなりの覚悟が有るからやろ?」

隆 「うん。このままやと、にっちもさっちも行かんやろ。どうやろ、一緒に舞の家に行ってくれへんか?」

母 「頭を下げる事は簡単やけど、それで収めてくれるやろか?」

父 「無理やろな」

隆 「それは分かってる。そやから、警察に自首するつもりやと話して見る」

母 「自首なんて言うて、その先の事まで考えてるんか?」

隆 「さっぱり、分からへん。そんでも、他に方法が無いやろ」

父 「向こうの方で、その、何や、被害届か・・そんなもんを警察に出して無いんやろ?」

隆 「多分な~」

母 「門前払いは覚悟の上で、一辺、みんなして謝りに行っとかな。そうせんと何も始まらんやろ」

 佐々木写真店の灯りは、もうしばらくは灯ったきりに成るに違ない。
 子供の尻拭いをするのは親の常だが、こればっかりは手の施しようが無いようである。



 日曜日と云うのに、佐々木写真店には臨時休業の張り紙が掲げられて居た。
 佐々木一家の行く先は自ずと知れて居る。


 上田家の居間では被害者の舞を抜きにして上田夫妻と、加害者の佐々木隆とその両親が向き合っていた。

  その前日、ここでも一騒動が起きていた。

  息子の隆がしでかした事で訪問したいと云う知らせを受けた徹と綾は、顔を突き合わせ考えに耽っていた。
 
 綾は、

「いまさら、どの顔で持って」

と言い、首を縦に振らなかった。

 徹もこの後に及んでと一度は突っぱねる気で居たが、どうせなら、ここで相手の出方を見るのも良いかと考えた様である。
 写真店に関してはやり場のない所まで追い込まれて居て、四面楚歌の状態であった。
 宮の手下の嫌がらせは客足を遠のかせ、加えて、長年取引をして居た業者からもそっぽを向かれて居た。
 宮たちは巧妙にそちらにまで手を伸ばしていた様である。

*当事者にしか知られて居ないが、写真店では一般の客の他に、建設関係の業者が工事の進捗状況を記録する為に撮った写真の現像を引き受けている。
 言わば、その顧客に宮たちは手を回して居たのである。
 小さな写真店にとっては大事であった。


 体よく愛は外に出された。
 愛もその日の事は知らされて居た。
 自分にも一抹の責任があると捉えて居た愛は盛んに同席を求めたが、徹はそれを許さなかった。



 仕方なく家を出た愛の行き先はホルモン屋金ちゃんであった。

「どないしたんや?」

とは金本が愛を見るなり口から出た、常日ごろから口癖になって居た言葉である。

「どないもこないもあれへん。追い出されてしもた」

 愛はその経緯を金本に告げ、居た堪れない思いをぶちまけた。
 
「それにしても時期が遅いんとちゃうか(違うか)。舞ちゃんが何されたのは夏休みの前の事やろ」

「そうや。きっと、私の父さんに責められてどう仕様も無くなって来たんやろ」

「やっぱり、親父さんは黙ってなかったんやな~」

「広志とこのベーカリーも、鉄のとこの鉄工所も相当なダメージを受けてる筈や」


 ここでとやかく話して居たとて、どうにもならないと考えた愛は、

「そんで、あの子、どうしてる?」

「(溝口)恵子か?いつもどおりやけど~」

「ふ~ん、そうなんや。溝口さんも被害者なのに、そっちの方はお構いなしなんやろか?」

「そうみたいやな。何かあったら俺に相談に来るやろ」

「へぇ~、やっぱ、そう云う仲なんや」

「そんな風に言うなよ。アイツはただの妹みたいなもんやから~」

「それは金もっちゃんの言い分やろ。あの子にしたらそうでも無いと思うけどな」


 噂をすれば影が訪れた。

『ガラガラガラ~』

「金ちゃん、電話貸して」

 店に入るなり金本にそう告げた恵子の目が愛を捉えた。

「ごめん、又にするわ」

 踝を返し掛けた恵子に向って愛が、

「丁度良かった。溝口さん、ちょっとええかな?」

「ちょっとって?」

「ええから、こっちに来てくれへん」

 恵子は仕方なく愛たちが居た奥座敷に向った。
 
 彼女が席に落ち着くと、

「今な、私の家に隆とその両親が来てるんや。何でかは分かるやろ?」

「あの事でやろ」

「そうや。恵子さんの方はどうなんかな?」

「どうって言われても、なんせ、うちの親は知らん事やし」

 ここで、金本は場面を戻した。

「何処に電話するつもりやったんや?」

と言いながら、恵子の胸のポケットを睨んだ。

 先ほど、恵子がそこにこそっとメモ書きを仕舞って居たのを金本は見逃さずに居たようだ。

 恵子はしばらく思案して居たが、どうせ知れて仕舞う事だと考えた。

「舞さんとこに~」


 愛はそう云えばと舞と恵子が二人して話し合って居た事を思い出した。

「あの日、舞と何の話をしてたん?」

「仮に、被害届を出すとして、一緒にどうやろかって言われた」

「そんな事を話してたんや。それで~」

「うん。やっぱり、でけへんて言おうかなって思て~」


 愛は今、その事で佐々木一家が自宅を訪れていると恵子に告げた。

「ふ~ん、そうなんや。うちのとこにも来るやろか?」

「どうやろ。隆が自分の家の事だけを考えてたら、あんたの方はうやむやにするかもしれへん。どっちにせよ、もう少し様子を見て見んと何とも言われへん」

と、そこへ、金本の母親が現れた。

「あんたら、最前から難しい顔して、何の相談をしてるんや?」

 金本は、

「何も有れへん。あっちに行っといて」

「なんや、親に向ってその言い様は~。人が心配してやってるのに~」

 彼女にしても、恵子に余程の事が有ったと考えて居たのだろう。
 日頃から、恵子を可愛がって居たのである。
 何かしらしてあげたいと思わずには居られなかったに違いない。

 金本の母親が水を差した事で、この場の話し合いはお開きになって仕舞った。

 いずれにせよ、この先、強姦事件の当事者、並びに、その周りの人々に予想だにしない出来事が起きて来るに違ない。

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