あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
829 / 833

起こらないでほしい

しおりを挟む
(…………見るのは二回目だけど、感動すら覚える景色……だね。うん)

三十一階層に戻って来たティールたち。

ティールは目の前の光景に感動を覚えながら、同時に絶望も感じていた。
理由は単純……これまでの階層と比べ、あまりにも調べなければならない範囲が広いと感じさせられる。

実際のところ、ティールのその感覚は……間違っていなかった。

平面の範囲だけ見れば、他の階層と大した差はないが、海エリアの場合は平面に加えて高さが追加される。
山岳エリアと似ていると言えば似ているが、探索慣れしていないエリアが大半となると、色々と事情が変わってくる。

「マスター、とりあえずこの……砂浜? という場所を探索するか?」

「……そうだな。何があるか解らないし、まずはここから調べるか」

大半が海、小島といった感じではあるが、降りてきた場所……砂浜はそれなりに広く、多くの木々もある。

ティールたちは探索しながら拠点として使えそうな場所を探し始めた。

(……あれって、多分食べられる果物だよな………………うん、悪いけどダンジョンコアが欲しいからな)

見たことがない果実ではあるが、直感的に食べられるはずだと感じ取り、一応打ち落として回収。

海の周辺にしか実らない果実であれば、ガルダンデードにとっては一種の名物となる。

湖の周辺には実らない果実であるため、人を呼ぶには十分な要素となる。
人が増えれば有能な人材も増え………ダンジョンを手に入れたとなれば、ガルダンデードの増築が行われる可能性もある。

「どうかしたか、マスター」

「ガルダンデードには申し訳ない事をするなと思ってな」

「まだ悩んでいるのか?」

「悩んではいないよ。ただ、このダンジョンから得られるであろう利益を考えるとな」

当然のことながら、ティールに村や街を治めた経験はない。
それでも、このダンジョンがどれほどの経済効果を生むのか、なんとなく想像することは出来た。

「……しかしだな、マスター。このダンジョンはファルティナの大秘境にあるんだ。ファルティナの大秘境は、サントレア王国のものでもあるのだろう」

「…………はぁ~~~~~。意識を傾けすぎるのも良くないな」

これまた当たり前過ぎることを忘れていたティール。

ファルティナの大秘境はカルティア王国のものだけではない。
両国の領地と被っているからこそ、二つの国は明確に区切ろうとはしなかった。

やろうと思えば出来なくはないものの、探索する者たちの中にちょっとぐらい中に入っても大丈夫だろうと考える者が絶対に現れる。

その現場を見てしまえば、侵入された側が当然咎め、争いに発展し……そのまま誰かが死んでもおかしくない。

そうなれば、死んだ者の立場にもよるが、小競り合いへと反転し、そのまま戦争に発展してもおかしくない。

「ティール、このダンジョンを放置しておけば、いずれ戦争が起こってもおかしくない」

「…………ですよね」

「戦争は……当然の事だが、良いものではない」

「……アキラさんは、経験したことがあるんですか?」

「いや、私はない。ただ、私の国では度々小競り合いがあってな。私は参加したことはないが、参加した者の話を聞いたことがある」

アキラはその話をしてくれた者が浮かべていた表情を……今でもよく覚えている。

「ティールはもし戦争が起これば、参加するだろう」

「すると言いますか……多分、強制参加でしょうね」

戦争が始まれば、全てのBランク冒険者やAランク冒険者が参加する訳ではない。

基本的に起こりえない話だが、本当に戦争が起こり、片方のBランクとAランク冒険者が全滅させられた場合、その国が負うダメージは計り知れない。

結果として負けてしまっても、経済力を失わない為にも、全員を参加させるわけにはいかない。

だが、ティールたちほど応用が利く戦力を遊ばせたくない……そう考える冒険者ギルドの判断は妥当である。

「……別の形で起こるとしても、数年以内には起きてほしくないですね」

「「?」」

ティールとしては、せめてアキラと共に行動している間は、彼女にとって嫌な記憶が残るような問題とは遭遇したくなかった。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

処理中です...