16 / 833
聞こえた悲鳴
しおりを挟む
いつも通り朝食と食べた後は森の中に入って狩りを行うティール。
しかし今日は少し遠くに行ってみようと思い、身体強化と脚力強化を使用して村から離れた位置で狩りを行う。
幸いにもその場所で遭遇するモンスターは大した強さを持っておらず、ティールの実力でも余裕で倒せる。
何体かは真面目に戦わなければいけないモンスターもいたが、やはりグレーグリズリーの時の様な恐怖感を感じることは無かった。
だが、まだ昼過ぎ頃にティールは一つの悲鳴を聞いた。
「……道の方から悲鳴? が聞こえたが」
森の中では一度も人と遭遇したことが無いティールだが、森の中で悲鳴が起こるとなれば考えられることは少ないという事は解かっている。
モンスターに襲われたか盗賊に襲われたのかの二択。
その二つが頭の中に浮かんだ。
(どうするべきか……確かに俺は強くなった。しかしさっきの悲鳴を上げた人物を助けられるかどうかは……ちっ、迷っても意味は無いな)
一度聞いてしまった悲鳴を見過ごす程ティールは人でなしでは無く、とりあえず悲鳴が聞こえた先に向かって駆け出す。
そして全力で走り抜けること三十秒ほど……なぜ悲鳴が聞こえてきたのかティールは理解した。
「……そりゃ悲鳴を上げる訳だ」
一目で豪華だと分かる馬車とその護衛者がオークの群れに襲われている。
オーク、人型で豚の顔をしたランクはDのモンスター。女性たちからはゴブリンと同様に忌み嫌われるモンスター。
だが、その肉はかなり美味。
それ故に食料としては重宝されている。
ティールは過去に何度かオークと対峙したことがあり、最初の一体を不意打ちで瞬殺。
そのお陰で後の数体は特に恐怖意識を持つことなく冷静に対処し討伐に成功した。
だが、今回はそんなオーク達を束ねる者がいた。
それはオークリーダー、冒険者達からはほぼランクCだと言われているランクDのモンスター。
オークの上位種となるウォーリアーやメイジにタンクなどの様に何か戦力に特化しているという訳では無い。
それでも基礎的な能力は通常のオークよりも高い。
そしてオークリーダーにはオークの能力を少々上げるスキルを有している。
統率者。これは大勢の者を従えた者が得られるスキルであり、人であってもモンスターであっても習得することが出来る。
(今のところ死人はいない様だけど……それも時間の問題か)
馬車を守っている護衛者は皆女。
女だからって弱いとは思わないティールだが、肉体派のオークにはそれなりのレベルが無いと厳しいだろうと感じた。
だが、護衛者が全員女だからこそまだ誰も死人が出ていないとも言える。
オークはゴブリンと同様に性欲の根源とも呼ばれ、まさしく性欲のモンスター。
そんなオークが目の前の女性をそう簡単に殺す訳が無く、オーク達としては自分達の巣に持って帰って楽しみたいと思っている。
「リースさんから貰ったこれを付けるか」
もし人と遭遇しそうになった時に正体がバレない為の道具としてティールはリースからマジックアイテムの仮面を渡されていた。
声も変えることが出来るのでより正体がバレにくくなる。
そして戦う事を決意したティールは複数の石を掴み、全てに魔力を纏わせる。
(全力で殺す)
そして三回ほど全力投球を行う。狙いは一撃必殺の頭部。
投擲時に腕力強化と身体強化と脚力強化を使用したことで威力は増加され、投擲スキルによるコントロール補正で頭部を正確に捉える。
全てのオークに魔力で強化された石がヒットし、そのまま貫いた。
突然の第三者からの攻撃に驚く護衛者達。
だが、全てを倒し切れておらず……オークリーダーだけはティールの投擲をギリギリのところで躱していた。
それでも想定外の攻撃であり、表情に焦りが浮かぶ。
そして攻撃が飛んできた方向に慌てて視線を向ける。
しかしそこには誰もいなかった。
「そっちにはいねぇよ。死ね、アシッドドラゴン」
投擲を放ち終えると同時に宙を飛んでいたティールは既にスキルレベルが一流と呼べる段階まで上げた酸を使用し、オリジナルの攻撃である酸のドラゴンを生み出してオークリーダーの真上からぶつける。
突然現れたドラゴン。
その状況と攻撃に対処することがオークリーダーには出来ず……その前身のほとんどを溶かされて命を落とした。
「ちっ、やっぱり魔石まで溶かしてしまったか」
ティールとしては魔石は回収しておきたかったが、余裕ぶっていられる相手でも無いので全力で攻撃を行った。
その結果見事瞬殺するとに成功はしたが、体の殆どを消してしまうという状態になってしまった。
(とりあえずこいつが持っているスキルだけ奪ってしまう。幸いにもまだ魔力量には余裕がある)
オークリーダーが持つスキルを奪うことには問題が無い。
ただ、流石にこの場を速攻で去るのは不可能かと思い、どう対応するか悩むティールだった。
しかし今日は少し遠くに行ってみようと思い、身体強化と脚力強化を使用して村から離れた位置で狩りを行う。
幸いにもその場所で遭遇するモンスターは大した強さを持っておらず、ティールの実力でも余裕で倒せる。
何体かは真面目に戦わなければいけないモンスターもいたが、やはりグレーグリズリーの時の様な恐怖感を感じることは無かった。
だが、まだ昼過ぎ頃にティールは一つの悲鳴を聞いた。
「……道の方から悲鳴? が聞こえたが」
森の中では一度も人と遭遇したことが無いティールだが、森の中で悲鳴が起こるとなれば考えられることは少ないという事は解かっている。
モンスターに襲われたか盗賊に襲われたのかの二択。
その二つが頭の中に浮かんだ。
(どうするべきか……確かに俺は強くなった。しかしさっきの悲鳴を上げた人物を助けられるかどうかは……ちっ、迷っても意味は無いな)
一度聞いてしまった悲鳴を見過ごす程ティールは人でなしでは無く、とりあえず悲鳴が聞こえた先に向かって駆け出す。
そして全力で走り抜けること三十秒ほど……なぜ悲鳴が聞こえてきたのかティールは理解した。
「……そりゃ悲鳴を上げる訳だ」
一目で豪華だと分かる馬車とその護衛者がオークの群れに襲われている。
オーク、人型で豚の顔をしたランクはDのモンスター。女性たちからはゴブリンと同様に忌み嫌われるモンスター。
だが、その肉はかなり美味。
それ故に食料としては重宝されている。
ティールは過去に何度かオークと対峙したことがあり、最初の一体を不意打ちで瞬殺。
そのお陰で後の数体は特に恐怖意識を持つことなく冷静に対処し討伐に成功した。
だが、今回はそんなオーク達を束ねる者がいた。
それはオークリーダー、冒険者達からはほぼランクCだと言われているランクDのモンスター。
オークの上位種となるウォーリアーやメイジにタンクなどの様に何か戦力に特化しているという訳では無い。
それでも基礎的な能力は通常のオークよりも高い。
そしてオークリーダーにはオークの能力を少々上げるスキルを有している。
統率者。これは大勢の者を従えた者が得られるスキルであり、人であってもモンスターであっても習得することが出来る。
(今のところ死人はいない様だけど……それも時間の問題か)
馬車を守っている護衛者は皆女。
女だからって弱いとは思わないティールだが、肉体派のオークにはそれなりのレベルが無いと厳しいだろうと感じた。
だが、護衛者が全員女だからこそまだ誰も死人が出ていないとも言える。
オークはゴブリンと同様に性欲の根源とも呼ばれ、まさしく性欲のモンスター。
そんなオークが目の前の女性をそう簡単に殺す訳が無く、オーク達としては自分達の巣に持って帰って楽しみたいと思っている。
「リースさんから貰ったこれを付けるか」
もし人と遭遇しそうになった時に正体がバレない為の道具としてティールはリースからマジックアイテムの仮面を渡されていた。
声も変えることが出来るのでより正体がバレにくくなる。
そして戦う事を決意したティールは複数の石を掴み、全てに魔力を纏わせる。
(全力で殺す)
そして三回ほど全力投球を行う。狙いは一撃必殺の頭部。
投擲時に腕力強化と身体強化と脚力強化を使用したことで威力は増加され、投擲スキルによるコントロール補正で頭部を正確に捉える。
全てのオークに魔力で強化された石がヒットし、そのまま貫いた。
突然の第三者からの攻撃に驚く護衛者達。
だが、全てを倒し切れておらず……オークリーダーだけはティールの投擲をギリギリのところで躱していた。
それでも想定外の攻撃であり、表情に焦りが浮かぶ。
そして攻撃が飛んできた方向に慌てて視線を向ける。
しかしそこには誰もいなかった。
「そっちにはいねぇよ。死ね、アシッドドラゴン」
投擲を放ち終えると同時に宙を飛んでいたティールは既にスキルレベルが一流と呼べる段階まで上げた酸を使用し、オリジナルの攻撃である酸のドラゴンを生み出してオークリーダーの真上からぶつける。
突然現れたドラゴン。
その状況と攻撃に対処することがオークリーダーには出来ず……その前身のほとんどを溶かされて命を落とした。
「ちっ、やっぱり魔石まで溶かしてしまったか」
ティールとしては魔石は回収しておきたかったが、余裕ぶっていられる相手でも無いので全力で攻撃を行った。
その結果見事瞬殺するとに成功はしたが、体の殆どを消してしまうという状態になってしまった。
(とりあえずこいつが持っているスキルだけ奪ってしまう。幸いにもまだ魔力量には余裕がある)
オークリーダーが持つスキルを奪うことには問題が無い。
ただ、流石にこの場を速攻で去るのは不可能かと思い、どう対応するか悩むティールだった。
145
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。
そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。
二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。
やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。
そんな彼女にとっての母の最期は。
「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。
番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
前世は厳しい家族とお茶を極めたから、今世は優しい家族とお茶魔法極めます
初昔 茶ノ介
ファンタジー
代々続くお茶の名家、香坂家。そこに生まれ、小さな時から名家にふさわしくなるように厳しく指導を受けてきた香坂千景。
常にお茶のことを優先し、名家に恥じぬ実力を身につけた彼女は齢六十で人間国宝とまで言われる茶人となった。
しかし、身体は病魔に侵され、家族もおらず、また家の定める人にしか茶を入れてはならない生活に嫌気がさしていた。
そして、ある要人を持て成す席で、病状が悪化し命を落としてしまう。
そのまま消えるのかと思った千景は、目が覚めた時、自分の小さくなった手や見たことのない部屋、見たことのない人たちに囲まれて驚きを隠せなかった。
そこで周りの人達から公爵家の次女リーリフィアと呼ばれて……。
これは、前世で名家として厳しく指導を受けお茶を極めた千景が、異世界で公爵家次女リーリフィアとしてお茶魔法を極め優しい家族と幸せになるお話……。
ーーーーーーーー
のんびりと書いていきます。
よかったら楽しんでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる