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好待遇過ぎる
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「改めて自己紹介するか。俺はティール、一応お前の主人になった人間だ。冒険者として活動している。よろしくな、ラスト」
「……ラスト、竜人族だ。武器は一通り使える。魔法もそれなりにだが使える。モンスターとの戦闘では役立つはずだ……あなたのことは何と呼べばいい? ご主人様か、それともマスターか」
奴隷が主人を呼ぶ際にはいくつか種類があるが、ご主人様と呼ばれるのはむず痒いと感じた。
(ご主人様はなしだな……うん、無しだ。それならやっぱりマスターか? 名前に様付で呼ばれるのも変な感じがするしな)
数秒の間に脳内で色々と考えた結果、さん付けで呼んでもらうことに決めた。
「ティールさんって呼んでくれ」
「……それで良いのか?」
「あぁ、それで構わない」
「そうか……一応尋ねるが、口調もこのままで良いのか?」
「そのままで良いぞ。特に俺は気にしないからな」
「そうか、それは有り難い」
ラストは自分の主人となる者には敬語で話すように叩きこまれていた。
なので、元々の口調が零れてしまった時……説教される、もしくは殴られるかもしれないと思った。
だが、意外なことに自分を買った主人であるティールは怒ることはなく、名前の呼び方もある程度フランクな形で呼んでくれと言われた。
(白金貨を合計で五枚も使ったから貴族の令息かと思っていたが、やはり違うのか? 楽な態度で接することができるのは有難いが)
奴隷になった時、おそらく碌な主人に買われないと思っていた。
戦闘に関しては有能な部類であるため、実戦で使い潰されるだけの人生になるだろう。
そう思いながら日々を過ごしていたが、意外にも自分を買った主人は冒険者として活動している少年だった。
「それじゃ……まずはラストの装備と、普段着る服を買いにいくか」
「? ティールさん、装備なら奴隷館が用意してくれているが」
「確かに一応用意してくれたみたいだが、その装備じゃ不十分だろ。とりあえず……武器はこれを使え」
とりあえずの武器として、ティールはブラッディ―タイガーの素材から作られた斬馬刀を取り出した。
「……ティールさん、この武器は俺の様な奴隷が持つ武器ではない。ティールさんが使うべきだ」
鑑定のスキルは持っていないが、それなりに視る眼を持っているラストは一目で渡された斬馬刀が業物だと理解した。
そしてこれほど高価で高性能である武器は自分が持つべき武器ではないと、即座に判断した。
「いや、俺は俺でちゃんと良い武器を持ってるから安心してくれ」
「……分かった。大切に使わせてもらう」
嘘は付いてないと分かるので、言われた通りに斬馬刀を身に着けた。
「よし、防具を買いに行くぞ」
「あぁ」
ティールの財布から白金貨は消えてしまったが、まだまだ金貨は大量に残っている。
それなりに良い防具を身に着けてもらおうと思い、なるべく良質な防具を探す。
ラストはティールがこれが良くないかと提案する度に、自分が身に付けるには値段が高いと進言。
しかしティールが最終的に購入したレザーアーマー、ガントレット、靴はどれもランク四という一般的に考えて高級品。
だが、最後に普通の大剣が欲しいと頼み、斬馬刀を返そうと思っていた。
(ここまで高品質の防具を用意してもらい、更に渡された斬馬刀を使うのはさすがに貰い過ぎだ)
主人であるティールが自分を奴隷ではなく、一人の仲間として接してくれているのが解る。
それは非常に嬉しい。
だが、それでも自分の立場が奴隷であることに変わりはない。
武器屋でランク三の大剣を買ってもらうと、背中の斬馬刀を返そうとした。
だが、何を思ったのか主人はアイテムポーチを自分に渡してきた。
「普段はその大剣を使って、いざという時の奥の手としてその斬馬刀を使うんだ。分かったな」
「…………あぁ、分かった」
何か言い返そうとした。だが、何を言ってもこの人は自分の考えを曲げないと思い、ティールからの提案を受け取った。
「……ラスト、竜人族だ。武器は一通り使える。魔法もそれなりにだが使える。モンスターとの戦闘では役立つはずだ……あなたのことは何と呼べばいい? ご主人様か、それともマスターか」
奴隷が主人を呼ぶ際にはいくつか種類があるが、ご主人様と呼ばれるのはむず痒いと感じた。
(ご主人様はなしだな……うん、無しだ。それならやっぱりマスターか? 名前に様付で呼ばれるのも変な感じがするしな)
数秒の間に脳内で色々と考えた結果、さん付けで呼んでもらうことに決めた。
「ティールさんって呼んでくれ」
「……それで良いのか?」
「あぁ、それで構わない」
「そうか……一応尋ねるが、口調もこのままで良いのか?」
「そのままで良いぞ。特に俺は気にしないからな」
「そうか、それは有り難い」
ラストは自分の主人となる者には敬語で話すように叩きこまれていた。
なので、元々の口調が零れてしまった時……説教される、もしくは殴られるかもしれないと思った。
だが、意外なことに自分を買った主人であるティールは怒ることはなく、名前の呼び方もある程度フランクな形で呼んでくれと言われた。
(白金貨を合計で五枚も使ったから貴族の令息かと思っていたが、やはり違うのか? 楽な態度で接することができるのは有難いが)
奴隷になった時、おそらく碌な主人に買われないと思っていた。
戦闘に関しては有能な部類であるため、実戦で使い潰されるだけの人生になるだろう。
そう思いながら日々を過ごしていたが、意外にも自分を買った主人は冒険者として活動している少年だった。
「それじゃ……まずはラストの装備と、普段着る服を買いにいくか」
「? ティールさん、装備なら奴隷館が用意してくれているが」
「確かに一応用意してくれたみたいだが、その装備じゃ不十分だろ。とりあえず……武器はこれを使え」
とりあえずの武器として、ティールはブラッディ―タイガーの素材から作られた斬馬刀を取り出した。
「……ティールさん、この武器は俺の様な奴隷が持つ武器ではない。ティールさんが使うべきだ」
鑑定のスキルは持っていないが、それなりに視る眼を持っているラストは一目で渡された斬馬刀が業物だと理解した。
そしてこれほど高価で高性能である武器は自分が持つべき武器ではないと、即座に判断した。
「いや、俺は俺でちゃんと良い武器を持ってるから安心してくれ」
「……分かった。大切に使わせてもらう」
嘘は付いてないと分かるので、言われた通りに斬馬刀を身に着けた。
「よし、防具を買いに行くぞ」
「あぁ」
ティールの財布から白金貨は消えてしまったが、まだまだ金貨は大量に残っている。
それなりに良い防具を身に着けてもらおうと思い、なるべく良質な防具を探す。
ラストはティールがこれが良くないかと提案する度に、自分が身に付けるには値段が高いと進言。
しかしティールが最終的に購入したレザーアーマー、ガントレット、靴はどれもランク四という一般的に考えて高級品。
だが、最後に普通の大剣が欲しいと頼み、斬馬刀を返そうと思っていた。
(ここまで高品質の防具を用意してもらい、更に渡された斬馬刀を使うのはさすがに貰い過ぎだ)
主人であるティールが自分を奴隷ではなく、一人の仲間として接してくれているのが解る。
それは非常に嬉しい。
だが、それでも自分の立場が奴隷であることに変わりはない。
武器屋でランク三の大剣を買ってもらうと、背中の斬馬刀を返そうとした。
だが、何を思ったのか主人はアイテムポーチを自分に渡してきた。
「普段はその大剣を使って、いざという時の奥の手としてその斬馬刀を使うんだ。分かったな」
「…………あぁ、分かった」
何か言い返そうとした。だが、何を言ってもこの人は自分の考えを曲げないと思い、ティールからの提案を受け取った。
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