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黙れ干物野郎
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「ふむ……強いな竜人よ。どうだ、私の眷属にならないか? 永遠の時を得られるぞ」
「興味ないな。それに俺が仕える人は既に決まっている」
「ふん、あの人族にお前の様な強者が仕える理由はないと思うぞ」
「そうか。なら、お前の目はよっぽど腐っている様だな」
何を言われようが、ヴァンパイアの眷属になるつもりなど一切ない。
「ご自慢の眷属を出せないこの状況、俺がお前の眷属になる理由などまるでない。そんなことも分からないとは……モンスター界の貴族と呼ばれている割には、かなり頭が悪いみたいだな」
「トカゲが、調子になるなよ!!!!」
刃に風の魔力を纏って連続で突きを仕掛けるが、どれも躱すか弾かれてしまう。
ヴァンパイアは果敢に攻めているにかかわらず、徐々に徐々に後ろに押されていく。
「それはこちらのセリフだ、干物野郎」
「ひ、干物だと!?」
「お前なんぞ干物で十分だ」
ヴァンパイアに血を吸われて体内の血液が無くなった状態のことを、干物という。
血が全くない物を指すこの言葉、ヴァンパイアからすれば侮辱に値する暴言。
だが、ラストは全くそんな事は知らず、もしかしたら暴言になるかと思って言っただけ。
「それよりも、俺のマスターを侮辱して生きていられると思っているのか」
言い終えた瞬間、後方の退路がティールの手によって完全に塞がれてしまう。
現状、ヴァンパイアから逃げる意思は感じられないが、用心しておくことに越したことはない。
(今はラストだけが戦っているが、こっちには俺とおそらくCランクの冒険者が五人。ヴァンパイアがいくらBランクのモンスターとはいえ、負ける筈がない)
油断ではなく確信だった。
現在ティーラスたちはティールの頼みもあってヴァンパイアとラストの戦いを見守っている。
「……あの竜人の青年、強いな。装備が強力ってのもあるが、あのヴァンパイアと互角に渡り合ってやがる」
「そりゃラストだからな……多分、俺たちが手を出さなくても大丈夫ですよ」
ティールがラストに渡した武器はヴァンパイアを討伐するのに相性が良く、ヴァンパイアにとっては最悪の武器。
「というか、ティールも凄いよな。さっき詠唱破棄でロックウォールを発動して、あのヴァンパイアが逃げられないようにしただろ」
「師匠の教えが良かったんですよ。師匠はエルフで、魔法の腕も確かだったんで」
「そ、そうなのか? 俺はあんまり魔法に関しては詳しくないからな」
真っ赤な嘘である。
確かに助言があった方が詠唱破棄を習得しやすくなる可能性はあるだろう。
だが、実行出来るか否かは本人の才能による部分が大きい。
「シル、そうなのか?」
「……師匠の教えが良かったという考えは否定しないが、君の……ティール君の才能によるところも大きい」
残念ながらここにはリースと同じエルフのシルがいるので、ティールの嘘が全肯定されることはなかった。
「そして今ヴァンパイアと戦っている竜人の青年……あの子も末恐ろしい実力を持っているな。ただ、両手に持つ武器が気になる」
一目で解る。
現在ラストが扱っている斬馬刀とソードブレイカーはそこら辺に転がっている品ではない。
いったいどんな素材を使って造られたのか非常に気になる。
だがプロの冒険者として、あまり踏み込んだ話は訊かなかった。
「……まぁ、何はともあれそろそろ終わりますよ」
ヴァンパイアの力の源は血。
その場で補給すれば身体能力や体調は元に戻るが、ティールがロックウォールで道を塞いだことにより、都合良く血液補給ができるモンスターが現れることはない。
斬馬刀で斬りつけられた傷は癒えず、ソードブレイカーで斬りつけられた傷からは血がドバドバと流れる。
(これは……あれだな。やはり自分の力だけで勝てたとは言えないな)
斬馬刀とソードブレイカーがあっての勝利。
己の力だけではここまで優位に戦いを進めることはできなかった。
そう思いながら動きが鈍ったところを斬馬刀で首を刎ね、ソードブレイカーで心臓を突き刺した。
「興味ないな。それに俺が仕える人は既に決まっている」
「ふん、あの人族にお前の様な強者が仕える理由はないと思うぞ」
「そうか。なら、お前の目はよっぽど腐っている様だな」
何を言われようが、ヴァンパイアの眷属になるつもりなど一切ない。
「ご自慢の眷属を出せないこの状況、俺がお前の眷属になる理由などまるでない。そんなことも分からないとは……モンスター界の貴族と呼ばれている割には、かなり頭が悪いみたいだな」
「トカゲが、調子になるなよ!!!!」
刃に風の魔力を纏って連続で突きを仕掛けるが、どれも躱すか弾かれてしまう。
ヴァンパイアは果敢に攻めているにかかわらず、徐々に徐々に後ろに押されていく。
「それはこちらのセリフだ、干物野郎」
「ひ、干物だと!?」
「お前なんぞ干物で十分だ」
ヴァンパイアに血を吸われて体内の血液が無くなった状態のことを、干物という。
血が全くない物を指すこの言葉、ヴァンパイアからすれば侮辱に値する暴言。
だが、ラストは全くそんな事は知らず、もしかしたら暴言になるかと思って言っただけ。
「それよりも、俺のマスターを侮辱して生きていられると思っているのか」
言い終えた瞬間、後方の退路がティールの手によって完全に塞がれてしまう。
現状、ヴァンパイアから逃げる意思は感じられないが、用心しておくことに越したことはない。
(今はラストだけが戦っているが、こっちには俺とおそらくCランクの冒険者が五人。ヴァンパイアがいくらBランクのモンスターとはいえ、負ける筈がない)
油断ではなく確信だった。
現在ティーラスたちはティールの頼みもあってヴァンパイアとラストの戦いを見守っている。
「……あの竜人の青年、強いな。装備が強力ってのもあるが、あのヴァンパイアと互角に渡り合ってやがる」
「そりゃラストだからな……多分、俺たちが手を出さなくても大丈夫ですよ」
ティールがラストに渡した武器はヴァンパイアを討伐するのに相性が良く、ヴァンパイアにとっては最悪の武器。
「というか、ティールも凄いよな。さっき詠唱破棄でロックウォールを発動して、あのヴァンパイアが逃げられないようにしただろ」
「師匠の教えが良かったんですよ。師匠はエルフで、魔法の腕も確かだったんで」
「そ、そうなのか? 俺はあんまり魔法に関しては詳しくないからな」
真っ赤な嘘である。
確かに助言があった方が詠唱破棄を習得しやすくなる可能性はあるだろう。
だが、実行出来るか否かは本人の才能による部分が大きい。
「シル、そうなのか?」
「……師匠の教えが良かったという考えは否定しないが、君の……ティール君の才能によるところも大きい」
残念ながらここにはリースと同じエルフのシルがいるので、ティールの嘘が全肯定されることはなかった。
「そして今ヴァンパイアと戦っている竜人の青年……あの子も末恐ろしい実力を持っているな。ただ、両手に持つ武器が気になる」
一目で解る。
現在ラストが扱っている斬馬刀とソードブレイカーはそこら辺に転がっている品ではない。
いったいどんな素材を使って造られたのか非常に気になる。
だがプロの冒険者として、あまり踏み込んだ話は訊かなかった。
「……まぁ、何はともあれそろそろ終わりますよ」
ヴァンパイアの力の源は血。
その場で補給すれば身体能力や体調は元に戻るが、ティールがロックウォールで道を塞いだことにより、都合良く血液補給ができるモンスターが現れることはない。
斬馬刀で斬りつけられた傷は癒えず、ソードブレイカーで斬りつけられた傷からは血がドバドバと流れる。
(これは……あれだな。やはり自分の力だけで勝てたとは言えないな)
斬馬刀とソードブレイカーがあっての勝利。
己の力だけではここまで優位に戦いを進めることはできなかった。
そう思いながら動きが鈍ったところを斬馬刀で首を刎ね、ソードブレイカーで心臓を突き刺した。
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