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被ったので参加出来ない
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三人で模擬戦を繰り返しているうちに太陽は大きく傾き、時間が丁度良いということで三人は一緒に夕食を食べることにした。
「そういえば、ティーラスさんたちは今回の討伐に誘われなかったんですか?」
「一応誘われたぞ。でも、丁度その日の朝に商人の護衛依頼を受けたんだよ」
「日程が被ってたんですね」
「そういうことだ。一日や二日で終わる仕事じゃないからな」
ヤドラスに帰ってくるには大体十日ほど掛かる。
さすがにそこまで待つのもということで、ティーラスたちは参加しないことになった。
「でも、二人が討伐に参加するなら大丈夫だろ」
「……まぁ、多分大丈夫だとは思います」
ブラッディ―タイガー、キラータイガー、ヴァンパイア。
それらと比べれば、コボルトとオークなど襲るに足らない。
正直なところ、そんな気持ちがあった。
「自分としては、イギルが後ろから狙ってこないかの方が心配です」
「はは、そういえば揉めたんだったな」
「揉めたというか、向こうが勝手に突っ掛かってきただけですけどね」
零対十でティールとラストは全く悪くない。
だが、イギルがそう思っているかどうか……ティールの予想だと、八割方は自分が正しいと信じている。
ラストは百パーセント、討伐中に絡んでくると予想していた。
「にしても後ろから攻撃か。あぁいうのはやられた側の方がマジで困るからな」
ティーラスは過去にそういった経験がしたことがあり、結果的に泣き寝入りする形となった。
現在は自分たちに嫌がらせしてきた同業者よりもランクが上になったので、苦い思い出だなぁ~~と二人に勝たれるが、当時は非常に腹が立ったのを覚えている。
「俺からはなるべくイギルと離れて戦うようにした方が良い、としか言えないな」
「……やっぱりそれが一番ですよね」
イグラスがイギルの行動に目を光らせておくと言ったが、やはり戦闘が始まれば完全には把握できない。
(あいつ自身は接近戦タイプっぽいし、離れてれば何も出来ないだろ。遠距離タイプでも乱戦の中だったらよっぽどコントロール技術が優れてなかったらダイレクトに俺やラストに当てるのは無理だろうな)
「やられたらやり返したくなると思うが……というか、よくよく頑張ればイギルがどれだけ頑張ったとしても、お前らがマジで動けば脚の速さ的に追いつけないな」
ティーラスはイギルと模擬戦を行ったことはないが、イギルが他の同業者と模擬戦を行っているところは観たことがある。
そして本日、ティールとラストの戦いっぷりを観るだけではなく、その強さを体験した。
三人の身体能力をある程度知ってるからこそ、イギルが乱戦の中で二人に不意打ちするのは無理。
そう断言出来た。
「よっぽど使い勝手が良いマジックアイテムでも持ってるなら話は別かもしれないが……あいつらの懐状況を考えれば、それは無理か」
Dランクはまだまだルーキーの域ではあるが、生活水準的にはルーキーの域を脱した基準となる。
性格は荒いが、仕事はそれなりに真面目にこなしているので、イギルたちは日々の生活に困ってはいない。
だが、性能が高いマジックアイテムを買う程の余裕はない。
(街の近くに遺跡があるから都合が良いマジックアイテムが売られている可能性はゼロではないと思うが、あいつらがそれを買えるかどうか……うん、やっぱり無理だ。買えたとしても、不良品を掴まされたってオチになるだろうな)
そんな光景がリアルに想像出来てしまい、肉が気管に入りかけた。
「ッ! ゴホ、ゴホッ!!! ふぅーーー、危ねぇ危ねぇ」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、ちょっと考えごとしてだけだ」
その内容を聞いた二人はティーラスの様に夕食が気管にはいることはなかったが、同時に爆笑してしまった。
「も、もしそうなったら……ぶふっ! さ、最高過ぎますね」
「はっはっは!!! 本当にその通りだ。物語に出てくる悪役のオチにピッタリ過ぎるぜ!!!」
「全くもってティーラスの言う通りだな。まさに天罰が下るというやつだな」
二人としては是非ともそうなってほしいと願った。
「そういえば、ティーラスさんたちは今回の討伐に誘われなかったんですか?」
「一応誘われたぞ。でも、丁度その日の朝に商人の護衛依頼を受けたんだよ」
「日程が被ってたんですね」
「そういうことだ。一日や二日で終わる仕事じゃないからな」
ヤドラスに帰ってくるには大体十日ほど掛かる。
さすがにそこまで待つのもということで、ティーラスたちは参加しないことになった。
「でも、二人が討伐に参加するなら大丈夫だろ」
「……まぁ、多分大丈夫だとは思います」
ブラッディ―タイガー、キラータイガー、ヴァンパイア。
それらと比べれば、コボルトとオークなど襲るに足らない。
正直なところ、そんな気持ちがあった。
「自分としては、イギルが後ろから狙ってこないかの方が心配です」
「はは、そういえば揉めたんだったな」
「揉めたというか、向こうが勝手に突っ掛かってきただけですけどね」
零対十でティールとラストは全く悪くない。
だが、イギルがそう思っているかどうか……ティールの予想だと、八割方は自分が正しいと信じている。
ラストは百パーセント、討伐中に絡んでくると予想していた。
「にしても後ろから攻撃か。あぁいうのはやられた側の方がマジで困るからな」
ティーラスは過去にそういった経験がしたことがあり、結果的に泣き寝入りする形となった。
現在は自分たちに嫌がらせしてきた同業者よりもランクが上になったので、苦い思い出だなぁ~~と二人に勝たれるが、当時は非常に腹が立ったのを覚えている。
「俺からはなるべくイギルと離れて戦うようにした方が良い、としか言えないな」
「……やっぱりそれが一番ですよね」
イグラスがイギルの行動に目を光らせておくと言ったが、やはり戦闘が始まれば完全には把握できない。
(あいつ自身は接近戦タイプっぽいし、離れてれば何も出来ないだろ。遠距離タイプでも乱戦の中だったらよっぽどコントロール技術が優れてなかったらダイレクトに俺やラストに当てるのは無理だろうな)
「やられたらやり返したくなると思うが……というか、よくよく頑張ればイギルがどれだけ頑張ったとしても、お前らがマジで動けば脚の速さ的に追いつけないな」
ティーラスはイギルと模擬戦を行ったことはないが、イギルが他の同業者と模擬戦を行っているところは観たことがある。
そして本日、ティールとラストの戦いっぷりを観るだけではなく、その強さを体験した。
三人の身体能力をある程度知ってるからこそ、イギルが乱戦の中で二人に不意打ちするのは無理。
そう断言出来た。
「よっぽど使い勝手が良いマジックアイテムでも持ってるなら話は別かもしれないが……あいつらの懐状況を考えれば、それは無理か」
Dランクはまだまだルーキーの域ではあるが、生活水準的にはルーキーの域を脱した基準となる。
性格は荒いが、仕事はそれなりに真面目にこなしているので、イギルたちは日々の生活に困ってはいない。
だが、性能が高いマジックアイテムを買う程の余裕はない。
(街の近くに遺跡があるから都合が良いマジックアイテムが売られている可能性はゼロではないと思うが、あいつらがそれを買えるかどうか……うん、やっぱり無理だ。買えたとしても、不良品を掴まされたってオチになるだろうな)
そんな光景がリアルに想像出来てしまい、肉が気管に入りかけた。
「ッ! ゴホ、ゴホッ!!! ふぅーーー、危ねぇ危ねぇ」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、ちょっと考えごとしてだけだ」
その内容を聞いた二人はティーラスの様に夕食が気管にはいることはなかったが、同時に爆笑してしまった。
「も、もしそうなったら……ぶふっ! さ、最高過ぎますね」
「はっはっは!!! 本当にその通りだ。物語に出てくる悪役のオチにピッタリ過ぎるぜ!!!」
「全くもってティーラスの言う通りだな。まさに天罰が下るというやつだな」
二人としては是非ともそうなってほしいと願った。
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