あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
351 / 833

子供だろ?

しおりを挟む
「ちょっ、なんで帰るのよ!!!」

「なんでって、もう時間的にあれだから一旦街に帰るんだよ」

このままペルニクスが帰ってくるまで待ち、そのまま倒してくれると思っていたウィスタリスにとって、予想外の答えだった。

「え~~~、もうちょっと待ってれば帰ってくるって」

「……とりあえず、俺たちは一旦街に戻る。明日、またここに来る。約束は守れよ」

お前が見た目に反して馬鹿っぽい性格をしてるから、その情報は信用できない……とは言わなかった。
言えば確実にウィスタリスは怒り、今後ペルニクスを倒してもイライラが収まらない可能性がある。

それが容易に想像できたため、ティールはグッと本音を堪えた。

「分かってるわよ……ちぇっ。今日倒してくれても良いじゃない」

小さな声でそう呟いたウィスタリスだったが、その声はしっかりとラストの耳に入っていた。

そして……出会った当初からウィスタリスのことを気に入らなかったラストの顔には青筋が浮かび上がり、一目で怒っていることが解る。

「貴様、それ以上がたがたぬかせば、ペルニクスではなく貴様を潰すぞ」

「ひっ!!!!」

戦意や敵意どころか殺意まで全開状態の圧に、ウィスタリスは普段は出さない声を上げ、腰を抜かした。

「な、なによ!! 私、これでもそこそこ強いのよ!!!」

「なら……今ここでやるか」

「えっ。いや、それは……ははは。ごめんなさい」

ラストが五十パーセント程度の怒りや、冗談で言っているのではなく……ティールが許可を出せば、今すぐにでも自分を殺しに掛かってくると解り、さすがに謝った。

「ふん。寛大な心を持つマスターに感謝するんだな」

先程まで抑えていた怒りが爆発寸前状態になり、ラストの怒りは直ぐに収まらなかった。

「ラスト、街に戻るまでには消化しておけよ。そのまま街に入れば、すれ違う人皆驚いて腰抜かすことになるぞ」

「……それは良くないな」

主人にどうにかしろと言われ、数度深呼吸を行って心を落ち着かせる。

それだけでウィスタリスに対する怒りが収まることはないが、それでも幾分かは落ち着いた。

「ふぅーーー……マスター、本当にあの精霊を潰さなくて良かったのか」

幾分落ち着きはしたが、まだラストの中に過激な思いが残っていた。

「ラスト、お前まだその選択を考えてたのか?」

「精霊は、確か魔力が通った攻撃であれば、潰すことが出来る」

ラストの言う通り、二人にはペルニクスを倒さずに人の事情など考えずに迷惑を掛けている元凶の、ウィスタリスを潰せる力がある。

「いや、そりゃそうなんだけどさ」

師匠の一人であるリースから教えてもらっているので、ティールも自分たちなら倒せると解っている。

ただ、ティールはその選択を選ぼうとはしなかった。
理由としては……今ここでウィスタリスを殺してしまえば、今後出会うかもしれない精霊全てと敵対する可能性がある。

「でも、どうせなら平和的に解決した方が良いだろ。あそこを住処にしているペルニクスを倒せば、Bランクモンスターの素材も手に入るんだしな」

「……マスターは本当に冷静というか、大人だな」

「いや、俺だってウィスタリスの態度にイラつきはしたぞ。けどな……こう、冷静に見るとさ……子供だろ」

「子供だな」

「あんだけ大人っぽい見た目してるくせに、あんな駄々っ子みたいな態度を取る自分を一切恥ずかしいと思っていない。それを冷静に考えると、凄いバカだなと思えてさ」

我儘な部分も含めて、ティールは本当にウィスタリスを馬鹿でバカだなと思った。

目の前の駄々っ子精霊がバカ過ぎると思うと……なんだか怒りも薄まってしまった。

「馬鹿過ぎる正真正銘の馬鹿、か……なるほど。そう考えると、あの精霊に対する怒りがやや薄まった」

「だろ。子供で更に馬鹿なんだから、仕方ないって思うしかない」

ウィスタリスに対して事実だが超失礼なことを話しながら街に戻り、翌日……二人はウィスタリスに宣言した通り、ペルニクスの拠点地へと訪れた。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

前世は厳しい家族とお茶を極めたから、今世は優しい家族とお茶魔法極めます

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 代々続くお茶の名家、香坂家。そこに生まれ、小さな時から名家にふさわしくなるように厳しく指導を受けてきた香坂千景。  常にお茶のことを優先し、名家に恥じぬ実力を身につけた彼女は齢六十で人間国宝とまで言われる茶人となった。  しかし、身体は病魔に侵され、家族もおらず、また家の定める人にしか茶を入れてはならない生活に嫌気がさしていた。  そして、ある要人を持て成す席で、病状が悪化し命を落としてしまう。  そのまま消えるのかと思った千景は、目が覚めた時、自分の小さくなった手や見たことのない部屋、見たことのない人たちに囲まれて驚きを隠せなかった。  そこで周りの人達から公爵家の次女リーリフィアと呼ばれて……。  これは、前世で名家として厳しく指導を受けお茶を極めた千景が、異世界で公爵家次女リーリフィアとしてお茶魔法を極め優しい家族と幸せになるお話……。   ーーーーーーーー  のんびりと書いていきます。  よかったら楽しんでいただけると嬉しいです。

処理中です...