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三百八十六話 都合の良いモンスター

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自信が制作した武器で試し切りを行っているソウスケとザハークは鉱石の採掘は一切行わず、完全に試し切りだけに集中してモンスター達を斬って突いて潰していった。

自分達が造った武器を満遍なく使用しているので、相手の防御力に耐え切れず刃が欠けて使い物にならなくなった武器もあった。
しかし上等な鉱石やモンスターの素材を使って造った武器は期待を裏切らない威力を見せ、無事にモンスターを新たな材料に変えていく。

「やはりここのモンスターには火の属性が付与された武器、もしくは打撃系の武器が有効なようだな」

「みたいだな。風や水の属性が付与されている武器の斬撃でも傷付かない事は無いけど、やっぱり火が強いな」

超圧縮してはなった水圧カッターや切れ味を極限まで上げた風の斬撃でも倒せるモンスターはいたが、ソウスケの魔力操作が加わった結果とも言える。

純粋な武器の性能だけでは誰でも行える技能では無い。

「それと、土も打撃系の武器と合わせれば中々の威力だ。これから武器を造る際に打撃系の武器には基本的に火か土の属性を付与するか?」

「まぁ……確かにそれがオーソドックスだな。たで、別に俺は自分の店を造るつもりじゃないからな。もう少し遊びを入れても良いだろ」

「そうだったな。俺達のこれは趣味だ。真剣に取り組めど、遊び心が無くなっては趣味ではなくなる」

「そういうことだ。さて、次はこいつを試してみるか」

外見としては特に特徴の無い短剣だが、ザハークには見覚えのある短剣だった。

「それを試すのか。悪いとは言わないが、それは使って倒す相手はしっかりと選んだ方が良いんじゃないか?」

「解ってるよ。切れ味が悪い訳じゃないが、リーチは短いし属性を付与していないからな」

出来れば皮膚が堅くないモンスターが好ましい。
この鉱山の中で一般的な皮膚を持つモンスターがいるにはいるが、それでも堅い皮膚を持つモンスターの方が多い。

防御力が低そうなモンスターを探すこと五分後、運良く都合の良いモンスターと遭遇する。

「コボルトか。丁度良いモンスターだ」

特に属性を持つコボルトでは無く、通常のコボルト。
一般的なコボルトと違う点と言えば武器をと防具を装備しているところだろう。

「同業者から奪った長剣と防具か。まぁ……あんな皮鎧程度なら問題無いか」

右手に持つ短剣の刃はそこまで切れ味が高い訳では無い。しかし直ぐに刃が欠ける程脆くは無い。

「ザハーク、下がってろ。コボルトがお前にビビッて挑んで来ないからな」

「そのようだな」

少し離れた場所から観戦しようと動くザハークは後ろに下がりなら不敵な笑みと指でコボルトをさりげなく挑発する。

「グルルル……グララアアアッ!!!」

「おっ、なんだか知らんが急に元気になった。こっちとしてはやりやすいから有難いんだがな」

背を向けて逃げる相手に試しても良い結果は得られない。
ザハークの狙い通り挑発に釣られたコボルトは怒り、まずはソウスケを殺そうと手に持っている長剣で斬りかかる。

(レベルが低いのが一番の理由だが、やっぱり武器の扱いは総じて雑で大雑把だな)

コボルトの長剣による攻撃は身体能力が同レベルの相手にはそこまで脅威ではない程に読みやすい。
ソウスケにとっては止まって見える……というのは流石に言い過ぎだが、それでも余裕をもって紙一重で避けられるほどに遅く感じている。

相手の攻撃が空を切る度にソウスケの短剣がコボルトの体に切傷を加えていく。

「うん、皮の鎧も大して意味が無いな」

試すことに臆病なソウスケは少量だが刃に魔力を纏わせている。本当に補助程度の効果しかないのだが、それでもコボルトが来ている皮の鎧を苦も無く切り裂く。

ソウスケがコボルトの体を斬り刻み続けること約三分。コボルトの体は切傷だらけになっていた。
自分より小柄で弱そうな見た目のソウスケに一つ傷付けられない事に、自分の体に切傷が増えていくことにコボルトの心は徐々に恐怖で浸食されていた。

(無理もないな。今のソウスケは全く敵に対して殺意を向けていない。見た目も強者に見えず、敵意を向けてこない相手に為す術も無く傷付けられる。それは言葉に表しがたい恐怖だ)

もう自分の武器を全て使い切ったコボルトは体から血が流れ続けているのを無視して後ろを向いた。

「あ~~~あ、それは悪手だぞ」
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