転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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四百六話 悪魔との契約

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「これが、悪魔の契約書か」

ソウスケは手に持つ一冊の本をマジマジと見つめる。

黒と赤、そして黄が主な表紙。
明らかに怪しさが溢れる書物。

(これに自信の魔力を注げば悪魔と契約することが出来る……は、ははは。ちょっとドキドキしてきた)

異世界にやって来てからソウスケは危険な場面に何度も遭遇してるのだが、それでも今ほど心臓を高鳴らせている場面は無い。
しかも戦闘では無く、悪魔との契約。

「はぁーーーー、怖気づいていてもしょうがない。さっさとやっちまおう」

今はミレアナと部屋を分けているので、迷惑を掛けることは無い。
なのだが、隣の部屋にいるミレアナはソウスケに何かあった時にすぐに駆け付けられるように耳を壁に当てていた。

「ふん!! ぬ、ぅ……は、あぁ……」

自分が持つ魔力を限界まで書物に渡し続ける。
書物に魔力が吸い取られていくことで襲い掛かる虚脱感に耐えながらも、なんとか体から魔力を放出し続けた。

そして魔力が切れるほんの一歩手前まで渡し切り、ソウスケは意識が飛んでしまう前にポーションを飲み、なんとか意識を保った。

「はっ、はーはーはー。やっ……ば。本当に意識が飛ぶかと思った。こんな感覚初めてだ」

「あら、この人が私達のご主人様?」

「そのようだな。見た目はまだ子供だが、あれ程の魔力を渡してくれたんだ。並みの実力者では無いだろう」

声が聞こえた方向に顔を向けると、そこには見事なまでのイケメンと美女が宙に浮いていた。

「えっと、二人が……俺が契約する悪魔、ってことで良いのかな?」

「その認識で合ってるよ。私はレーナ、よろしくね、ご主人様!」

「俺はレグルスだ、よろしく頼むぞ旦那」

片方のレーナは黒に赤が混ざった長髪に、十代の容姿。そしてスタイルはミレアナ並みに高く、着ている服がエロい。
もう片方のレグルスは金に黒が混ざっており鬣≪たてがみ≫のような髪型、そして何よりも完璧な細マッチョ。女性なら誰しも見惚れてしまいそうな程の完璧なシックスパック。

(いやいや、二人共容姿とスタイルの高さが半端じゃなく高い。というか、二人共もう少し面積のある服を着ようよ。レグルスに至っては上半身裸だし)

「お、俺はソウスケって名前だ。まぁ……色々と訳アリ人間なんだ」

「あっ、それは何となく解ってたよ。魔力の質がなんか一般人と違ったし」

「そうだな。人間や獣人、エルフ、竜人と種族にって多少の差があるのは当たり前だが、旦那の場合は根本的に違う気がする」

(あっ、そこまで解っちゃうもんなんだ。う~~~ん、もしかしたらなんかの切っ掛けで俺がこの世界の人間じゃ無いってバレる日が来るかもしれないな)

ソウスケの考える可能性が無い訳では無いが、魔力の質でバレる可能性は現在のところ殆ど無い。
それほどまでに悪魔と人では魔力の中身を感知する能力の差が大きい。

「それで、ご主人様は私達に何を頼むの? 折角契約したんだし、何かお仕事があるんでしょ」

「あぁ……今は無いよ。ただ、俺が権力者と揉めて面倒な事になった場合、対象の人物を暗殺したりして欲しいんだ」

「おぉ~~~、なるほどなるほど。ご主人様はちょいちょい黒いねぇ~」

「黒いかどうかはどうでも良いが、旦那ならそんな事をレーナに頼まなくても自分の力でサクッと殺せるんじゃないか?」

「それは出来るかもしれないけど、後々面倒な事になる可能性があるのが権力者なんだよ」

この世界でソウスケは最強という訳では無いが、権力者と分類される者達の大半は殺せるだろう。
権力者達を守る盾を考えても、多くの者達を殺すことが出来る。

しかし、その殺したことが事件を捜査する者達にバレないかどうかは話が変わってくる。

「ほらほら、先輩達も言ってたじゃん。人間ってのは大した力を持ってない奴が偉そうにしてるってさ」

「そういえばそんな事を言っていたな。自由の身で生きるのであれば、そういった奴らを潰すなら確かに暗殺が一番だ。ってなると、そっちはレーナがメインか。なら、俺は普通の戦闘面で呼んでくれ。普段は姿を透明にして人間界をブラブラしてるか、冥界に帰っている。旦那が念じてくれれば即座に現れるから安心してくれ」

「勿論実体があるから、エロいことする時にでも呼んでくれて良いからね! それじゃばいば~い」

「お、おう。ばいばい……本当に消えちまった」

レーナとレグルスの姿が消え、魔力が感知できなくなった。
しかしそれでもソウスケは二人と見えない鎖で繋がっているように感じた。
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