転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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四百三十六話 たかが、されどゴブリン

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「せいッ!!」

コボルトとの戦闘が始まって一分も経たずにグランもコボルトを仕留めることに成功。

特に攻撃が当たることも無く右ストレートによって胸が大きく凹み、折れた骨が心臓に突き刺さって絶命。
余裕の勝利だが、グランはコボルトの異様な形相に押されて汗を多く流していた。

「お疲れ様」

「どうも……ソウスケさん、なんかこのコボルト達変じゃ無いですか?」

「あっ、グランもそう思ったか。俺もちょっと変だと思ったんだよな。何と言うか……必死だったんだよな。いや、相手を倒すことに必死なのは当たり前なんだけどさ」

ただ、その必死さが過ぎるとソウスケとグランは感じていた。
そこで後ろから周囲の警戒をしていたザハークがコボルトの死体を見て何かに気が付いた。

「……痩せているな」

「どうしたんだザハーク?」

「見ろ、コボルトの体が少し痩せていると思わないか」

「ん~~~……確かに良く見れば痩せてるかもしれないな」

ぱっと見では分からないが、良く見ればコボルトの体はやや痩せている。
それはグランが倒したコボルトやアーガス達が戦っているコボルトにも同じ状態が伺える。

「食える食料が少なくなってる、ってことなのか?」

「そういった状況がここ最近続いているのかもしれないな。もしそうなら、コボルトが俺の存在を無視して二人に襲い掛かるのも納得出来る」

「食えそうな存在なら何でもいいって事か」

通常のコボルトなら、ザハークが自身の強さを抑えていたとしても野生的な勘で考え無しに襲い掛かろうとはしない。

今回コボルト達が狙ったのはまだ見た目が大人では無い子供組ではあるが、それでも傍にザハークにプラスして大人組四人がいた。
なのでザハークを狙わないにしても、奇襲も無しに襲う様な無謀な真似はしない。

「そういう事だろう。もしかしたらこいつらの食料を無理矢理奪える程の強敵が……この森にいるのかもしれないな」

自分が望んでいる展開になるかもしれないと思ったザハークは思わず子供が見れば逃げ出してしまいそうな笑みを浮かべる。

ザハークはもしかしたら強敵がいるかもしれないという仮定に喜んでいるが、今回偵察隊を率いるリーダーであるレアレス達にとっては勘弁して欲しい状況だ。

(オーガであるザハークが嬉しそうな表情をする程のモンスターが……と決まったわけでは無いが、少なくともコボルト達の生活を脅かす存在がいることは分かった)

正直ギルドには適当に報告すると決めて直ぐに街へと帰りたいという思いが芽生えたが、それをプロとしてのプライドが消し去る。

「ザハーク、それは今回の偵察目的であるゴブリン達と関係があると思うか?」

「うむ……それは流石に断言出来ないな。別に俺は未来を見通せるわけでは無い。だが、その可能性がゼロとは言えないだろう」

「そうか」

言葉にこそ出さなかったが、ソウスケは最悪のケースを頭の中に思い浮かんだ。

(もしかしたらキング種……ゴブリンキングが大群を率いてるって可能性がある、か。もしかしたらゴブリンクイーンなんて奴も存在するか? だとしたら……秘密裏に俺達三人だけで終わらせた方が良いのかもしれないな)

死ぬ可能性があるなその戦いから遠ざける。
まだ本当にゴブリンキングやクイーンがいると確定したわけでは無いが、それでも万が一予想以上の大群がどこかで身を潜めているかもしれない。

そうなれば、必然的に冒険者ギルドや兵士達による討伐軍が編成されるだろう。

たかがゴブリン、されどゴブリン。
ただのゴブリンは確かに弱いが、チリも積もれば山となる。
油断していればグサリと命を持っていかれる。

そして上位種ともなれば殺される冒険者が増える。
その上キングやクイーンは大半の冒険者や兵士が敵う存在では無い。

(ゴブリンの大群が確認出来たら……完全に見せ場を奪うのはあれだし、発見したっていうレアレスさん達の報告が嘘扱いされるかもしれないから面倒な奴らだけ殺しておくか)

ようやくアーガス達もコボルトを倒し終わり、一行は再び森の中を歩きだし、ゴブリンの群れを探す。
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