転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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五百七話 消費を抑える

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「はぁ、はぁ、はぁ……さ、最後まで、当たらなかった」

「俺なんかサラッと受け流されたん、だけど」

「あのガタイで受け流すって……普通に考えから、外れてたわ」

日が暮れる頃、門下生たちは地面に倒れ込んで改めてザハークと自分達の差を痛感していた。

結局ザハークに一太刀浴びせられる者は一人もいなかった。
木剣で防御することすらなく喉元に剣先を突き付けられた者や、木剣と木剣がぶつかった瞬間に巻き上げられて手元から木剣を飛ばされた者もいた。

(今のところソウスケさんの様な例外的で規格外な奴はいないが、将来的に楽しみな奴は何人かいるな)

ダックスやその他数名はザハークが将来的には戦ってみたいと思える程、伸びしろがあった。
その他の者達も持って生まれた才能に胡坐をかいて怠けるような者はおらず、まだまだ伸びしろがある原石だと思えた。

「俺は生まれてからそう長く経っていないが、実戦経験の差が大きい。実戦を体験し、敵を倒せばレベルも上がる。そうなると自然とお前らとの差は広がっていく」

「……ようはダンジョンで多くのモンスターと戦えって事っすよね」

「ザックリと言えばな。ただ、一人で潜るのは止めておけ。俺の主、ソウスケさんは例外的になんでも出来るが、お前らは無理だろ」

「そりゃ無理っすね。というか、マジでなんでも出来るんすか。強いのは師範との戦いを観て分かったっすけど」

ダンジョンの中でなんでも出来る。
それは斥候や罠の察知、宝箱の錠の解錠。

戦いではアタッカー、メイジ、タンク、ヒーラーの役割を行えて何でも出来ると言える。

「出来るな……あの人は完全な規格外だ。大して生きていない俺でも解る。ダンジョンでは数名程で組んで潜り、気配察知の役割すら分担する。短時間であればお前たちも周囲を全て警戒出来るかもしれないが、何時間も続けるのは無理だろ」

「無理っすね」

「絶対に途中で集中力が切れる」

「……無理だな。何時間も気を張り詰め続けるのは精神力を削る要因になる」

「そうだろ。だからこそ、警戒する部分を分担するんだ。しかしソウスケさんは基本的にそうする必要がない。周囲で何かが動けば空間が揺れるのを感じ取り、何かが襲ってくるのが理解出来ると言ってたな」

「「「「「?????」」」」」

ザハークの言葉に門下生全員が内容を理解出来なかった。
剣の扱い以外も優秀なダックスですら、ソウスケが敵が接近してくるのを察知する方法が少し理解出来ない。

(……それはもはや天分の才なのでは?)

物事に対して自分には絶対にできないと決めつけたくないダックスだが、流石にその感覚は絶対に理解して実践することは出来ないと思えた。

「いや、風の流れだったか? ……とりあえずそんな事を言っていたな。ただ普通は出来ないだろうから最低でも三人ほどで組んで挑め。ランクが低くても気配を隠すモンスターはいる。攻撃の威力自体は大したことなくても当たりどころが悪ければ重症になる場合もある」

「……ザハークさんって結構考えて動いてるんっすね」

「これでも人の言葉をサラサラ話せるぐらい知力はあるからな。ただ、実際に戦う時はそんなことを考えてはいないがな」

脳筋的な思考を持ってるかと思っていた門下生だが、基本的に実戦では強い奴と戦うことしか考えていない立派な脳筋だ。

「剣を極めるのはお前らにとって当然だが、斥候の技術や他の技術を多少は覚えていおいて損はないだろう。ソウスケさんが言っていたように、弱いモンスターを倒すなら大して労力を必要としない方法の方が良いだろう」

基本的に拳一つで戦いを終わらせられるザハークだが、そういった考えは悪いと思わない。

「後は……武器の消耗を抑えるなら、この木剣とか使えば良いんじゃないか? ソウスケさんもこれと同じくトレントの素材が使われた木剣を持っているぞ」

「これは道場の物だからここでは自由に使えるっすけど、自分用の木剣を買おうとしたらそこそこ金が掛かるんすよ」

「……そういえば超弱いモンスターではなかったな」

ワンパンで倒せるモンスターだが、ザハークの記憶では決して弱くはないと覚えている。
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