転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
542 / 1,259

五百二十一話 久しぶりの解錠

しおりを挟む
二十一階層から攻略を再開させてから三日が経った……ソウスケ達はその間に二十七階層まで降りていた。

そして二十七階層の階段に近い場所で野営を行っている。
いつも通り熱々の美味い飯を食べ、風呂に入ってその日の疲れを癒す。

「ふぅ~~。さて、ちょっと開けていくか」

風呂から上がり、さっぱりしたソウスケは亜空間に溜まっていた宝箱を取り出し、次々と開けていく。
雷の魔力を利用した解錠方法に敵はなく、罠が仕込まれている宝箱も次々に解錠していった。

「……本職の斥候が見れば唖然とするでしょうね」

「かもしれないな。でも、雷魔法のスキルを習得していれば出来るって方法じゃなく……細かい作業を行える魔力操作がなければ無理だと思う。なんというか……鍵穴に入れ込む魔力量を細かい量で調整しなきゃならないんだよ」

軽々と開けていくソウスケだが、開ける時にはかなり集中して魔力を流し込んでいる。

「多少量を超えるのはギリセーフだけど、あまり量が多過ぎると罠が発動する」

「つまり、才少量から徐々に入れていけば問題無いと」

「使う魔力量はな。鍵を上げる魔力操作はまた別の話だ」

大変な作業なのだ。
そう説明しながらもソウスケはミレアナと喋りながら解錠を続けていく。

そして解錠を始めてからニ十分後、一旦そこで区切ることにした。

「とりあえず今日はこんなところで良いか」

「随分と開けましたね」

「そうだな……てか、やっぱりそこそこ溜まってたよな、ダンジョンで手に入れた宝箱」

発見して手に入れたのは良いが、解錠するのを忘れていた。
そんな宝箱がソウスケの亜空間には大量に残っている。

本来、冒険者はダンジョンで宝箱を発見すればその場で開ける。
もしくは、地上に持って帰ってから敵がいない場所で開けるものだ。

なぜなら……中に良質な物が入っていれば自分達で使う。そして使える道具だが、高く売れる物は売って金にしてしまう。
そして美味い飯を食べたい、泊まる宿のランクを上げたい。今使っている武器よりも質の良い武器を買いたい。

そういった理由があって、なるべく早い内に解錠してしまう。

だが、そんな欲望が少ないソウスケ達にとって直ぐに解錠する必要はない。
金は大量に貯め込んでおり、毎日好きなご飯が食べられる。現在所有している武器に不満は無い。

(……本当に今更だけど、モンスターの解体と一緒に宝箱の解錠も進めておかないとな)

モンスターの死体も宝箱もまだまだ溜まっている。

「次は中身の確認だな」

解錠に一旦区切りをつけたソウスケは中身の確認に移る。

「武器、武器、ポーション、鉱石、靴、盾、ポーション……果実?」

宝箱の中には価値のある道具、あまり効果ではない物……種類、質、共にバラバラだ。
武器は自分達が造れば高性能が物を完成させられると思ってしまう物や、ポーションも自分で造った方が良質な物が作れると感じてしまう質の低い物。

大概の物はソウスケにとって役に立つ道具ではないが、それでも宝箱を開けて中身を確認するのは楽しく感じる。

「これはスキル書……って、三冊も入ってるのかよ。もしかして当たりか?」

当たりかもしれないと思い、鑑定を使って調べる。

調べた三冊は体術、身体強化、爪術。
見事に武道家用の三冊だった。

「……うん、普通に考えればアリだと思うけど、俺としてはちょっと微妙だな」

「見事に専門的な三冊ですね。内容が纏まっているので三冊同時に売れば、割増しで買い取ってもらえると思いますよ」

「そうなのか? でもスキル書って一応貴重だしな……売るかどうかは一旦考えておこう」

あまり実戦では使わないだろうと思う質の武器や道具は纏めてギルドで売ると決め、まだまだ中身を確認していく。
そして宝箱の確認を終えたソウスケが一番興味を引いたのは……一つのコンロとフライパン、そして鍋だった。

「なぁ……これってちょっと馬鹿というか……いや、良いと思う。遊び心があると思うんだけど……ちょっと馬鹿じゃないか?」

「そう、ですね……こちらのフライパンと鍋、ミスリルを使われてますね」

武器を扱う者であれば、一度は憧れるミスリル製の武器。
そのミスリルが、フライパンと鍋の素材として使われていた。

セットになっているコンロも通常の者より火力の調節幅が広く、火が通りにくいモンスターの肉でも焼く時間を短縮できる。

そんな三セットがソウスケが一番興味を持った宝だった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

処理中です...