転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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五百二十話 観られていた

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「まっ、こんなもんだよな」

「一番上のモンスターがCランクですからね。レベルはニ十階層までと比べるとやや高かったですが、誤差みたいなものです」

「……やはり一撃ぐらいは耐えて欲しいものだな」

大量にいたモンスターはあっという間に三人によって討伐され、周りにも無数の死体が転がっている。

「Cランクぐらいだと、防御力が高くなかったらザハークの攻撃を一回だけでも耐えるのは難しいだろうな。あと、完璧にガードするにはある程度の反応速度も必要だ」

「ザハークの攻撃はスピードもありますし、モンスター側もガードするのに苦労するでしょうね」

「そうか……まぁ、その辺りは仕方がないな」

「そういうことだ。それじゃ……まだまだ時間もあるし、一気に解体するか!!」

ギルドに頼めば良いのだが、やはり冒険者として解体の腕を鈍らせたくない。
という訳で、一時間半ほど掛けてモンスターの死体を解体していく。

「ふぅーーー、終わった終わった。なんかこう……大量のモンスターの解体が終わった後って、なんかスッキリしない?」

「……そう、ですね。なんとなくですが解かります」

モンスターを討伐するのは一瞬で終わったが、解体はそんな短時間で終わらない。
ソウスケとミレアナの解体のスキルレベルはそこそこ高いが、それでも五十を超えるモンスターを全て解体するには、それ相応の時間が必要になる。

そしてザハークはいつも通り、血の匂いに惹かれたモンスターがいないか警戒をしていた。
結果、二人が解体している間に五体程モンスターが寄ってきたが、容赦なく瞬殺されてしまう。

寄ってきたモンスターの解体も終わり、再び探索を始める。

三人が戦っていた時は気付かなかったが、終わってからザハークに戦意を向けられて逃げた。
だが、今回のソウスケ達の戦いぶりを見ていた冒険者がいた。

「なぁ、マジでヤバかったな」

「ヤバいっつーか……最後、絶対にこっちに気付いてたよな」

「生きた心地がしなかったわ」

「あ、あの戦いを観た後だから、殺されるのではと思ってしまいました」

男女四人組のパーティーがかなり離れた位置からソウスケ達と、モンスターパーティーとの戦いぶりを見ていた。

四人が気付いたときには既に戦いが始まっており、助けに入った方が良いのかと思ったが……よくよく見れば全てのモンスターが一撃で倒されていた。

その光景に自分達の周囲を警戒するのも忘れ、三人に戦いを観続けていた。

「あれって確か最近この街にやって来た噂のパーティーだよな」

「超絶美人なエルフと鬼人かオーガか分かり辛い奴と……見た目子供、三人組のパーティー。その噂のパーティーで間違いないだろうな」

ソウスケ達のパーティーは滞在している街……だけではなく、徐々に他の街にも噂が広まっている。
有名どころのパーティーの様に大々的に広まってはいないが、奇妙な……少々アンバランスなパーティーがいると、話だけ知っている者がそれなりにいる。

ソウスケにとっては不本意だろうが、中には子供の冒険者は完全に美人エルフと鬼人のヒモだという話もチラホラと流れている。

事実としてはソウスケがミレアナとザハークを買い、拾わなければ二人の人生はよろしくない方向に向かっていたかもしれない。

だが、流石に詳しい話は広まっていないので、真実を知る者は殆どいない。

「モンスターパーティーを三人で壊滅させるなんて、完全にBランク……もしくはAランク並みの強さよね」

「話ではまだEランクだって聞いたけどな」

「はっ!? マジかよ……そりゃどう考えてもランク詐欺だよな」

「本当かどうかは知らない。あいつらのギルドカードを実際に見た訳じゃないからな。聞いた噂では、まだ低ランクらしいが……あの戦いぶりを見る限り、その噂は間違っているかもしれないな」

三人の個人の実力は明らかに高ランク冒険者のそれだ。
装備している武器等の質もあるが、素の戦力でも三人に勝てる戦闘職は多くない。

「でも、それならある程度しっかりとした話が広まってる筈よね」

「……俺は情報屋じゃないから詳しいことは解からん」

「私もあまり確証が持てる話は聞いたことがありません」

この話を地上に戻って同業者達に話しても、信じてもらえるか分からない。
だが、一瞬ではあるがオーガから戦意を向けられたのを思い出し、四人は知人に言いふらさない方が良いだろうと直感的に思った。
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