転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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五百四十一話 社会の縮図

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「すいません、臨時教師としてやって来たソウスケです」

警備員にギルトからの手紙を見せると、即座に学園の中へと案内される。

「中もしっかりと作られてるな」

「ここは未来の冒険者たちを育成する学園ですかね。だからその……多少やんちゃな生徒もいるんですよ」

少々恥ずかしい様子で作りが頑丈である様子を答える。
言葉をオブラートに包んでいるが、何が要因となっているのかは三人とも直ぐに理解した。

「あぁ、なるほど。それはなんというか……仕方ない部分ですね」

「そうなんですよ。偶に学生の中で飛び抜けた実力を持つ子が現れて……その子が他の生徒と喧嘩などになれば、頑丈に作られていても壊れる時がるんですよ」

「なるほどなるほど。学園としては強い生徒が卒業生になるのは良い事かもしれないですけど、問題をしょっちゅう起こされては困りものですね」

「そうなんだよ、良く解ってるじゃないかソウスケ君」

「ッ! どうやら自分はここまでで良いみたいですね。それでは失礼します」

自身の役割を終えた警備員は待機していた場所へと戻っていく。

「どうも、ダイアス。この間ぶりだな」

「あぁ、そうだな。三十階層のボスはどうだった?」

三人の様子を見れば、無事に倒せたのは解る。
だが、それでも冒険者としてはどういった結果になったのか気になり、訊かずにはいられない。

「トレントとエルダートレントですよね。手数の多さはやっぱりそれなりに厄介でしたよ。自分の攻撃を防ごうとした風の障壁と木のシェルターも破壊するにはそれなりの攻撃力や貫通力が必要だと思います」

ボスモンスターの特徴を褒める。褒めるが……そんな攻撃や防御をソウスケはあっさりと躱して破壊した。
エルダートレントの特徴を話すソウスケの顔に恐怖が浮かんでいないので、大した敵ではなかったのだとダイアスは理解した。

(複数のトレントとエルダートレントはかなり厄介なモンスターなんだが……いや、あれだけの数を余裕で倒せるソウスケ君たちの実力を考えれば、トレントやエルダートレントを倒すことぐらい造作も無いか)

百を超えるモンスターの群れを倒す。
その功績の方がトレントとエルダートレントを倒すことよりも難しいのは明らかだった。

「なるほど、でも……そこまで苦戦する相手ではなかったんだな」

「トレントやエルダートレントは再生するのが厄介ですけど、魔石を抜き取ってしまえば一発で勝負は付きますからね。懐に入ってしまえば問題無く倒せます」

「な、なるほど。中々豪快な方法だな」

ソウスケの言葉は間違っていない。間違っていないのだが、そう簡単に真似出来る討伐方法ではない。
Bランクの上位やAランク冒険者並みの脚力と判断力、貫通力のある攻撃を持って行える討伐方法。

ダイアスにはとても真似出来る方法ではなかった。

「それじゃ、職員室に案内するよ」

職員室まで辿り着く途中で、ちらほらと在校生や教師とすれ違う。
すれ違う度にソウスケたちに視線が集まる。

圧倒的な美貌とスタイルを持つミレアナと、屈強な肉体を持つ鬼人……もしくはオーガなのか見分けられないザハーク。
二人には当然の様に視線が集まるが、今回はソウスケにも多くの視線が集まっていた。

ソウスケの見た目はいたって平凡的だが、教師の中でもトップクラスの実力を持つダイアスと話しているのはソウスケのみ。
他の二人と比べれば見た目は見劣りするが、視線を集めるには十分だった。

(随分と俺に視線を向けて来るな。特に珍しい見た目じゃないと思うんだけど……てか、やっぱり学生って良いな)

本人は何故自身にも視線が集まっているのか、理由がさっぱりだった。

「制服が気になるのか?」

「なんというか……学生も楽しそうだなって思って」

「なるほど、俺もそう思った時期があるよ。いや、今でも楽しそうだなって思うが……学園も結局は社会の縮図だ。面倒な部分はそれなりにあるぞ」

「は、ははは……やっぱりそうだよな」

それは勿論解っていたが、教師であるダイアスから伝えられるとやっぱり苦労する点はあるのだと過去の経験と重ね、苦笑いしてしまう。
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