転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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六百三十話 モンスターではなく食材

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「美味そうな肉たちだな」

「そうですね」

難無くニ十層のボス部屋までやって来た三人。
待ち時間はいつも通り、各々自由に時間を潰して他の冒険者から「こいつらマジか?」といった目で見られながら過ごし、ボス部屋の中に入る。

ニ十層のボスはオークの上位種が四体と、リーダーが一体。
計五体のオーク上位種が立っていた。

全員武器を持っており、防具まで身に着けている。
そしてレベルは二十後半と、中々に厄介な実力を持っている。

ベテランの冒険者であっても、統率されているモンスターは厄介という認識を持つ。
故に、Cランクの上位種たちはなるべく早く仕留めたい。

ただ……ソウスケたちからすれば基本的にオークは美味い肉。
そんな認識しかなく、倒すのが面倒という認識は一ミリもない。

これがキングやロード、他の亜種やザハークのような希少種だったりすれば厄介という認識を持つが、我前の上位種達からは全く恐怖を感じない。

「誰が行く?」

「俺が行こう。直ぐに終わらせる」

目の前にいるオークがジェネラル……もしくはレベルが三十後半ほどあれば少しぐらい遊びたいという思いが生まれたかもしれないが、目の前の上位種達にはそそられなかった。

「頼んだ」

ソウスケがザハークに任せると、タイミングを合わせたかのようにオークの上位種たちは全力でザハークを……正確には三人を殺しに掛かった。

ソウスケたちからはザハークしか参加しないが、人の言葉が分からないオークたちにはそんなこと関係無い。
全力で殺すために身体強化のスキルを発動し、不格好ながら武器や体に魔力を纏って全力ダッシュ。

アーチャーやメイジは初っ端から最大火力の攻撃を放った。

戦うのはザハークだけとはいえ、こちら側に攻撃が飛んでくるかもしれないと思った二人は迎撃の用意をしようとしたが、無用な心配だった。

「……ぬるいな」

矢も風の槍も全て水の攻撃魔法で相殺。
そして武器を振りかざすナイトとウォーリアーの攻撃を日本の腕で受け止めた。

全力で振りぬいた二体の攻撃はどれだけ力を入れても、これ以上押し進むことはない。
ザハークは小さくため息を吐き、後衛二体が何か仕掛けてくる前に一瞬だけ両手を離し、貫手で喉を貫いた。

「「ブッ!!??」」

気付いた時、敵は既に離れた場所に立っており、自分たちは呼吸がままならない状態となっていた。

味方が殺られたことが分かった残り三体に動揺の表情が浮かぶ。

「あぁ~~~あ。ザハーク相手にそんな悠長にしてたら直ぐ殺されるのに」

「ソウスケさん、ザハークが相手ではそこを直せていたとしても、勝つことは不可能ですよ」

「それもそうだな」

ボスのオークたちとザハークではどう足掻いても埋められない実力差がある。
あっという間にアーチャーとメイジも喉を潰されて戦闘不能。

完全に息絶えたナイトとウォーリアーは既にソウスケが亜空間の中に放り込んだ。

「ブ、ブモォォオオオオオオ「遅い」オオォ、ォ……」

ゆっくりと近づかれ、完全に攻撃圏内に入ったザハークに対してロングソードを両手で振りぬこうとしたオークリーダーだったが、振りぬく前にザハークの貫手が炸裂。

オークリーダーの統率スキルを利用した仲間を使い、敵を殲滅しようとする指揮官としての戦い方が決して悪かった訳ではない。

ただ、対峙した相手は指揮官気分で倒せる相手ではなく……加えて、圧倒的な身体能力を持っている。
オークリーダーが考えて動こうと決めた時点でザハークは既に動いていた。

「ソウスケさん、今日の夕食はこいつらの肉でどうだ」

「良いな。それなら……部屋から出たら早速解体するか」

ミレアナが水の扱いに長けているので、血抜きが速攻で終わる。
そしてミレアナだけではなくソウスケも解体はかなり慣れているので、オーク一体程度であれば大した時間を掛けずに終わる。

ここまでどう見ても最速最短で攻略を進めてきた三人。
だが、予想外という現象は予測できないからこそ人の不意を突く。
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