転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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六百五十二話 妥当なチップ額

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解体場に着いたソウスケは早速グローチの死体を取り出し、床に置いていく。
そして数分後に、覚悟を決めた解体士たちが解体場へと入室。

だが、その覚悟を決めた顔は一瞬で崩れることになった。

「うぐっ!!??」

解体士のリーダーだけではなく、全員が一斉に顔を歪ませた。

「えっと……すいません、よろしくお願いします」

「お、おぅ。謝ることはないぞ、兄ちゃん。モンスターの死体を解体するのが俺たちの仕事だからな」

特に問題無いと言い切るが、心の中ではせめて特別手当ぐらいは欲しいと思っていた。

(……すいません。ただ、やっぱり自分で解体する気には慣れないので、よろしくお願いします)

対峙した瞬間、本当に気持ち悪いと感じた。
倒す方法も遠距離攻撃で倒す……という内容しか浮かばない。

そんなある意味驚異的なモンスター、グローチを解体してもらえることにソウスケは心の底から感謝していた。

「甲殻と魔石だけは残してください。後は売却で。それと……解体が終わったら、これで一杯やってください」

存在するだけで相手に悪感を与えるグローチを解体してくれることに感謝の意を込め、ソウスケは解体士のリーダーに金貨十枚近くを渡した。

「い、良いのか?」

「はい。何と言いますか……今回は皆さんに押し付ける形で仕事をお願いすることになったので」

本音だった。
虫系のモンスターなどでも平気で解体作業が行えるソウスケだが、グローチだけはどうしても無理だった。

「そ、そうか……有難く貰おうよ。今日中には終わるから、明日さの朝頃にギルドに来てくれれば素材と金を受け取れる筈だをお前ら、気合入れてやるぞ!!!」

「「「「「ぅおっす!!!!!」」」」」

金貨十枚もあれば、全員が腹一杯になるまで食って呑んでも問題無い。

「いや~~~、解体士の人たちって凄いな」

解体場から戻る途中、ソウスケは改めて解体士たちを凄いと思い、感謝した。

(俺だったらお金貰っても絶対に解体したくない。戦闘力は多分そんなにって感じなんだけど……本当に存在感だけは一丁前というか、恐ろしいというか……あれが巨大化したモンスターがいるなら、原型を留めて殺すとか考えずに大技をぶっ放して殺すだろうな)

グローチと対峙した時、今まで体験したことがない恐ろしさを感じた。
その感覚を今でも覚えている。

「さて、丁度腹も減ってきたし早くご飯を食べよう、と……相変わらずミレアナはモテモテだな」

ソウスケが冒険者ギルドに戻ると、待機していたミレアナが女性の冒険者に囲まれていた。

(ミレアナは綺麗系の容姿だから、男の冒険者だけじゃなくて女性冒険者からもモテるんだろうな……男装すれば更にモテそうだ)

執事服を着た男装姿のミレアナを思い浮かべ、それはそれでありだと思えた。

ソウスケはそんなことを想像しながら、ここでミレアナに声をかけに行くのは女性冒険者たちに悪いと思い、隅っこで会話が終わるまで待つと決めた。

ただ、ソウスケが戻ってきたことに気付いたミレアナは直ぐに女性冒険者たちに謝り、ソウスケの元へやって来た。

「解体士の方達は引き受けてくれましたか?」

「あぁ、モンスターの死体を解体することが仕事だからな。ただ、さすがに可愛そうと思ったから少しチップを渡したよ」

世間一般的に金貨十枚近くはチップではないが、懐事情とグローチの死体を解体するという大変さを加味して、ソウスケにとっては妥当な額だった。

「そうですね……あれを解体するのは、確かに酷と言えるでしょう」

「だよな……それより、話を切り上げても良かったのか?」

「はい、問題ありません。申し訳ないと謝ってから来ましたので」

(いや、そういう問題ではないと思うんだが)

チラッと先程までミレアナと話していた女性冒険者たちの方を見ると、何やら自分の方を見ながら喋っているのが見えた。

(会話の内容は聞こえないけど、視線的に敵意こそないけど好意的な感じではない、な……うん、仕方ない仕方ない)

もう何年か歳を取るまでの辛抱だと思い、外で待っているザハークの元へ向かった。
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