転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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六百五十一話 申し訳ないと思うが

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「ふぅ~~~~、ようやく戻ってきたな」

目的を果たしてからはゆっくり上を目指したので、地上に戻ってくるまで一日半ほど時間が掛かった。
だが、道中ではヒートミノタウロスやファイヤドレイクのような珍しい個体に遭遇することはなく、無事に地上へと戻って来れた。

(ファイヤドレイクと遭遇したから、もう強いモンスターとは遭遇しないと思っていたけど、上に戻るまで群れと結構遭遇したな)

ダンジョンに生息するモンスターたちがソウスケたちを恐れ始めたから……という訳ではないが、二種類のモンスターが同時に襲い掛かることもあった。

(お陰で、火属性の素材には当分困らないな)

冒険者が本業ではあるが、鍛冶師でもあるソウスケにとっては非常に満足のいく探索となった。
それは同じ鍛冶を行うザハークも、強敵だったファイヤドレイクと戦えたお陰で、地上に戻るまで満足気な表情が消えることはなかった。

「さて、まずはなにしたい?」

ようやく地上に戻ってきて、まずは何がしたいか。
ソウスケは特にこれといったことはないので、二人の意見を求めた。

「ふむ…………俺は飯が食いたい」

「そうですね……私もザハークと同じく、休息という意味も込めて食事を取りたいですね」

「飯か。確かに時間的にも悪くはないな」

現在は昼過ぎなので、丁度客が引いて空いている時間帯。
朝食を食べてからそれなりに時間が経っているので、腹の具合も悪くない。

(ブラブラ見て回ってサクッと決めるか……ん? そういえば)

ソウスケは何か一つ、大事なことを忘れていたことに気付いた。
地上に戻ってから、まずはこれをしよう……そう決めていたことがあった。

「……二人とも、飯を食べるのはちょっと冒険者ギルドに寄ってからでも良いか」

「えぇ、大丈夫ですよ」

「勿論問題無い……もしかして、あれか? ランクアップについての話か」

「え? いや、それではないんだけど……うん、ちょっと済ませておきたいことがあるんだよ」

ソウスケたちは、ダンジョンで倒したモンスターはなるべく頑張って、ダンジョン内で解体してきた。
数があまり多くなければ、倒したその場で解体。

数が多ければ夕食後の軽い運動にということで、がっつり解体作業を行う。
血の匂いに釣られてモンスターがやって来て、更にモンスターの死体が増えてしまうこともあるが、それを承知でソウスケたちはダンジョン内で解体作業を行っている。

ちなみに、既にヒートミノタウロスやファイヤドレイクも解体済み。

ただ……まだ解体を終わらせていないモンスターの素材が残っており、その死体はなるべく自分たちで解体したくない。

(ソウスケさんの顔色が少し悪いですね。いったい何を考えて……やはりランクアップの件について悩まれている? しかし、私たちの実力を考えればDランクの昇格試験ぐらいはもう受けても良いのですが……)

ギルドの職員からランクアップについて勧められているのは事実。

(この街ではその……それなりに目立っていますし、色々と跳び越えてBランクやAランクにならなければ特に問題は起こらないでしょう)

仮に何か問題が起こったとしても、自分がソウスケを守る。
ミレアナの思いはいつもと変わらなかった。

ただ、ソウスケはランクアップの件に関して悩んでいる訳ではなかった。
というよりも、何か悩んではいない。

これから冒険者ギルドの解体士たちに頼むことが……少し申し訳ないと思っているのだ。

「すいません、モンスターの死体の解体を依頼したいんですけど」

「畏まりました。数はどのくらいでしょうか」

「えっと……多分、四十ぐらい……だと思います」

「よ、四十!? か、畏まりました」

受付嬢はソウスケという冒険者が他とはレベルが段違いの空間収納スキルを有していることを知っているので、驚きこそすれどソウスケの言葉を疑うことはない。

そしてソウスケは解体場に案内される前に、受付嬢にいったいどんなモンスターの解体を依頼するのかを伝えた。
その結果……受付嬢はモンスターの名前を聞いた段階で、ほんの一瞬ではあるが頭が真っ白になった。
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