680 / 1,259
六百五十話 バカに賛同するバカ
しおりを挟む
「…………」
「ミレアナ、どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません」
ザハークがファイヤドレイクとの戦闘に勝利し、上層へ向かう途中でミレアナの視線が一つの場所に集中していた。
(……もしかしたら、あのバカたちだったのかもしれませんね)
ミレアナはザハークとソウスケの二人と比べ、聴力が高い。
なので、ザハークが後方へ特大火球を弾いたときに、後方から聞こえた声に聞き覚えがあった。
(偶々ですので、こちらが百パーセント悪いとは言えませんが、こちらに全く非がないとは言えないですよね)
元々ザハークは後方で待機しているギリスたちの存在に気付いており、わざと特大火球を後方へ弾き飛ばしたわけではない。
それはミレアナも分かっているので、ザハークの動きにケチを付けるつもりはないが、今後ダンジョン内の行動で気を付けた方が良い内容だと思った。
(しかし、バカたちが偶然いたとは……不謹慎かもしれませんが、面倒な連中が消えてくれて助かりましたね)
ギリスたちが自分たちと対立した形になっているので、ミレアナは自分たちがギリスに戦闘で負けるとは一ミリも思ってないが、面倒な存在が消えてくれるのは有難い。
(いや、そもそもバカたちがあそこにいたのは、偶々ではないかもしれませんね……マジックアイテムには調べたい対象の位置を調べる物もあるでしょうから、それを使って私たちを追跡してきた……そしてあと一歩、襲い掛かるだけという場面で特大火球が飛んできたといった流れでしょうか?)
道中でグローチに襲われて仲間を失ったという事情などは知らないが、もし自分が考えている通りだと思うと、ミレアナは小さく噴き出してしまった。
「ふふ……バカな人達ですね」
「? 道中でバカな奴でもいたか??」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ……無意味な理由でダンジョンに潜る者もいるのだと思いまして」
「そ、そんな奴がいたのか? 特に記憶にないが……もしいるなら、物凄いバカなんだろうな」
「えぇ、物凄くバカだと思います」
実際にギリスとその取り巻きに会ったことがあるミレアナから視て、ギリスたちは三十一階層以降の階層で十分に動けるほどの力量を持っていなかった。
(そもそも全員が三十一階層に転移できたのでしょうか? もしや、わざわざ二十一階層に転移して私たちを追いかけてきた? もしそうなのであれば……わざわざ無駄足ご苦労様、としか言えませんね)
ミレアナはソウスケというダンジョンの探索を行う上で、圧倒的に頼りになる人物がいるからこそ、スムーズにダンジョン探索を行えているのだと自覚している。
ソウスケのような超万能冒険者がいないギリスたちが無理矢理二十一階層から駆け足で進み、三十層のボスを突破して三十一階層以降に突入するには、それなりの犠牲が必要。
ミレアナが考えている通り、ギリスたちは三十一階層を突破するのに、決して少なくない犠牲を払った。
そしてマグマ帯で活動するのにある程度慣れてきたところで、標的を発見。
ザハークの戦闘が終わるまで待ち構えていると、不意に特大火球が自分たちのところに飛んできて……衝撃でマグマの海に飛ばされて呆気なく人生終了。
(仮に私の考えていることが正しければ、彼らは本当に無駄死にしたことになりますが……首謀者はギリスという名の男でしょうか? であれば、同行させられた他のメンバーは可哀そうとしか言えませんね)
確かに個人的な支援に同行させられ、特に何も得る物がなくマグマの海に落ちて死んだのであれば、可哀想だろう。
しかしミレアナの予想に反し、ギリスに同行していたメンバーはギリスの考えに賛同し、自らソウスケたちへの襲撃に参加していた。
ミレアナは世の中にどうしようもないバカがいることは知っていたが、一つのクランにそんな大バカの考えに賛同するバカが何人もいるとは予想出来なかった。
「ミレアナ、どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません」
ザハークがファイヤドレイクとの戦闘に勝利し、上層へ向かう途中でミレアナの視線が一つの場所に集中していた。
(……もしかしたら、あのバカたちだったのかもしれませんね)
ミレアナはザハークとソウスケの二人と比べ、聴力が高い。
なので、ザハークが後方へ特大火球を弾いたときに、後方から聞こえた声に聞き覚えがあった。
(偶々ですので、こちらが百パーセント悪いとは言えませんが、こちらに全く非がないとは言えないですよね)
元々ザハークは後方で待機しているギリスたちの存在に気付いており、わざと特大火球を後方へ弾き飛ばしたわけではない。
それはミレアナも分かっているので、ザハークの動きにケチを付けるつもりはないが、今後ダンジョン内の行動で気を付けた方が良い内容だと思った。
(しかし、バカたちが偶然いたとは……不謹慎かもしれませんが、面倒な連中が消えてくれて助かりましたね)
ギリスたちが自分たちと対立した形になっているので、ミレアナは自分たちがギリスに戦闘で負けるとは一ミリも思ってないが、面倒な存在が消えてくれるのは有難い。
(いや、そもそもバカたちがあそこにいたのは、偶々ではないかもしれませんね……マジックアイテムには調べたい対象の位置を調べる物もあるでしょうから、それを使って私たちを追跡してきた……そしてあと一歩、襲い掛かるだけという場面で特大火球が飛んできたといった流れでしょうか?)
道中でグローチに襲われて仲間を失ったという事情などは知らないが、もし自分が考えている通りだと思うと、ミレアナは小さく噴き出してしまった。
「ふふ……バカな人達ですね」
「? 道中でバカな奴でもいたか??」
「いえ、そういう訳ではありません。ただ……無意味な理由でダンジョンに潜る者もいるのだと思いまして」
「そ、そんな奴がいたのか? 特に記憶にないが……もしいるなら、物凄いバカなんだろうな」
「えぇ、物凄くバカだと思います」
実際にギリスとその取り巻きに会ったことがあるミレアナから視て、ギリスたちは三十一階層以降の階層で十分に動けるほどの力量を持っていなかった。
(そもそも全員が三十一階層に転移できたのでしょうか? もしや、わざわざ二十一階層に転移して私たちを追いかけてきた? もしそうなのであれば……わざわざ無駄足ご苦労様、としか言えませんね)
ミレアナはソウスケというダンジョンの探索を行う上で、圧倒的に頼りになる人物がいるからこそ、スムーズにダンジョン探索を行えているのだと自覚している。
ソウスケのような超万能冒険者がいないギリスたちが無理矢理二十一階層から駆け足で進み、三十層のボスを突破して三十一階層以降に突入するには、それなりの犠牲が必要。
ミレアナが考えている通り、ギリスたちは三十一階層を突破するのに、決して少なくない犠牲を払った。
そしてマグマ帯で活動するのにある程度慣れてきたところで、標的を発見。
ザハークの戦闘が終わるまで待ち構えていると、不意に特大火球が自分たちのところに飛んできて……衝撃でマグマの海に飛ばされて呆気なく人生終了。
(仮に私の考えていることが正しければ、彼らは本当に無駄死にしたことになりますが……首謀者はギリスという名の男でしょうか? であれば、同行させられた他のメンバーは可哀そうとしか言えませんね)
確かに個人的な支援に同行させられ、特に何も得る物がなくマグマの海に落ちて死んだのであれば、可哀想だろう。
しかしミレアナの予想に反し、ギリスに同行していたメンバーはギリスの考えに賛同し、自らソウスケたちへの襲撃に参加していた。
ミレアナは世の中にどうしようもないバカがいることは知っていたが、一つのクランにそんな大バカの考えに賛同するバカが何人もいるとは予想出来なかった。
120
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる