転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
717 / 1,259

六百八十七話 強化の秘密

しおりを挟む
「お前、本当にただのオーガか?」

「人の言葉を喋る時点で、普通のオーガではないと思うが?」

下っ端連中はソウスケとミレアナに任せ、ザハークはバンディーとの戦闘を軽く楽しんでいた。

(この感じ……ゴブリングラップラーよりは上か)

ゴブリンファイターの上位種にあたるゴブリングラップラーはCランクに該当し、その体はもはやゴブリンには見えない大きさ。

同じCランクのオーガであっても、食われる可能性は充分にある。

(おそらく、冒険者ならBランク……といったところか。ふふ、良いな……それなりに楽しめる)

今のところザハークの動きに付いて来れているバンディー。
そんなバンディーをザハークは面白いおもちゃが見つかった子供の様な目を向けた。

「それもどうだ、な!!!」

「ふん!!」

両者の重い一撃がぶつかり、結果はややバンディーが押された。

(こいつ……普通のオーガよりも体格はちぃせぇくせに、パワーはどう考えても通常種のオーガより上だな)

ザハークはただのオーガではなく、希少種。
身体能力だけではなく、知能や魔力においても通常のオーガを大きく上回っている。

そしてレベルもそこら辺のオーガよりも断然高く、強化系のスキルを使用しているバンディーを素の状態で対応。

まだまだ余裕があり、バンディーとの戦いで魔法は一度も使用していない。

(チッ!!! どっからこんなオーガが生まれたんだ……あり得ないだろ)

あり得ない、なんてことはあり得ない場所であるダンジョンで生まれたので、決してあり得なくはない。

「よっと……認めてやるよ、オーガ。お前は強い」

「そうか。お前も盗賊にしてはそれなりに強いぞ」

ザハークに煽っているつもりはない。
ただ事実を述べただけ。

しかし、言葉の感じ方は人それぞれであり……バンディーにとっては、完全に煽りの言葉だった。

(ぶっ、ザハーク……真正面から喧嘩売り過ぎだぜ)

(……あれが天然というものでしょうか)

二人はザハークが素で無意識に煽りの言葉を返したと解っており、ソウスケは思わず吹いてしまった。

「嘗めやがって……まっ、お前もお前らも……これで終わりだ」

いかにも最後の最後に殺されそうな言葉を吐くと、バンディーは一つの魔法陣を展開。

そしてザハークはその魔法陣から放たれるオーラに見覚えがあった。

(この感覚……なるほど。運良く契約できたということか)

ザハークが感じ取ったオーラに、ソウスケとミレアナも反応した。

(へぇ~~~~~。下っ端連中も下手な強化魔法よりも強化出来たのは、それが理由だったんだな)

(特別でもない人間が、ここまで他者を強化出来るのは、そのような理由があったのですね……契約できたところを考えると、特別ではない……という訳でもないかもしれませんね)

禍々しい雰囲気を放つ魔法陣から現れたのは……一体の悪魔。

人の体を持ちながらも、頭は獅子。
サソリの尾を持ち、背には鷲の羽を四つも持つ。

「バンディーか……俺を呼んだってことは、お前だけじゃ勝てない敵と遭遇したのか」

「あぁ、そうだよ。あの人の言葉を喋るオーガだ」

「……ほぅ。確かに普通のオーガではないな。亜種か……はたまた希少種か」

亜種か希少種か。
そんな悪魔……パズズの言葉にバンディーは少し驚くが、それでもパズズを召喚できたことでザハークたちに対する不安は全くない。

「おいおい、悪魔って……さすがに不味いんじゃないか?」

「……それなりに強そうではあるな」

「加勢した方が良いんじゃねぇのか?」

「いや……それは大丈夫だろ。こっちは全部片づけ終えたし、ザハークが倒し終えるのをゆっくり観とこう」

確かにバンディーが召喚した悪魔はそこら辺のモンスターよりは圧倒的に強い。
それはソウスケも解っているが、どこからどう見ても自分と契約しているレグルスとレーラよりは強そうに思えなかった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...