729 / 1,259
六百九十九話 身勝手な考えだが
しおりを挟む
ソウスケが発した言葉に対し、ラップやジャン……他に会話を聞いていた他のベテラン冒険者たちは、少々顔を引き攣っていた。
(ま、間違ってはいないが……あっさりと確信を突くね)
(おいおい、さっきからフォルクスの顔が赤くなりっぱなしだぞ。このままいくと憤死するんじゃねぇか?)
ベテラン組はソウスケの考えが間違っているとは思えない。
だが、その考えをルーキーたちが理解出来るかといえば……おそらく無理だろうという想いが強い。
そしてその考えは的中しており、フォルクスたちは直ぐにソウスケの言葉に対して納得は出来ない状況。
「Dランクっていえば、一応冒険者の枠組み的に素人の領域から抜け出した位置。プロと呼べる……のか? とりあえず、生活はそれなりに安定してきたところだろ」
ランクが上がれば、受けられる依頼の幅が広がる。
そして達成した時に報酬金額も上がり、冒険をするにはそれなりに必要経費が掛かるが、それでも生活水準のレベルも必然的に上がる。
「でも、現状に満足出来てない。簡単に自分たちより先に上に登った俺に対してのイラつきってのもあるだろうけど、やっぱりそこが問題だろ。年齢を考えれば現時点でDランクなのは上出来。でも、今の生活水準に満足してないのか……自分の力不足を感じてるのか」
Dランクの冒険者であっても、会話を重ねればソウスケに対して否定的な考えがなくなる者もいる。
だが、フォルクスはソウスケに対して今でも否定的な感情を持ち続けている。
「フォルクスが何に対して満足してないのかは知らないけど、それならお前はその不満を埋める為に全力で努力してるのか?」
「お前……俺が、俺たちが全力で上に向かってないとでも言うのか!!」
一度は周囲から多くの視線を向けられている事に気付いて怒気を収めたが、ソウスケの言葉で再発。
「……そうなんじゃないか?」
そんな怒気に対して、受け流すでも受け止める訳でもなく……真っ向から押し返した。
(なるほど。ソウスケはそう考えるか……しかし、フォルクスたちの様な子供たちに、それを求めるのは酷ではないか)
巨人族のラッソはいち早くソウスケの考えを察した。
「だって、そもそも上を目指す意識が高いなら、ラップさんたちみたいに俺の体験談から少しでも自分の糧にしようと……吸収しようとするだろ」
「ッ!!!」
まずは、最も過ぎる返し。
経験からくる対応でもあるが……確かに、そこがラップたちとフォルクスたちの差の一つ。
「後……本当に強くなりたいなら、死なない程度に永遠と……毎日頑張り続けるだろ。いや、さすがに永遠は無理か。でも、一年か半年……それぐらいの期間、せっかくダンジョンが複数ある街に滞在してるんだし、何度も実戦を経験して、良かった動きをギルドの訓練場で振り返る。悪かった動きを反省する。それぐらいやるんじゃないか?」
「「「「「…………」」」」」
暴論ではないか?
そう思えなくもない内容ではあるが、決して全て間違っている訳でもない。
元々持っている才能という点ではソウスケの方が圧倒的に上であり、躓くことが殆どないが……それでもソウスケは休日でもダラダラと過ごすことはない。
「……まぁ、あれじゃ。ソウスケの言うことは間違っておらん。そういった無茶な日々を繰り返して化けた者もおるからの」
年長者であるオーザストは今まで多くの冒険者を見てきたが、殆ど関りがなくとも心配してしまう生活を送っている者が……数年後には自分のランクを追い越していたという話が耳に入ったことがある。
「儂としては、あまりお勧めは出来んがの」
「それは俺も解ってます。ただ、それだけ本気で強くなる為に取り組んでいれば……俺みたいな存在に対して、不満を持たないと思うんですよ。だって……自分は出来る限りの全てを行って前を向いてるんですから」
とても身勝手な考え。
元々この世界の住人ではないからこそ思い浮かぶ考えかもしれない。
全てのルーキーがソウスケの考えに納得できるわけないが……フォルクスたちは何も言い返すことが出来ず、ソウスケの言葉に色々と納得していた。
(ま、間違ってはいないが……あっさりと確信を突くね)
(おいおい、さっきからフォルクスの顔が赤くなりっぱなしだぞ。このままいくと憤死するんじゃねぇか?)
ベテラン組はソウスケの考えが間違っているとは思えない。
だが、その考えをルーキーたちが理解出来るかといえば……おそらく無理だろうという想いが強い。
そしてその考えは的中しており、フォルクスたちは直ぐにソウスケの言葉に対して納得は出来ない状況。
「Dランクっていえば、一応冒険者の枠組み的に素人の領域から抜け出した位置。プロと呼べる……のか? とりあえず、生活はそれなりに安定してきたところだろ」
ランクが上がれば、受けられる依頼の幅が広がる。
そして達成した時に報酬金額も上がり、冒険をするにはそれなりに必要経費が掛かるが、それでも生活水準のレベルも必然的に上がる。
「でも、現状に満足出来てない。簡単に自分たちより先に上に登った俺に対してのイラつきってのもあるだろうけど、やっぱりそこが問題だろ。年齢を考えれば現時点でDランクなのは上出来。でも、今の生活水準に満足してないのか……自分の力不足を感じてるのか」
Dランクの冒険者であっても、会話を重ねればソウスケに対して否定的な考えがなくなる者もいる。
だが、フォルクスはソウスケに対して今でも否定的な感情を持ち続けている。
「フォルクスが何に対して満足してないのかは知らないけど、それならお前はその不満を埋める為に全力で努力してるのか?」
「お前……俺が、俺たちが全力で上に向かってないとでも言うのか!!」
一度は周囲から多くの視線を向けられている事に気付いて怒気を収めたが、ソウスケの言葉で再発。
「……そうなんじゃないか?」
そんな怒気に対して、受け流すでも受け止める訳でもなく……真っ向から押し返した。
(なるほど。ソウスケはそう考えるか……しかし、フォルクスたちの様な子供たちに、それを求めるのは酷ではないか)
巨人族のラッソはいち早くソウスケの考えを察した。
「だって、そもそも上を目指す意識が高いなら、ラップさんたちみたいに俺の体験談から少しでも自分の糧にしようと……吸収しようとするだろ」
「ッ!!!」
まずは、最も過ぎる返し。
経験からくる対応でもあるが……確かに、そこがラップたちとフォルクスたちの差の一つ。
「後……本当に強くなりたいなら、死なない程度に永遠と……毎日頑張り続けるだろ。いや、さすがに永遠は無理か。でも、一年か半年……それぐらいの期間、せっかくダンジョンが複数ある街に滞在してるんだし、何度も実戦を経験して、良かった動きをギルドの訓練場で振り返る。悪かった動きを反省する。それぐらいやるんじゃないか?」
「「「「「…………」」」」」
暴論ではないか?
そう思えなくもない内容ではあるが、決して全て間違っている訳でもない。
元々持っている才能という点ではソウスケの方が圧倒的に上であり、躓くことが殆どないが……それでもソウスケは休日でもダラダラと過ごすことはない。
「……まぁ、あれじゃ。ソウスケの言うことは間違っておらん。そういった無茶な日々を繰り返して化けた者もおるからの」
年長者であるオーザストは今まで多くの冒険者を見てきたが、殆ど関りがなくとも心配してしまう生活を送っている者が……数年後には自分のランクを追い越していたという話が耳に入ったことがある。
「儂としては、あまりお勧めは出来んがの」
「それは俺も解ってます。ただ、それだけ本気で強くなる為に取り組んでいれば……俺みたいな存在に対して、不満を持たないと思うんですよ。だって……自分は出来る限りの全てを行って前を向いてるんですから」
とても身勝手な考え。
元々この世界の住人ではないからこそ思い浮かぶ考えかもしれない。
全てのルーキーがソウスケの考えに納得できるわけないが……フォルクスたちは何も言い返すことが出来ず、ソウスケの言葉に色々と納得していた。
129
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる