転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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六百九十九話 身勝手な考えだが

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ソウスケが発した言葉に対し、ラップやジャン……他に会話を聞いていた他のベテラン冒険者たちは、少々顔を引き攣っていた。

(ま、間違ってはいないが……あっさりと確信を突くね)

(おいおい、さっきからフォルクスの顔が赤くなりっぱなしだぞ。このままいくと憤死するんじゃねぇか?)

ベテラン組はソウスケの考えが間違っているとは思えない。

だが、その考えをルーキーたちが理解出来るかといえば……おそらく無理だろうという想いが強い。
そしてその考えは的中しており、フォルクスたちは直ぐにソウスケの言葉に対して納得は出来ない状況。

「Dランクっていえば、一応冒険者の枠組み的に素人の領域から抜け出した位置。プロと呼べる……のか? とりあえず、生活はそれなりに安定してきたところだろ」

ランクが上がれば、受けられる依頼の幅が広がる。
そして達成した時に報酬金額も上がり、冒険をするにはそれなりに必要経費が掛かるが、それでも生活水準のレベルも必然的に上がる。

「でも、現状に満足出来てない。簡単に自分たちより先に上に登った俺に対してのイラつきってのもあるだろうけど、やっぱりそこが問題だろ。年齢を考えれば現時点でDランクなのは上出来。でも、今の生活水準に満足してないのか……自分の力不足を感じてるのか」

Dランクの冒険者であっても、会話を重ねればソウスケに対して否定的な考えがなくなる者もいる。
だが、フォルクスはソウスケに対して今でも否定的な感情を持ち続けている。

「フォルクスが何に対して満足してないのかは知らないけど、それならお前はその不満を埋める為に全力で努力してるのか?」

「お前……俺が、俺たちが全力で上に向かってないとでも言うのか!!」

一度は周囲から多くの視線を向けられている事に気付いて怒気を収めたが、ソウスケの言葉で再発。

「……そうなんじゃないか?」

そんな怒気に対して、受け流すでも受け止める訳でもなく……真っ向から押し返した。

(なるほど。ソウスケはそう考えるか……しかし、フォルクスたちの様な子供たちに、それを求めるのは酷ではないか)

巨人族のラッソはいち早くソウスケの考えを察した。

「だって、そもそも上を目指す意識が高いなら、ラップさんたちみたいに俺の体験談から少しでも自分の糧にしようと……吸収しようとするだろ」

「ッ!!!」

まずは、最も過ぎる返し。

経験からくる対応でもあるが……確かに、そこがラップたちとフォルクスたちの差の一つ。

「後……本当に強くなりたいなら、死なない程度に永遠と……毎日頑張り続けるだろ。いや、さすがに永遠は無理か。でも、一年か半年……それぐらいの期間、せっかくダンジョンが複数ある街に滞在してるんだし、何度も実戦を経験して、良かった動きをギルドの訓練場で振り返る。悪かった動きを反省する。それぐらいやるんじゃないか?」

「「「「「…………」」」」」

暴論ではないか?
そう思えなくもない内容ではあるが、決して全て間違っている訳でもない。

元々持っている才能という点ではソウスケの方が圧倒的に上であり、躓くことが殆どないが……それでもソウスケは休日でもダラダラと過ごすことはない。

「……まぁ、あれじゃ。ソウスケの言うことは間違っておらん。そういった無茶な日々を繰り返して化けた者もおるからの」

年長者であるオーザストは今まで多くの冒険者を見てきたが、殆ど関りがなくとも心配してしまう生活を送っている者が……数年後には自分のランクを追い越していたという話が耳に入ったことがある。

「儂としては、あまりお勧めは出来んがの」

「それは俺も解ってます。ただ、それだけ本気で強くなる為に取り組んでいれば……俺みたいな存在に対して、不満を持たないと思うんですよ。だって……自分は出来る限りの全てを行って前を向いてるんですから」

とても身勝手な考え。
元々この世界の住人ではないからこそ思い浮かぶ考えかもしれない。

全てのルーキーがソウスケの考えに納得できるわけないが……フォルクスたちは何も言い返すことが出来ず、ソウスケの言葉に色々と納得していた。
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