転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百二十七話 通ってみたら

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ダンテたちを四十層まで送り届けた後、ソウスケたちは再び最下層の五十層を目指し、探索を進める。

特に探索を急いでいる訳でもないので、同じく遺跡内を軽く探索してから下の階層へと移る。

「おっ、やっぱりあったな」

遺跡内を探索していると、以前宝箱が置かれていた場所に、新しい宝箱が置かれていた。

毎回同じ場所に宝箱が再度現れる訳ではない。
仮にそうであれば、一か所に冒険者が集中し、宝箱の奪い合いが始まる。

ただ、同じ場所に再度現れる可能性自体はあるので、ソウスケはその可能性が起こると信じて、記憶に残っている場所は確実に通っていた。

そして五十層に到達するまで、ソウスケたちは休憩の合間合間に、溶岩竜と戦っている最中に、戦いに乱入しようとしてきたモンスターの死体解体に勤しんでいた。

溶岩竜が戦っている最中に加えて、溶岩流の死体解体を行っている最中にも、モンスターは容赦なく襲い掛かろうとしていた。

ソウスケとしては、それらの死体を蛇腹剣で喰えれば良いなと思っていたが、自分で倒してはいないので喰らうことが出来ない。
なので、五十階層に到着するまで自分が倒したモンスターは、全て蛇腹剣に喰わせていた。

上級者向けダンジョンの仮想に生息するモンスターということもあり、蛇腹剣が保有するスキルは順調にレベルが上がっていった。

(こいつの力を使えば、Aランクの上……Sランクのモンスターでも倒せそうだな)

一人では無理でも、今のザハークやミレアナの力を借りれば、決して不可能な話ではないとソウスケは思った。

仮にこのダンジョンでそんなバカげた強さを持つモンスターと遭遇しても、三人は絶対に逃げることはない。
考えはそれぞれ少し異なるであろうが、自分たちが力を合わせれば、相手がSランクのモンスター勝てないことはないと確信している。

ただ、上級者向けダンジョンでは今のところ、Sランクモンスターの出現は確認されていない。

しかし……Aランクのモンスターであれば、溶岩竜の様に出現するのは決して稀ではない。

「ッ……良い感じに、寒気がしたな」

ソウスケの視線の先には、一頭の赤毛の巨大狼……ガルムがいた。

現在階層は四十八階層であり、あと一日もあれば最下層のボス部屋前に到着するような位置で、三人は強敵を見つけてしまった。

ガルムはダンジョン内のモンスターとしては珍しく、ソウスケたちの存在に気付いても、むやみに襲い掛かろうとはしなかった。
それは三人の実力をある程度把握し、戦えば自分は無事で済まないと思っているからか……それとも、単に興味がないだけなのか。

ガルムの気持ちが三人に解るわけがない……解るわけがないが、三人がガルムの様な強敵を目前にして、逃げるという選択肢を取ることはあり得ない。

最初、ザハークは一応……一応、主人であるソウスケに自分が戦っても良いかという許可を取ろうとした。
だがしかし、その考えは一瞬で消え失せた。

何故なら……普段はザハークに強敵との戦いを譲ってくれるソウスケが、珍しく戦う気満々な表情をしていたから。

(……ここは、引くべきか)

正直、目の前のガルムと戦ってみたい思いはある。
それでもソウスケが珍しく戦う気満々な表情をしている。

であれば、今回は譲るべきだろうと思い、引いた。

ミレアナは元々戦闘意欲が強い訳ではないので、悩むまでもなくソウスケにガルムとの戦闘機会を譲った。

「あれとは、俺がやろうと思う……良いか?」

「えぇ、勿論です」

「あぁ」

仲間が二人ともガルムとの戦闘機会を譲ってくれたことを確認し……なんと、ソウスケは亜空間の中から水龍の蒼剣を取り出した。

「ッ!!!」

この瞬間、ソウスケが臨戦態勢に入ったこともあり、ガルムはガバっと起き上がり、戦意や殺気を全開にしてソウスケを睨みつけた。

「はは……やっぱりゾクゾクするな」

巨狼を目の前にし、ソウスケは武者震いしていた。
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