転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百五十話 仮にそれが正解だったところで

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「……なぁ、ミレアナ。朝起きた時、違和感を感じなかったか」

「違和感、ですか? …………そう、ですね。多少、こう……普段眠りから覚めた時とは、少々違うと感じましたが、あまり詳しいことは」

「俺は特に感じなかったな」

自分とミレアナは確かに違和感を感じた。
しかし、ザハークは感じていなかった。

(ザハークは感じていない、か……そういうことなのか?)

ソウスケとミレアナがザハークよりも優れている点といえば、魔力に関して。
操作、攻撃力、感知なども含めて二人はザハークよりそこまで大きな差はないものの、優れているのは間違いない。

「もしかしたら、俺たち……魔力を吸われているのかもな」

そうリーダーが口にした瞬間、二人は周囲の警戒を強めた。

「いやいや、誰かが……モンスターとかが俺たちの魔力を食ってる訳じゃない」

「そうなのか? であれば、誰が二人……いや、俺も吸われているのか」

「多分そうだと思う。それで、俺たちの魔力を吸っている原因だけど……多分、多分だぞ。この遺跡が、遺跡内に存在する生物から魔力を吸ってるんだよ」

ソウスケの考察を聞いたミレアナは歩きながらも沈黙……そして一分間考え込み、ソウスケの考えに同意した。

「その可能性は高いかもしれませんね。どういった素材なのかは分かりませんが、そういった要素があるならば、激しい戦闘で殆ど傷かつかないのも頷けます」

「……ソウスケさんの話が本当なら、ほんの僅かな傷も、吸った魔力を使って修復してるんじゃないか?」

「十分あり得そうだな……まっ、だから何だって話ではあるんだけどな」

確かにギルドから買った情報に、そういった内容はない。
大発見かもしれないが、ソウスケたちがこの違和感に気付いた訳ではない。

魔力の感知力や、感覚が鋭い者であれば気付ける。
しかし……本当にだから何だという話なのだ。

魔力はほんの僅か吸われたという事実を、本来なら完全に回復している筈の寝起きに感じ取った。
加えて、吸い取られた魔力量は本当に微々たる量。

ファイヤーボール一回分の量ですらない為、気付いたところでギルドに報告する必要はないと思ってしまう。

(これをギルドに伝えたところで、何か報奨金が貰えるとは思わない。ギルドも、どうでも良い情報だと判断するだろうな)

ソウスケの考えを聞いたミレアナとザハークも、なるほどという思いに至りつつも、世紀の大発見かと訊かれたら……ノーと答える。

「ソウスケさん、敵です」

「了解」

微量な魔力を吸い取るだけとは思えない……そんな事を考えながらも、きっちり戦闘はこなしていく。

そして探索を再開し始めてから数時間後、ロックゴーレムとの戦闘中、後一手で戦闘が終わると思ったタイミングで、全く戦闘には関係無い方向から風矢が飛んできた。

(……バレてないとでも思ってるのか?)

突拍子もない場所から攻撃が飛んでくる。
それを予測していたソウスケはその風矢をただの魔力の弾丸で破壊。

そしてロックゴーレムの止めは二人に任せ、風矢が飛んできた方向に向かって無数の小さな風の針を飛ばした。

「うわっ!!!???」

「なっ!?」

「俺の後ろに下がれ!!!」

ソウスケが風の針を飛ばした方向には、三人の冒険者がおり……大盾使いのタンクがいたお陰で、ハリセンボン状態にならずに済んだ。

「ソウスケさん、こちらは終りました」

「分かった。それじゃ、解体するか……ザハーク、今回は俺が見張りをやっとくよ」

「了解」

ロックゴーレムの解体はミレアナとザハークで行い、ソウスケは見張り。

ただ、直ぐに見張以外の対応を行う流れとなる。

「おい、お前!!! ふざけてんのか!!!」

「いえ、全く」

自分より体格が大きい男が詰め寄ってきたが、今までの経験から……目の前の男に対して、ビビる要素は一ミリもなかった。
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