転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百五十一話 いや、そっちもやろ

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「だって、全く関係がない方向から風矢が飛んできたんですよ。ロックゴーレム以外の、モンスターが襲ってきたかもしれないって思うのが普通じゃないですか」

先程の光景……そう見えるのも無理はない。
しかし、冒険者であれば同業者が獲物を横取りしようとしている、というのが丸分かり。

実際に先程の風矢でロックゴーレムが仕留められてしまっていれば……一応、ロックゴーレムの死体の所有権はグレー行為を行った三人の物となる。

「ぐっ」

ソウスケの言葉は、全て分かった上で発している……ただ、その言葉に不自然な点はない。

三人もソウスケがモンスターが風矢を放ったのではなく、同じ冒険者が風矢を放ったことは理解している……というのは、何となく解っている。

だが、それでもソウスケの言葉が表面上、全く間違っていないところを考えると、これ以上口撃出来る要素がない。

(このガキ、絶対に解ってやっただろ!!!)

誰がどう見ても逆切れ状態な大男。
大盾で風の針を防ぐことは出来た。

数は多かったが、どれも体に当ったところで貫くほどの威力や貫通力はない。
しかし、眼に当れば失明する程度の威力はあった。

調子に乗るなよクソガキ!!!

と、大声で怒鳴りながら目の前の同業者をぶん殴りたい気持ちが湧き上がる。
それは後ろの二人も同じだったが、奥でロックゴーレムの死体を解体している圧に気付き、ギリギリのところで拳を前に出さなかった。

「っち!! 次から気を付けろや!!」

あくまで自分は悪くないというスタンスで言葉を返し、立ち去ろうとする。

(随分とプライドが高い冒険者だったな)

プライドは確かに高い。
だが、仮にソウスケに殴り掛かろうとすれば、瞬時に自分の頭が吹き飛ぶイメージが脳を襲い、三人の怒りは危ないところで器から零れなかった。

「次は絶対に倒すために、針じゃなくて槍の方が良いかな? 二人はどう思う」

「その方がよろしいかと」

「俺も同じ考えだ」

「「「ッ!?」」」

ソウスケが先程の場面で風の針ではなく、風草をいくつも放っていれば、大盾を破壊されていたかもしれない。
それだけではなく、自分たちの体を数か所抉られ……そのまま息絶えていた。

今度はそうなるかもしれない攻撃を実行しようと、三人に聞こえるように大きな声で口に出した。

(あ、あのガキ……絶対にイカれてるだろ!)

ソウスケからすれば、人の獲物を奪おうとする三人の方がイカれてると思うが、自分勝手な考えしかない三人は同じ様なことが起きた場合、躊躇いなく同業者を殺そうと考えているソウスケをイカれてると認識した。

「ソウスケさん、腕の一本や二本折ってもよろしかったのではないですか?」

「折っても良かったかもしれないけど、もう勘違いで済ませられる場面ではなかったし……三人の内、誰かが殴り掛かってきたら、そうしても良かったな」

その流れであれば、正当防衛が成立する。

しかし、ソウスケが対応する前に三人が近づいてきた時から準備していた二人の方が先に対応していた可能性が高く、そうなった場合……骨の一本や二本で済まなかった。

「まっ、アホなことしたらどうなるかってのは解っただろうし、もうあの三人がちょっかい掛けてくることはないだろ」

確かに三人はソウスケの躊躇いがない恐ろしさ、ついでにミレアナとザハークの恐ろしさも感じた。

ただ……ミレアナとしては、あの三人が冒険者ギルドに戻った後、ギルド内であることないことを言いふらすのでは? という心配があった。

「ミレアナ、別に変な心配してなくて大丈夫だからな」

「っ……えぇ、そうですね」

普段はミレアナやザハークに考えを読まれることが多いソウスケ。
とはいえ、一緒に行動するようになってからの期間はお互いに変わらない為、今回はソウスケがミレアナの心を読み、いつも通りの表情で心配はいらないと伝えた。
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