転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百五十六話 オールド?

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「こいつは……最高だな」

ザハークが現在、ヴァルガングと遭遇した時以上の笑みを浮かべていた。

(確か、ミスリルゴーレムだっているんだよな。そういうのを考えると、普通にヤバい場所だな)

二体のBランクモンスターを確認している時点で十分ヤバいのだが、三人の目の前にいるモンスターはその二体よりも遥かにヤバい。

そのモンスターは……オールドオーガ。
名前の通り、年老いたオーガなのだが、その肉体を見る限り、一ミリも衰えている様には思えない。

「ソウスケさん、頼む。こいつと……戦わせてほしい」

「勿論、お前に譲るよ。でも、ヤバいと思ったら手を貸すからな」

「あぁ、それで構わない」

オールドオーガのランクはA。
腰には侍の様に太刀を装備している。

ただの刀ではなく、大太刀。
ザハークでも受け方を間違えれば、切断されかねない。

それが解かっているからか、ザハークは収納リングから自作の大剣を引き抜いた。

(このひりつくオーラ……ジェネラル以上か?)

最近戦った中で一番の強敵と言えば、クリムゾンリビングジェネラル。
オールドオーガと同じAランクのモンスターだが、ザハークの本能的には……やや目の前の敵の方が上に思えた。

(危ないと思ったら直ぐに助けに入れるように気を付けて……大丈夫だとは思うけど、邪魔するような輩が現れないか、そっちも注意しないとな)

ソウスケとミレアナが二つの要点に注意していると……先に動いたのはオールドオーガ。

無駄のない動きで大太刀を鞘から抜き、袈裟斬りを放つ。
当然ザハークは反応してガードするが、地面に押し込まれる感覚が強い。

(腕力……というより、力の出し方がナイトやジェネラルより上手いのか!!)

何十、百近くオールドオーガと斬り合い、同じAランクのクリムゾンリビングナイトやジェネラルと、そこまで身体能力に大きな差があるとは感じない。

だが、体の動かし方などに差があると感じ……つい笑みが零れてしまうザハーク。

(うわぁ……凄いな。あのザハークがマジで攻め切れていない)

クリムゾンリビングナイトやジェネラルとの戦いで、より深く剣術を学んだおかげで、剣同士の戦いにはついていけている。

それでも、スキルを贅沢に使えば身体能力を上回ることが出来るザハークが、中々ダメージを与えられない現状が続く。

(まだ手助けが必要とは思えませんが……相手のスタミナはどうなってるのでしょう? 見た目だけで考えれば、スタミナにはザハークの方に分がある。しかし……)

ザハークがオールドオーガに劣っているとは思えない。
しかし、大きく勝っているとも思えない……そして中々決着が着かないところで、Cランクのモンスターが複数登場。

狙いはザハークとオールドオーガではなく、邪魔が入らないか見張りをしている二人。
圧倒的な戦いを見せる二体のザハークには敵わないのは一目瞭然。

であれば、見張りをしているひょろい二人を狙うのが一番。
そんな事を考えながら襲い掛かるソルジャーアントやロックゴーレム。

その考えは間違っていないが、二人は直ぐ現場に戻れるように……神速で自分にロックオンしてきた個体を瞬殺。
スキルを惜しまず使って頭部を切断、強引に魔石を抉り取る。
そういった方法で邪魔者を潰し、即回収して直ぐに激闘へ意識を戻す。

(ここで魔法を使うのは、無粋だな)

大剣と大太刀で勝負を付けるべき。
そんな騎士道らしい精神……だけが理由ではなく、少しでも魔法に意識を割けば、その一瞬で痛手を食らう。

といった予感がぬぐい切れない。

(それにしても、全く! 表情が、変わらないな!!!!)

クリムゾンリビングナイトやジェネラルは、眼や口などはないので、表情がなくて当たり前。
しかし、オールドオーガは両目も口もある。

なのに……互いにダメージを与えられない現状に対して、変化がないので表情からは何を考えているのかさっぱり。

(まっ、気にする必要はないか!!!)

強敵と何度も何十も斬り結べる。
この現状に嬉しさを感じない訳がなかった。
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