転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百七十六話 突然の訪問

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自分たちの手でレガースに渡すのが賢明だと判断し、翌日にはパルスを出て、三人は学術都市へと向かった。

いつも通り、道中の彼らを襲う存在はいたものの、三人が全力で学術都市に向かって走っている為、気配は感じ取れても襲い掛かるのは物理的に不可能だった。

そして強化スキルを使用した三人は一日と掛からず、学術都市に到着。
街に入ると、冒険者ギルドには寄らず、直ぐに轟炎流の道場へと向かう。

三人の顔を覚えている者たちは、突然ソウスケたちが戻ってきたことに驚き、顔をチラ見する者はいても、声を掛けてくる者はいなかった。

「ここだな」

道場までの道のりは覚えていたので、迷わずに到着し、早速中へと入る。

「あれ、ソウスケさんにミレアナさん……ザハークさんまで」

以前、ソウスケが依頼を受けて火の魔剣、フレイザーと短刀、火竜・焔を制作して渡した女性剣士、ターリアが受付として勤務していた。

「どうも、ターリアさん。お久しぶりです」

「お久しぶり……と言うほどは、日にちが空いていないような?」

「はは、そうかもしれませんね。えっと、とりあえずレガースさんはいらっしゃいますか」

「はい、師範なら門下生たちに稽古を付けてます……えっ!? あの、もしかしてそういうことなのですか?」

ターリアの問いに、ソウスケは亜空間から一つの木箱を取り出し、小さく頷いた。

「しょ、少々お待ちください!」

クールな普段の表情が崩れ、大慌てで師範の元へ向かう。
慌ててもドジっ子ではなので、途中で転ぶことはなかった。

そして直ぐ、ターリアと一緒に依頼主であるレガースが現れた。

「そ、ソウスケ君……ここ来たということは、そういう事なのか?」

「はい、勿論です」

ぐいっと見せられる木箱。
まだ蓋を開けていないにも関わらず、中からハッキリと業物だと解らされる気配を感じ取った。

勿論それはターリアも感じ取っており、先程から緊張の汗が止まらない。

「……わざわざ君自ら届けに来てくれたのだ、もてなさなければ罰が下る」

そう言い、レガースは三人を客間に案内し、茶と菓子をテーブルに置いた。

「中を見る前に聞くが、何故わざわざ届けてくれたのだ?」

「その、自分が先日まで滞在していた街の戦力を考えると、学術都市まで無事に依頼品を届けられるか不安があったので」

「そうだったか……その配慮、誠に感謝する」

深い礼に、慌てず感謝の意を受け取る。

「どういたしまして……では、どうぞ開けてみてください」

どのタイミングで木箱を開けるのは、レガースの自由。

ただ……製作者として、是非とも渾身の一振りを見た依頼主が、いったいどんな顔をするのか見たかった。

「うむ、そうさせてもらおう」

レガースとしても、先程から早くソウスケ作の一振りを見たいという気持ちが、限界を超えそうだった。

「では」

心臓が破裂するのではないかと思える程昂っていることな気にせず、木箱のふたを開ける。

「ッ…………年甲斐もなく、震えてしまうな」

まだ、鞘におさまった状態。
肝心の刃を見ていないが、この時点でレガースは目の前の刀が、名刀であることを疑っていなかった。

「っ!」

同じく、隣に座るターリアも名刀だと疑わない。

直感……ではあるが、ソウスケが自分に造ってくれたフレイザーと火竜・焔より上位に位置する業物だと感じた。
ただ、その事実は自然と嫉妬にはならなかった。

「……………………」

遂に、レガースは名刀、残焔を抜いた。

その姿に、まさしく目を奪われ、固まり……言葉が出てこない。

「……れ、レガースさん。大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ……本当に、大丈夫だ」

あまりの美しさに涙を流すレガース。

しかし、涙の理由が解らないソウスケとしては、心配せざるを得なかった。

「ソウスケ君、本当にありがとう」

静かに鞘に納め、レガースは再度……誠心誠意を込め、深く頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。
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