転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
821 / 1,259

七百九十一話 予想外の反撃

しおりを挟む
(正直、大当たりというか、嬉しい誤算というか……まさか、冒険者になって数年も経っていないルーキーが、ここまで高い実力と優れた視野を持っていたとはな)

ソウスケに関する噂は、集団のリーダーを務める男も耳にしていた。

耳を疑うような噂が幾つもあり、普通はそれらを信じないの者が多い。
しかし、大き過ぎる噂は、幾つも流れるものではない。

一つだけでも市民や同業者から疑問の声を持たれるのに、幾つも流れれば余計に実力を疑われてしまう。
そんな事は、子供でもなんとなく解かる。

だが……ソウスケや、ソウスケたちパーティーに流れる噂は短期間のうちに、いくつもあった。
その中にはパーティーのリーダーであるソウスケが、ミレアナという美女エルフを働かせて生活している、ヒモニートだという内容もある。

それでも、一人でBランク……Aランクモンスターを倒せる実力があるという噂もあり、実際に会ったことがない人物からすれば、色々とイメージし辛いルーキーと言える。

(今回の衝突では、相手も並の戦闘力ではなかった……運悪くなくとも、一人か二人……最悪、三人ぐらいは殺られていたかもしれない)

色々と信じられない噂が多いルーキーだったが、実際に戦ってみれば……ソウスケのお陰で、死人が出なかったと言える場面が幾つかあった。

(ソウスケがいたからこそ、重傷は負えど死者は出なかった。戦闘力、多数の攻撃手段だけではなく、サポート能力も優れている……おまけに人との付き合い方も良いときた)

悪いところが一つもないように見える。
だからこそ……リーダーは、戦争が終わった後のソウスケに、早い段階から合掌を送っていた。

「そういえばソウスケ、お前って錬金術も出来るんだったか?」

「一応出来ますよ。そのお陰で、ポーション代がかからずに済んでます」

そのスキルを考えれば間違った会話ではないが、そもそもソウスケを含めた三人の戦闘力からいって、ポーションを使う機会は殆どない。

「羨ましいねぇ~。そういったスキルを身に付けてたら、冒険者を引退した後も、金に困らないもんな」

「そうですね。ぶっちゃけ老後は安泰だと思ってますっ!?」

そもそも金には困ってないけど、と思いながら答えた瞬間に、ルクローラ王国方面から遠距離攻撃が飛んできた。

ソウスケやミレアナを含めた魔法使い組とタンク組が即座に防御。
魔力もポーションを飲んで回復していたため、魔力量は問題無い。

スタミナは全回復していないが、戦闘に支障をきたす程ではない。

(先手必勝だ!!!!)

いきなり奇襲に対して、ソウスケは慌てることなく防御魔法を発動して遠距離攻撃を防いだ後、直ぐにエアステップを発動。

同時に身体強化系スキルも発動し、攻撃が飛んできた方に向かって走る。

(っ!? 邪魔くせぇえええええっ!!!!)

ソウスケが駆けだした時には、既に第二砲目が放たれていた。

客観的に見て、速攻で潰そうとして防御魔法の前に出たソウスケの動きは、完全に悪手。

だが、ここから目の前の攻撃を撃ち破る手段が……ない訳ではない。

右手に持つグラディウスを手放し、亜空間から一本の槍を取り出す。
その槍とは……レヴァルグ。

先日、超古代遺跡の中で普通ではないミスリルゴーレムを倒し、無理矢理ゲットした超が一つでは足りない程の名槍。

魔力をふんだんに使い、炎を……滅炎を発動させ、思いっきりぶん投げた。

「っ、逃げろ!!!!!!!!」

敵が放った遠距離攻撃はレヴァルグによる投擲で大きく削られ、大幅に下がった。

その光景にも驚きだが、敵騎士や冒険者たちが驚いたのは、その投擲速度。
予想していなかった一撃とはいえ、完全に反応が遅れた。

もう迎撃や防御も間に合わない。
そうなれば残る手段は……逃走しかない。

リーダーの指示に即従い、集団は即座にその場から離れた。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

【めっさ】天使拾った【可愛ぃなう】

一樹
ファンタジー
酔っ払いが聖女を拾って送迎する話です。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...