転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百九十二話 深追いは駄目

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「逃がすかっ!!!!!!」

滅炎を纏ったレヴァルグを投擲した直後、ソウスケは即座にレヴァルグの能力の一つである帰還を発動。

発動することで、投擲したレヴァルグを瞬時に自分の手元に戻すことが出来る。
そして再度、滅炎を纏った投擲をぶちかます。

今回は先程とは違い、敵が一か所に纏まっていない。

そのため……ぱっと見で強そうな冒険者、騎士が逃げたであろう方向へレヴァルグを投擲。
結果、その方向へ逃げた者が少なかったこともあり、捉えた者は二名。

最初の投擲と合わせて、五名の敵を滅することに成功した。

「お前ら、ソウスケが作ったチャンスを逃すな!!!!」

リーダーの冒険者が支持を飛ばした直後、接近戦と脚の速さに自信がある者が前に出て、ギリギリソウスケが倒せなかった者たちに止めを刺した。

レヴァルグの滅炎効果もあり、投擲を……その余波を食らった者は、生半可な回復魔法、ポーションでは負った傷を癒せない。

「ッ!!! 退散だ!!!!!」

ソウスケたちに奇襲を仕掛けた集団のリーダーは、苦渋の表情を浮かべながら、決断を下した。

半数近くの仲間が殺された状況では、仇を討つことも出来ない。

リーダーの言葉に、自身のパーティーメンバーを殺された人物は、般若の如き形相を浮かべ、退いた道を戻ろうとした。

だが、その激情も直ぐにお染まった。
何故なら……同じく生き残ったパーティーメンバーの一人が肩を叩き、涙と鼻水を垂らしながら首を横に振った。
それだけで仲間が自分に何を伝えたいのか悟り、奥歯が壊れそうなほど噛みしめながら……リーダーの指示通り退いた。

「逃げた連中は負わなくても良い!」

ソウスケたちのリーダーがそう伝え、微かに生き残っていた者たちを仕留めた冒険者、騎士たちはその場で足を止めた。

相手の数はソウスケの投擲により、一瞬で半数ほど減った、
潰すなら好機ではあるが、逃げた先に罠が待っている可能性は否定出来ない。

騎士も冒険者もそれが解かっているからこそ、素直にリーダーの指示に従った。

「勿体ないねぇが、仕方ないか。にしても……ソウスケ、今のは何か特別な技だったのか?」

「……特別と言えば、特別かもしれません」

魔力を消費することで得られるレヴァルグの滅炎。
それは一般的な炎ではなく、文字通り滅する炎、

レヴァルグの使い手次第で、相手を徐々に焼き殺すことも不可能ではない。
一定レベルまで回復阻害の効果もあり、ソウスケが操作しなければ、滅炎で燃え移った火は水をぶっかけても中々消えない。

既にソウスケが操作し、地面や木々に燃え移っていた火は消えていた。

ただ、レヴァルグがぶつかった地点の周辺だけは、かなりはげた状態になっていた。

(初めて使ったけど、そこそこ魔力を消費するな)

帰還の能力に関しては、殆ど魔力を消費しない。
しかし、滅炎を使用する場合……魔力量が多い部類の者でも、その消費量に大なり小なり驚く。

「とにかく、連続で向こうの攻撃を許さずに済んだのは大きな戦果だ。ソウスケの投擲で、そのまま五人ほど向こうの戦力も削ることが出来た」

リーダーとしては、いきなり飛び出たことを少し注意したかったが、結果的に向こうの戦力を大きく減らした。

結果が全てという考えで動いてはならないが、臨機応変な動きも大事だと理解している為、今回は特に周囲はしなかった。

「でも、ソウスケ君があんな凄い攻撃手段を持ってるのが、向こうに伝わっちゃったけど、それは良かったの」

「罠を張ってる可能性もあるだろ」

「その可能性は否定出来ないけど、あの投擲を向こうが知ってるのと知らないとじゃ、攻められる手札の数が変わるじゃない」

女性魔法使いの意見としては、ソウスケがレヴァルグを使用して放った一撃は、先程奇襲で遠距離攻撃を放ってきた連中の攻撃力よりも上。
加えて、それなりの防御力を持つ壁程度であれば、容易に貫く貫通力がある。

それを利用しない手はないと考えているが、ソウスケはメインでレヴァルグを使うつもりはないので、敵が勝手に怯えてくれる分には、それはそれで良いと思っていた。
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