転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百九十三話 高まる士気

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「よし、そろそろ後方へ戻るぞ」

形としては、大将を討ち取る侵略戦争。

だが、朝から晩まで全員が戦争に参加するわけではない。
朝から夕方程まで戦い続けた者たちは、後方に戻って休息を取る。

夜から朝方までは、その時間帯に戦い慣れている者たちが参加。
勿論、あまりそういった時間帯の戦闘経験がない騎士たちも参加している。

「いやぁ~、まさか初日とはいえ、全員生き残れるなんてな」

「まだファードに戻れた訳じゃないけど、嬉しい結果ではあるね」

「……それもこれも、ソウスケ君のお陰だな」

騎士の一人が冷静な表情で、本日の功労者を名指しで宣言した。

「俺ですか? 確かに頑張って動き回ってましたけど、それは先輩や騎士の方々も同じじゃないですか」

「確かに俺たちも動き回ったぜ。マジで本気で必死に動いた。でも、全員がこうして生き残るためのサポート的な動きは、ソウスケが一番だと俺は思うぜ」

若い男性冒険者の言葉に、パーティーメンバーのミレアナやザハーク以外の者たちも頷いていた。

「同じ意見ね。それに、サポートだけじゃなくて攻撃力もピカイチだったわ」

「あれは……まぁ、武器のお陰でもあるんで」

レヴァルグの帰還の能力がなければ、二回連続で高火力の投擲を放つことは出来なかった。

「武器も、その持ち手の実力の内だ」

「こいつの言う通りだ。もっと自信持てよ!」

「……うっす。ありがとうございます」

歳上の先輩たちから褒められるのは、やはり悪い気はしない。
こんな雰囲気のまま、今日は終りたい……そういった思いが点に通じるほど、戦場という場所は甘くない。

「ッ、ミレアナ!!! ザハーク!!!!!」

次の瞬間、ソウスケだけではなく他の斥候タイプの冒険者も同時に叫んだ。

時間的には味方の部隊と交代するタイミング。
しかし……まだ、メインの戦場となる森からは抜け出していない。

ソウスケたちに迫りくるは、焔の螺旋。

「「ウォーターサイクロン!!!!」」

対して、ミレアナとザハークは事前に打ち合わせしていたのか、同時に同じ水の攻撃魔法を発動。

属性の相性や、発動者の力量もあり、焔の螺旋は消滅。
他のメンバー放った遠距離攻撃も含めて、水の竜巻が敵に襲い掛かる……が、そうなる可能性は敵も読んでいた。

(ここが正念場か。もう一度、燃やせ!!!!!)

体力や精神はかなり擦り減っているが、魔力に関してはポーションのお陰で問題無し。
出し惜しみは駄目だと判断し、エアステップと迅雷、別属性の強化魔法を同時発動。

これまでの戦闘経験から、強化魔法を重ねて発動したところで、その身体能力に振り回されることなく、動けることは確認済み。

グラディウスには風を纏い、火の魔剣には業火を纏う。

(全部、ぶった斬る!!!)

本日最後になるであろう命懸けの戦いに、非常に気持ちが昂るソウスケ。

そんな昂る気持ちとは裏腹に……頭は非常に冷静であり、周囲に多数の攻撃魔法を器用に展開。

(なんだあのガキは!!??)

両手に剣を持つ二刀流スタイル。
剣には別々の属性魔力が纏われており、周囲には別属性の攻撃魔法を待機しながら動いている。

冒険者として流れてくる噂、それらの情報からソウスケの情報は、少なからずルクローラ王国に伝わっていた。

だが、何が出来て何が出来ないのか、どういった方法で強敵を倒してきたのか。
そこまで細かい情報は伝わっておらず、奇襲を仕掛けてきた者たちが驚愕するのも無理はない。

加えて、一番歳下でルーキーであるソウスケが、我こそが一番槍!!! といった気迫で挑む様子に、全員が感化されて士気が高まる。

遠距離攻撃を放った後に、直ぐバラけて仕掛けようとした考えは悪くなかった。
しかし……結果は一人だけを取り逃がし、全滅への道を辿ってしまった。
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