転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百十二話 みごとな引き金

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対ルティナ・ヴィリストが率いる部隊への対策を仲間に伝えた翌日、休息日を終えたソウスケたちは再び戦場へ向かう。

特に億劫という気持ちはない……が、なるべく早く終わらせたいという気持ちはあった。

(嫌だけど……なるべく早く遭遇してほしいな)

自身を狙っているであろう、ルティナ・ヴィリストが率いる部隊。
ソウスケ本体としては、戦争が始まってから一番厄介な敵と認識しているが……厄介であればあるほど、自分たちと遭遇しない間に、同じエイリスト王国側から参戦している仲間たちが殺られる。

それを考えると、冷や汗が流れそうな相手でも、早く遭遇しても終わらせたいと思ってしまうのがソウスケ。

「っ! 敵部隊感知……数は六!!」

「総員、戦闘準備に入れ!!」

斥候がルクローラ王国側部隊の気配を感知し、戦場に入ってから十数分後には早速殺し合いの戦闘がスタート。

(こいつらは、違うな!)

見た目や実際に得物をぶつけ合って感じた戦闘力から、一番警戒しなければならない部隊ではないと確信。

とはいえ、ある程度全力で殺しに掛かる。
総合的な戦力で勝っていようが、戦場では一瞬の隙で殺されることは珍しくない。
それは相手が自分より格下であっても、起こりうる悲劇。

ただ……ソウスケ本体は完全に目の前の敵だけに意識を向けていなかった。
目の前の敵だけに集中、休憩時にがっつり緊張感を解いてしまえば、奇襲を防げないかもしれない。

そのため、周囲への警戒を三、目の前の敵への意識を七ぐらいの割合で戦闘を行う。
他の戦闘者が説教が始まるかもしれないが、ソウスケ本体が持つ手札の多さを考慮すれば、無理な戦闘行為ではなかった。

(……な、中々遭遇しないな)

本日のバトルが始まってから既に数時間が経過し、時刻は昼過ぎ。
軽い軽食を食べ終え、一つの部隊を殲滅。
本日も戦績を順調に積み重ねているが、依然として不安は消えない。

「あれだな、中々昨日話してたサイレントハーベストが率いる舞台と遭遇しないな。いや、個人的には遭遇しないに越したことはねぇんだけどよ」

「……まだ、今日はソウスケがあの高火力の炎槍を使っていないからではないか?」

男性騎士の言葉に、全員が納得した表情を浮かべた。

ソウスケ本体の情報に関して、ルクローラ王国はそこまで詳しくない。
とはいえ、レヴァルグ以外にソウスケ本体が「あいつだ!」と判断できる材料はあるのだが、ギリギリ情報を持ち帰ることに成功したルクローラ王国の冒険者には……あまりにもレヴァルグの超高火力が印象に残り過ぎていた。

その男から得た情報を元に、ルクローラ王国の参謀たちは火をメインに扱うランサーだと認識していた。

「ソウスケ君は何でも出来るからね。向こうもこの子があの噂の!!?? ってならないんじゃない?」

「驚くほど多くの武器を扱えるからな」

このままいけば、今日のところはルティナ・ヴィリスト率いる部隊と遭遇しないのでは?

そんな空気が流れるが……それは見事にフラグの引き金となった。

「っ! ザハーク!!!!」

「おう!!!!!」

微弱な風の揺れを察知したミレアナは、即座にザハークへ対応を求めた。

そしてミレアナが指をさした方向へ移動し……水を纏った拳で、渾身の正拳突きを放つザハーク。

いきなり現れた!? と思えるほどの速度で現れた風の斬撃は、見事にザハークの正拳突きによって破壊された。

「うそ、一人ぐらいは倒せると思ったのに」

「鬼人族……ん? あれは、オーガか?」

「どっちなんだ? まっ、良く解んねぇけど、強いってことだけは解かる相手だな」

木々を一斉になぎ倒す風の斬撃を一撃で粉砕したザハークを相手に、今のところ全くビビっていないルティナたち。

(うわぁ~~~、噂に誇張なしって感じだな)

鑑定を使わずとも解かる強さに、ソウスケ本体は今一度ふんどしを締め直した。
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