転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百十三話 今がチャンス

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(俺の相手は、あの女性騎士か)

ザハークは自身が倒すべき相手を視て……無意識に好戦的な笑みを浮かべた。

体格は女性にしては大きく、それなりに筋肉が付いているといった程度。
ムキムキな戦士などと比べれば、外見的にひ弱に見えるが……手に持つ大斧を扱う様から、並ではない腕力を持っていることが推測できる。

(どうやら、俺の好みの相手なようだな)

事前に話は聞いていたが、実際に会ってみると、より自身にとって好ましい戦闘相手であることが解かる。

大剣を握る力を強め、一歩前に進もうとした瞬間、一人の男性騎士がザハークに斬りかかった……が、それを予見していたかのように、ソウスケ本体がグラディウスに旋風を纏わせ、斬りかかった。

「あんたの相手は俺だ」

「っ!!?? お前が噂の、子供か!」

男以外にもザハークの危険度を感じ取った騎士、冒険者たちが攻撃を放つが、事前に予定した通り、全てをザハーク以外のメンバーで対応。

「私の相手はあなたみたいね」

「そうだ。あんたがこの部隊で一番強いからこそ、主人に任された」

戦場でそれ以上の会話は無駄だと判断し、ザハークは大剣に流水を纏い、初っ端から重さを感じさせる斬撃を叩きこむ。

「ふんっ!!!」

予想以上に速さに一瞬驚くも、ソウスケ本体と同じく旋風を纏った大斧でガード。
一メートルほど後方に押されたが、それ以上ルティナが押されることはなかった。

(っ!!!! この騎士は……本当に想像以上だ!!!!!)

好戦的な笑みから、凶悪な笑みを変わる表情。

子供がダッシュで泣きながら逃げるである恐ろしい笑みだが……そんな表情を浮かべる気持ちが解るルティナは……その気持ちに応えるがごとく、好戦的な笑みを浮かべた。

そんな二人の激闘が開始され……決着までの間、ソウスケ本体とミレアナは全力で敵の戦力を減らすことに集中していた。

(十秒、一秒! ほんの一瞬でも、こいつらを潰す!!!!)

総合的な戦力は、ソウスケ本体たちの部隊が上ではあるが、個々の戦力となると……ソウスケ本体たち三人以外のメンバーが、やや心もとない。

敵の騎士や冒険者と仲間が本気でぶつかり合えば、不利な展開になるのは目に見えている。
防御や回避に徹しても、三分以上もつか分からない。

(正直、今がチャンスだ!!!!)

まだ、本格的な戦闘が始まってから、経過時間は約二十秒。

敵部隊がソウスケ本体を確実に、安全に殺そうとするのであれば、三人は確実に必要。
しかし、まだソウスケ本体の相手は、最初にザハークに斬撃を叩きこもうとした男のみ。

(この、子供! 本当に見た目通りの、年齢なのか!!!???)

約二十秒の間に、百近く刃をぶつけ合う中、鑑定を使わずとも対戦相手の強さが細かく、正確に解る。

表情は激情、焦りに駆られている様に見える。
事実その通り、ソウスケ本体はほんの数秒でも早くルティナ・ヴィリスト以外の戦闘者を倒そうと、若干焦っていた。

だが、それは表情だけの話。

クリムゾンリビングナイトとの戦闘で鍛え上げられた剣技に、濁りは一切ない。

(今、ここ!!!)

雷強化魔法、迅雷を発動。

急激な加速で背後を取る……が、その動きに付いてくる強さを持つ男性騎士。

「がっ!!??」

相手が視界から消えたとなれば、狙うは死角となる背後か頭上。

男性騎士は予測と勘を組み合わせ、見事ソウスケ本体が背後に移動したことを見抜き、対応しかけた。
しかし、ソウスケ本体は迅雷を使用して移動すると同時に、ウィンドランスとライトニングランスを複数セットしておいた。

男性騎士が身に付けている鎧は魔法耐性の効果が付与されており、更に耳に付けているイヤリングタイプのマジックアイテムにより、更に耐性がアップしている。

中級程度の魔法では倒されるわけがないのだが、ソウスケ本体はそれらの属性魔槍に、必要以上の魔力を使い、攻撃力を上げた。
いつも通り回転を貫通力を上げている事もあり、大ダメージとはならずとも、少なくない衝撃を与え、体勢と意識を崩した。
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