転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百三十五話 注意されない程度に

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「お前ら、騎士たちに注意されない程度に吞んで食って騒ぐぞ!!!!」

「「「「「「「「「うぉおおおおおおお!!!」」」」」」」」」」

一人の高ランク冒険者が音頭を取り、全員がカップに入っているエールを一気に煽る。
当然、その中にはソウスケやミレアナ、ザハークたちもいる。

とある酒場の店主が貸し切りにし、戦争の最前線で活躍した冒険者たちに料理や酒を提供しようと決めた。
当たり前だが、参加している冒険者たちは店主にそれ相応の金を払っている。

「なぁ~、ソウスケ~~~」

「なんですか? てか、もう顔が赤くなってません?」

「安心しろ、まだ酔ってねぇから」

男としては、今日一日を通して騎士たちに注意されない程度に騒ぎ続け、酔い潰れる予定。

「なぁ~~~、俺たちのクランに来ねぇか~~~」

勧誘。
間違いなくそうだと理解した同じ他のクランに所属する冒険者たちは、自分たちもと二人の間に割って入る。

「おいおい、抜け駆けはズルいぜ」

「何言ってんだ。もう戦争は終って、王都に戻ってきたんだ。それなら、うちに来てくれって口説いても問題ねぇだろ」

確かに問題は一つもないのだが、ソウスケとしてはどんな条件を出されたとしても、それらの勧誘を受けてどこかのクランに加入するつもりはない。

「何度もそういう話を持ち掛けてくれるのは嬉しいですけど、俺はどこかのクランに所属するつもりはありませんよ」

肉料理を堪能しながら、普段と変わらない様子で同業者たちの誘いに対して、キッパリとした答えを伝える。

「ソウスケ~、どうせ上に行くならどっかのクランには所属しといた方が良いぜ~」

「できれば自分のクランにという思いはあるけど、全面的にこいつの意見には賛成だね。僕らはそんなつもりなんて一欠片もないけど、バカな奴はバカな行動に出る」

今酒場で吞んで食って騒いでいる者たちは、あのラストバトルで激闘を制したソウスケの強さをしっかり目に焼き付けていた。

レヴァルグという超が三つ……それ以上の名槍を持っていたからこそ勝てた、という論外な考えを浮かべる者はいない。
そもそも高ランクの冒険者、経験を積んでいる将来有望な騎士であれば、名槍や名剣の一つや二つ装備してない方がおかしい。

今回の戦いでは、決闘相手であるヤンキー騎士である男も中々の名槍を装備していたため、冷静に考えてソウスケがレヴァルグという激ヤバな武器を装備していたから勝てたと答える様な者は……もはやただの馬鹿である。

「あぁ~~、全然ありえそうだな」

「全部のクランから、幹部クラスの連中が参加したわけじゃないものね~」

「……クランに加入しなかったら、夜道や森の中で襲い掛かってくるってことですか」

「簡単に言えば、そういうことになるかもな」

先輩冒険者たちが話す内容は、決して誇張ではない。
過去にその様な事件が起こり、将来有望な冒険者が闇の中に消えた例はそれなりにある。

「良かったな、ザハーク。今回みたいに実力がそれなりにある連中、命懸けの戦いが出来るかもしれないぞ」

「ふむ。実にそうなる可能性が高そうだな……ソウスケさん、そいつらは全員殺しても良いのか?」

「夜道や森の中で奇襲を仕掛けてくる連中に、正当な言い分なんてある訳がないだろ。こっちが逆にそいつらを闇に葬っても問題無い」

「はっはっは!! それもそうだな。奇襲に特化した者であっても、それなりに楽しめはするだろう」

もしかしたら実力者から襲われるかもしれないというのに、全く怯えた様子はない。

「ザハークは一人で赤毛のアシュラコングやクリムゾンリビングナイトを倒してるんで、大抵の相手なら問題無く倒せますよ。あっ、最初の挑戦の時はジェネラルに進化したんだったっけ?」

「そうっだったな。あれは本当に良い体験を出来た」

二人の会話に、周囲の冒険者たちはやや引いていた。
しかし……本当に頭が少しおかしい連中がソウスケたちを闇に葬るのであれば、ルティナ・ヴィリストやレジル・アルバティア、ジェリファー・アディスタクラスの圧倒的な猛者が最低でも三人は必要。

なので、物理的に三人を闇に葬るなど、基本的に不可能な話だった。
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