転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百三十六話 本気の会話だよ

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「あのミレアナさん。その……ソウスケさんたちは、本気で話してるのですか?」

がっつり盛り上がる冒険者たちとは少し離れた場所で、比較的性格が大人しめの女性冒険者たちが固まって話していた。

「えぇ、本気でしょうね。ソウスケさんは言わずもがな、ザハークも本気です」

今のソウスケに関しては、戦争中のソウスケと比べて数段強い。

分身ソウスケは黒衣の死神を潰すために結成された、レジル・アルバディアが率いる部隊との戦闘時、心の中で不満をぶちまけていた。

しかし、本体と分身が元に戻った現在のソウスケであれば、猛者たちが集まった部隊が相手であっても……ザハークの様に楽しみながら猛者たちと武器を振るい合う。

「ザハークは見て解る通り、食欲や睡眠欲よりも戦闘欲が勝っている……まさしくモンスターです」

「あっ……そういえば、モンスターだったんですね」

「流暢の人の言葉を喋り、体格も通常種のオーガと比べて低いため、勘違いするのも無理はありません。ただ……本当に、私やソウスケさんが背中を預けられる程、圧倒的な強さを有しています」

偶に意見がぶつかることもあるが、ミレアナはミレアナでザハークのことを大切な仲間だと思っており……今の様に気分が良い状態になると、仲間の自慢話の一つや二つしたくなるというもの。

そして赤毛のアシュラコングとの戦闘について、当時の戦闘光景を鮮明に思い出しながら語り始めた。

「といった感じで、瞬時に結界を発動していなければ、間違いなく吹き飛ばされていました」

「す、凄い……ですね」

子供の様な単純すぎる感想だが、Aランクのモンスターと真正面から殴り合える。
その時点で色々とおかしいため、女性冒険者の感想は間違っていない。

彼女たちも高ランクの冒険者であるため、自身が所属しているパーティー、クランの力自慢たちを頭の中に浮かべるが……格闘系のAランクモンスターと真正面から戦い、ぴんぴんした状態で生還できる者が浮かばなかった。

「ザハークは常に強者との戦闘を求めています。少し前までは学術都市のダンジョンに潜っていましたが、あそこはザハークにとって楽園だったでしょう」

ミレアナの言葉通り、学術都市のダンジョンは……特に上級者向けダンジョンは、ザハークにとって最高の戦闘場だた。
ダンジョンで生まれたモンスターということもあり、どいつもこいつも逃げることなく思いっきりザハークを殺しに来る。

そんな上級者向けのダンジョンをある程度楽しんだザハークではあるが、唯一Aランクモンスターのスラウザーマンモスとガルムの二体と戦えなかったことが心残りとなっていた。

「……こんなこと言えば、ミレアナさんは怒るかもしれませんが、ソウスケさんもそれなりにおかしいですよね」

「ふふ、怒りませんよ」

声の色から、本当におかしいという発せられた言葉が、バカにしているのか否かぐらいは解るようになった。
そして女性冒険者の言葉からは、一切ソウスケを侮辱するような色は含まれていない。

声の色からして、寧ろ経緯が含まれていると感じ、増々上機嫌になる。

「パーティーの一人が、ソウスケさんに大剣を造ってもらったんですよ」

「学術都市にいたんですね」

「はい。ミレアナさんたちに声をかける機会はありませんでしたが、少し前まで私たちもそこで活動していました。それで、あそこで騒いでいる大男が戦争に向けて新しい大剣を新調したいと言ったんですよ。勿論、了承しました」

前々から話し合っており、時期が時期だったこともあり、リーダーも含めて同意。

すると……大剣を受け取って返ってきた大男は、戦争が始まるまで毎日、必ず一回はソウスケ作である大剣を自慢するようになった。
本当に立派な大剣であり、とても十五・六の青年が造ったとは思えないレベル。

「受け取ってから毎日毎日その大剣の自慢が続いて……それでふと思ったんですよ。高ランクの冒険者と同等かそれ以上の実力を持ちながら、鍛冶の腕前も一級品なのは……さすがにおかし過ぎないかと」

「ソウスケさんは、少々人知を超えた部分がありますからね」

馬鹿にしてるように聞こえるかもしれないが、勿論ミレアナはソウスケをバカにしてるつもりなど一切なく、真面目にソウスケの異次元さを褒めていた。
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