転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百七十二話 初めての体験

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「それじゃぁ……えっと、行きましょうか」」

「本日はよろしくお願いします」

諸々の準備が終わった翌日、アネットが起きられる朝早い時間から出発。

ソウスケとしてはまずダンジョンに慣れる為に中級者向けダンジョンを探索してはどうかと提案したが、一応あまり王都を離れる訳にはいかないということで……最初から上級者向けダンジョンを探索することが決定。

「……視線が多いですね」

「珍しいと言えば珍しいですからね。基本的に探索するのは冒険者ばかりなので」

第三騎士団の女性騎士たち身に付けている装備は、傍から見ただけで騎士と解る物ばかり。

そして、それなりの一団の数が多いため、どこかのクランなのかと勘違いする者もいたが……見た目が平凡な青年とエルフのナイスバディな超美女と、鬼人族に近い見た目を持つオーガ……それらのセットに見覚え上がる冒険者がそれなりにいた。

「ふふ、やはりソウスケさんたちは有名なのですね」

「この街ではそれなりに活動していましたかね」

軽口を叩きながらも、いざダンジョンに入場。

「……なんとも、不思議ですね」

「俺も初めてダンジョンを潜った時は同じ感想を持ちました。では、ささっと移動しましょう」

女性騎士たちの多くはダンジョンという未知が詰まっている場所に驚き、王女であるアネットは興奮が途切れなかった。

とはいえ、彼女たちの実力を知っているソウスケからすれば、ささっと三十一階層辺りまで移動してしまいたい。

ダンジョンという環境を体験することが出来たとしても、三十一階層辺りに出現するモンスターでなければ、
彼女たちの練習相手にはならない。

「あの、ソウスケさん」

「はい、なんでしょうかアネット様」

「私も……モンスターを倒してみてもよろしいでしょうか」

「ッ!!!!????」

突然の発言に表情を驚きが支配する。

ソウスケは速攻で騎士団長であり、アネットを最優先で守るアマンダに視線を向ける。

(ど、どどどどどうなんですか!!!???)

(…………一つの、経験にはなるでしょうから、大丈夫でしょう)

(ま、マジですかっ!?)

(はい、マジです)

眼だけの会話が終了。

アマンダがそう言うのであればと思い、アネットにモンスターと戦うことを許可した。

「低ランクとはいえ、モンスターであることに変わりはありません」

「は、はい!!!」

「それと、アネット様の傍には普段からあなたの事を守っている方たちと、俺たちがいますので焦らず……冷静に狙いを定め、攻撃魔法を放ってください」

「…………解りました」

十数メートル離れた場所に離れたところに居るモンスターは女性の敵であるゴブリン。

たかがゴブリンとはいえ、上級者向けダンジョンに生息しているゴブリン。
最低レベルは十五以上であるため、油断していればあっさり近づかれてしまう。

「ッ、ギギャッ!!!!!」

「「「ギャギャ!!!」」」

一体のゴブリンがアネットたちに気付き、続いて他三体も気付き、一斉に襲い掛かる。

「ッ……ウィンドアローっ!!!!!」

(おぉ~~~……流石王族が持つ魔力、か。戦闘は基本的に初心者なんだろ? なのにあのサイズのウィンドアロー……下手に心配する必要はなかったのかもな)

アネットは一度に複数の風矢を展開し、総射。

一体だけ絶命を免れて走り続ける個体がいたが、アネットはソウスケから伝えられた言葉を思い出し、冷静に再度
風矢を放ち、ゴブリンたちを完封した。

「お見事です、アネット様」

「はぁ、はぁ、はぁ……ソウスケさんが、事前に色々と教えてくれた、お陰です」

過去に数度、売れの人物たちに命を狙われたことがある。
その際は当然の如く、第三騎士団の女性騎士たちがその場で叩き潰すことに成功。

他者の……生物の命を奪うのは、これが始めの体験だった。
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