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九百九十五話 損なってはならない
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「おい、ソウスケ殿は何処にいるか解かったか」
とある王族の一人が側近の騎士に問うた。
ルクローラ王国との戦争で立役者の一人となった冒険者、ソウスケ。
男は彼を……自分の陣営に引き入れよう、などとは考えていない。
ただ、一つ頼み事をしたかった。
「それが……既に、王都から出発したようです」
「何っ!!!??? す、数日前に王都に戻って来たばかりではないのか!!??」
先日、血の繋がった妹が珍しく剣を振っている姿を見た。
その手に握られている剣……短刀には見覚えがなく、いったい何処で購入したのかと尋ねると、妹は嬉しそうな表情で答えた。
先月、無理を頼んで第三騎士団の遠征に付いて行った時に、護衛であるソウスケに造ってもらったのだと。
妹が持つ短刀の質と、あのソウスケが造った……話には聞いていたが、本当に冒険者でありながら武器を造るのかと、決して小さくない衝撃を受けた。
一流の職人が造る物と変わらない質に加えて、ソウスケという英雄が造ったというプレミアム感に惹かれ……男もソウスケに依頼して、自身の武器を造ってもらおうかと考えた。
しかし……そう思った時には既に遅く、ソウスケたちはそういった事態になることを想定していたのか、アネットたちを王都に送り届けた翌日には王都を離れていた。
「アネット様と第三騎士団のメンバーを送り届けた翌日には、王都から旅立っていたようで」
「むぅ……既に、次の冒険先を見つけていたという事か」
「依頼であれば、冒険者ギルド……もしくは鍛冶ギルドを通して依頼することは可能かと」
「もし、王都に届くまでに野盗などに奪われたらどうする。二重の意味で頭が痛くなる」
「であれば、何名かの騎士を向かわせて直接ソウスケ殿から受け取ることも可能ですが」
やりようはいくらでもある。
ただ、この王族の男としては……既に王都から離れたソウスケに、あまり依頼を頼む気にはなれない。
何故なら……父親である国王から、決してあの冒険者と対立するような真似はするなと忠告されているため。
「……今回は止めておこう」
「よろしいのですか?」
「よろしいのかよろしくないのかで言えば、よろしくない。ただ、第三騎士団とアネットの護衛? を終えたばかりであろう。あまり権力には興味がなく、冒険を楽しむ冒険者らしい冒険者であることを考えれば……ここで王族からの依頼がくれば、不機嫌になってもおかしくはない」
最後の決着を付ける三戦の中の一戦だけ活躍したのではなく、戦争が始まってからずっと活躍し続けていた。
同じ部隊のメンバーを誰一人死なせることはなく、時にはピンチに瀕した別部隊の同士を救出。
(それに、あのルティナ・ヴィリストとの一騎打ちに勝利した鬼人族……ではなく、オーガの希少種、ザハークだったか。そんな怪物に加えて、目立った戦果はないが陰の立役者と言われているエルフもいる……改めて考えると、本当に敵に回したくない戦力が揃っているな)
知る者は殆どいないが、そこに分身スキルによって生み出された分身ソウスケは単独で多数のスキルを操りながら多くの敵兵、冒険者、騎士を殲滅し、陰ながら同士を救っていた。
加えて……決着を付ける三戦のラスト、ジェリファー・アディスタとの戦闘にも勝利している。
エイリスト王国の歴史が始まって以来、一つの団体が上げた戦果の中でも一番の内容である可能性大である。
「……冒険者に王族が気遣うというのは」
「解っている。普通に考えればおかしな話だ。だが……お前もソウスケ殿たちが上げた戦果の内容は知っているだろう」
「えぇ、勿論でございます」
「他の者たちも良く頑張ってくれた……それは間違いないだろう。しかし、彼らがないなければ被害はもっと多かった。勝つにしろ負けるにせよ、それだけは間違いと言える」
ただの強者、という言葉では収まらない強さを持つ存在。
そんな存在に少しも気を遣わない者は……ただの阿呆である。
とある王族の一人が側近の騎士に問うた。
ルクローラ王国との戦争で立役者の一人となった冒険者、ソウスケ。
男は彼を……自分の陣営に引き入れよう、などとは考えていない。
ただ、一つ頼み事をしたかった。
「それが……既に、王都から出発したようです」
「何っ!!!??? す、数日前に王都に戻って来たばかりではないのか!!??」
先日、血の繋がった妹が珍しく剣を振っている姿を見た。
その手に握られている剣……短刀には見覚えがなく、いったい何処で購入したのかと尋ねると、妹は嬉しそうな表情で答えた。
先月、無理を頼んで第三騎士団の遠征に付いて行った時に、護衛であるソウスケに造ってもらったのだと。
妹が持つ短刀の質と、あのソウスケが造った……話には聞いていたが、本当に冒険者でありながら武器を造るのかと、決して小さくない衝撃を受けた。
一流の職人が造る物と変わらない質に加えて、ソウスケという英雄が造ったというプレミアム感に惹かれ……男もソウスケに依頼して、自身の武器を造ってもらおうかと考えた。
しかし……そう思った時には既に遅く、ソウスケたちはそういった事態になることを想定していたのか、アネットたちを王都に送り届けた翌日には王都を離れていた。
「アネット様と第三騎士団のメンバーを送り届けた翌日には、王都から旅立っていたようで」
「むぅ……既に、次の冒険先を見つけていたという事か」
「依頼であれば、冒険者ギルド……もしくは鍛冶ギルドを通して依頼することは可能かと」
「もし、王都に届くまでに野盗などに奪われたらどうする。二重の意味で頭が痛くなる」
「であれば、何名かの騎士を向かわせて直接ソウスケ殿から受け取ることも可能ですが」
やりようはいくらでもある。
ただ、この王族の男としては……既に王都から離れたソウスケに、あまり依頼を頼む気にはなれない。
何故なら……父親である国王から、決してあの冒険者と対立するような真似はするなと忠告されているため。
「……今回は止めておこう」
「よろしいのですか?」
「よろしいのかよろしくないのかで言えば、よろしくない。ただ、第三騎士団とアネットの護衛? を終えたばかりであろう。あまり権力には興味がなく、冒険を楽しむ冒険者らしい冒険者であることを考えれば……ここで王族からの依頼がくれば、不機嫌になってもおかしくはない」
最後の決着を付ける三戦の中の一戦だけ活躍したのではなく、戦争が始まってからずっと活躍し続けていた。
同じ部隊のメンバーを誰一人死なせることはなく、時にはピンチに瀕した別部隊の同士を救出。
(それに、あのルティナ・ヴィリストとの一騎打ちに勝利した鬼人族……ではなく、オーガの希少種、ザハークだったか。そんな怪物に加えて、目立った戦果はないが陰の立役者と言われているエルフもいる……改めて考えると、本当に敵に回したくない戦力が揃っているな)
知る者は殆どいないが、そこに分身スキルによって生み出された分身ソウスケは単独で多数のスキルを操りながら多くの敵兵、冒険者、騎士を殲滅し、陰ながら同士を救っていた。
加えて……決着を付ける三戦のラスト、ジェリファー・アディスタとの戦闘にも勝利している。
エイリスト王国の歴史が始まって以来、一つの団体が上げた戦果の中でも一番の内容である可能性大である。
「……冒険者に王族が気遣うというのは」
「解っている。普通に考えればおかしな話だ。だが……お前もソウスケ殿たちが上げた戦果の内容は知っているだろう」
「えぇ、勿論でございます」
「他の者たちも良く頑張ってくれた……それは間違いないだろう。しかし、彼らがないなければ被害はもっと多かった。勝つにしろ負けるにせよ、それだけは間違いと言える」
ただの強者、という言葉では収まらない強さを持つ存在。
そんな存在に少しも気を遣わない者は……ただの阿呆である。
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