転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千五話 俺だけを見ろ

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(本当に、こんな奴と出会える、とはな!!! 場合によっては、あの紅騎士よりも、上か!?)

ソウスケたちが女王蟻との戦闘を始めた頃、ザハークは……まだアサルトベルとの激闘を楽しんでいた。
六つの足、全ての漆黒のブレードを持ち、毒を自在に操る殺戮蟻。

人型のモンスターが繰り出すのとはまた違う攻撃が、ザハークの闘争心を更に熱くさせる。

だが、そんないつも通り強者との戦闘を楽しむザハークとは違い、アサルトベルは非常に焦っていた。
何故なら……自分は強者として生まれ落ちたにもかかわらず、目の前の鬼すら圧倒的出来ない。

強敵であることは解っていたが、それでも戦い続ければ勝てる自信があった。
実際にアサルトベルの戦闘技術、魔力操作の腕はザハークとの戦闘で確実に上昇し、既に一流に近い域に到達している。

六つの足から生えているブレードによる斬撃は……ただ魔力を纏っている状態であればまだしも、毒を纏った斬撃であれば、ザハークでも真剣に対処しなければならない。

身体能力の高さ、センス。
近距離と遠距離、どちらも行える万能型。
ソウスケたち三人抜きで突撃していた場合、数分以内に全滅していた。

だが……殺戮蟻にとって大き過ぎる壁が三つもあり、まだその一つも越えられていない。

こうしている間にも、着々と他の敵たちが女王に向かって進行している。
アサルトベルの本能には女王を守らなければならないという命が刻まれているが、だとしてもまず現在戦闘中の難敵を倒さなければいけない。

「ッ!!! ギィィイイイァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!」

決めた。

まず……まず、目の前の鬼を全力で殺す。
全身全霊で、全集中状態で殺すことだけを考える。

後の事は、終わってから考えれば良い。

(っ!! ふっふっふ、そうだ!!! それで良い!!!! 他のことなんて何も考えるな!!! 俺を殺すことだけを考えろ!!!!!!)

バーサーカーらしい雄叫びを心の中で上げながら、ザハークも水の激流を纏いながら最高の死合いに身を投じる。

勿論……意外とバーサーカー状態になっていても……ザハークはここが、今自分がどういった場所で戦っているかは忘れていない。

だからこそアサルトベルが放つ斬撃刃などは比較的相殺し、あまり周囲を壊させない。
加えて、自身の攻撃はなるべく確実に当てる。
吼えながらもその点は徹底し、なるべく主人に迷惑が掛からないように戦い続けた。

「ギ、イ……ィ、ァ」

「ふぅ~~~~~……出来れば、もう少し強くなったお前と戦いたかったが、それは贅沢が過ぎるというものだな」

全てのブレードを叩き折り、最後にその首を切断した。

まだ残された胴体がピクピクと動いているが、完全に虫の息状態。
これからの逆転劇は……絶対にあり得ない。

「……さて、向こうは……もう終わっていたか」

「もう終わっていたか、じゃありませんよ。全く……派手に戦いましたね」

ザハークの言う通り、殺戮蟻と最後の激闘を演じている間に、ソウスケ達は親玉であるホワイトクイーンアントの討伐に成功。

ソウスケとミレアナは最後の最後までサポートに徹し続けた。

他のメンバーたちがホワイトクイーンアントの甲殻をぶち破るのには……それなりに時間が掛かったが、今回の討伐に参加したメンバーは全員一定以上の経験値を持っており、堅い相手にどう戦うなど解りきっている。

二人はただ危ない攻撃が彼らにぶつからないように魔法や矢を放ち続けた。
その結果……本来であれば倒し切るまでに五分以上は掛かるであろう白蟻の女王を三分弱で倒した。

それから約一分後に、鬼人族に見た目が近いオーガと殺戮蟻の激闘が終わった。

その激闘が終わるまでの間、女王を倒し終えたメンバーは瞬きをすることすら惜しみながら、その激闘に魅入っていた。
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