転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千四十一話 良い意味で

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ある程度の魔力を消費すれば、今度は武器選び。

先日と同様、様々な武器を使いながらソウスケたちと戦う。

(ん~~~……なんと言うか、割と悩むな)

「ハッ!!!!!」

ソウスケは大剣を振るうヌレールアの姿を見ながら、悩んでいた。

現在ソウスケ自身が相手をしており、当然ながらヌレールアの攻撃が一度も当たることはない。
とはいえ、それはヌレールアに全く武器を扱うセンスがないからではなく、純粋な身体能力の問題だった。

(ヌレールア様は大剣から大斧あたりを扱いたいみたいだけど……割と、細剣とか、短剣の二刀流……双剣とかも扱えない感じでは、ないんだよな)

超オールラウンダー、と言えるほどのセンスや際はない。
それでも、ソウスケは実際に様々な武器を使いながら、自分に攻撃を仕掛けてくるヌレールアを視て……これが一番合いますよ、という答えが中々出てこなかった。

「それでは、少し休憩しましょう」

「は、はい」

水分を取りながら休息を取るヌレールアから少し離れた場所で、試合相手となっていたソウスケたちはどの得物が相応しいか話し合っていた。

「どれが合うと思う」

「……個人的には、ロングソードが一番無難かと」

ミレアナもソウスケと感想は同じく、武器に関しては割と何でも扱える。
ロングソードではなく、長槍もありかもしれないと思ったが、ソウスケたちから視て、ヌレールアには無詠唱で魔法を発動しながら接近戦も行える素質を感じていた。

ヌレールア自身もその戦闘スタイルには憧れがあるため、その未来まで考えると、長槍よりもロングソードの方が合うというのが、ミレアナの答え。

「そうか? 悪くはないと思うが、大剣や大斧が合うと思うぞ」

「……それはあの体格を活かすなら、ということですね」

ヌレールアの身長は百八十センチを超えている。
超大男という訳ではないが、それでも大型武器を扱うには十分な体格であり、筋力も申し分ない。

これから更に鍛錬を続けていけば、体格だけは良いでくの坊ではなく、見かけ倒しではない筋肉を身に付け、前衛として活躍出来る可能性は大いにある。

「今はまだ余計な肉……脂肪だったか? それがある故にあれだが、それがなくなり、前衛に相応しい筋肉を身に付ければ大剣や大斧を振るうに相応しい男にはなるだろう」

相変わらずヌレールアが鍛錬を続け、極限まで磨き鍛え上げても……あまりザハークの食指は動かない。

それでも、平凡で終わるとは思えなかった。

「ソウスケさんは、あいつには何が一番合うと思うのだ」

「一番……一番、か…………うん、そうだな。確かに、あの体格で双剣や短剣を使うのは勿体ない気はする。今のところ、実戦でも使えそうなのは大剣や大斧に思えなくもないが……ん~~~~~」

心の底から悩むソウスケ。

器用大富豪といえる特大のセンスはない。
それでも悪い意味ではなく、良い意味で器用貧乏だと言いたくなるセンスはあった。

「…………割と無茶言うことになるかもしれないけど、どちらもありと言えば、ありな気がする」

「ほぅ、つまりソウスケさんに近いタイプに育て上げるということか」

「それはちょっと違うというか……うん、違うかな」

ソウスケが得た力は、基本的に神から授かったもの。
そしてロングソードや蛇腹剣以外の武器の扱いに関しても、蛇腹剣が喰らい得たスキルのお陰で、並以上に使えるだけ。

「個人的に、現段階だと……モンスターと戦う時は、大剣とか大斧を使った方が上手く倒せる気がする。でも、ダイエット……肉体改造? それが成功すれば、どちらかと言えば双剣やロングソード系のそれなりに小回りが利いて素早く動けるタイプの武器の方が、モンスター戦だけじゃなく対人戦においても有利だと思うんだ」

「なるほど。確かに将来を見据えるのであれば、悪くありませんね」

「だろ。とはいえ、それはそれで色々と課題があるんだけど……とりあえず、ヌレールア様の休息が終わったら伝えようか」

今日を入れて、残り十九日。
時間は無限にあるわけではない。
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