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千四十二話 零して構わない
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「それでは……自分は、大斧や大剣などよりも、将来的には細剣や短剣をメインに戦った方が良い、ということですか」
「いやいやいや、そういう訳じゃないですよ、ヌレールア様!!」
テンションが沈み始めたヌレールアに、そうではないと……真剣な表情で伝える。
「安定して勝ち続ける。常にそういった戦いばかりを求めるのは良くありませんけど、まず土台を育てるには、それが一番です!!!!」
この世界では当たり前だが、前世でソウスケがプレイしていたファンタジーゲームの様に、教会に行けば司祭に生き返らせてもらうことは出来ず、都合の良い復活魔法やアイテムはない。
故に、どんな戦いでも安定して勝つ力が必要になる。
「土台を育てる、ですか」
「その通りです!! ヌレールア様が、全く戦闘経験がないとは思いません。しかし、何事も慎重にいかなければなりません!!!!」
我儘ではあるが、自分の教えを信じすぎて死んでしまう未来だけは回避したい。
「ヌレールア様、ソウスケさんの言う通り、強くなる為には慎重にいかなければなりません」
「それは……その、避けられない戦いであっても、ですか」
「そういった戦いに遭遇してしまった時に、逃げ出さないで立ち向かえる様に、その時まで土台を作り、力を蓄えなければなりません」
「な、なるほど」
解っている様で解ってない顔を浮かべるヌレールアに、ソウスケは真剣な表情のまま……一番重要なことを伝える。
「ヌレールア様……死んでしまったら、そこまでです」
「っ……」
「ヌレールア様が、強くなって何をしたいのか、それを行う前に死んでしまっては、これまでの努力が全て水の泡になってしまいます。それは、望むところではないでしょう」
「…………はい! 僕は……強くなれないまま、死にたくは、ありません」
死にたくない。
それは強くなりたいと願う者として、男として口にするのはいかがなものかと思ってしまう……それは無理もない。
ヌレールアもなんとか振り絞り、言葉に出した。
「そうです。それで良いんですよ、ヌレールア様。人生、死んだら終わりなんですから」
先生と敬意を表する人物にそう言われると、気持ち心が軽くなる。
それでも、本当にそれで良いのかという気持ちは残っていた。
「ありがとう、ございます……でも、本当にこんな気持ちで、心構えで良いのでしょうか」
「俺だって死ぬのは怖いですよ。けど……だからこそ、こうして必死で鍛えるんじゃないですか」
「それ、は………………そう、ですね」
考えてみれば、当たり前の事である。
「勿論、世の中幸運、不幸などの差によって努力が、研鑽が続けられる差はあると思います」
これまた、当たり前の事実である。
平民だけという事はなく、貴族であっても街外で……下手すれば屋敷内で死ぬ可能性だってある。
「加えて、ヌレールア様はもう、時間という存在が非常に重要であることを理解されてる筈です」
「っ……絶対に、無駄に出来ません!!!」
自分が伝えたい事が既に伝わっていると解り、思いっきり素の笑みが零れるソウスケ。
その後、今日はまだ外に連れ出すことはないが……庭に幾つもの、高さがバラバラの土柱を、地面が平らではない空間を作り……再度模擬戦を始めた。
ソウスケたち人では、半分以上が人型ではないモンスターの仮想相手にならないが、外に出れば障害物があり、地面も平らだとは限らない。
基本的に街に出てなかったヌレールアには、良いリハビリとなる。
当然というべきか、何度か思いっきりすっころび、額を土柱にぶつけてしまうことはあったが……早速始めていた魔力操作の訓練の効果が出たのか、瞬間的に額に魔力を集め、幸いにも意識が飛ぶ大怪我に繋がることはなかった。
そして三日目…………いよいよ実戦訓練が始まる。
「いやいやいや、そういう訳じゃないですよ、ヌレールア様!!」
テンションが沈み始めたヌレールアに、そうではないと……真剣な表情で伝える。
「安定して勝ち続ける。常にそういった戦いばかりを求めるのは良くありませんけど、まず土台を育てるには、それが一番です!!!!」
この世界では当たり前だが、前世でソウスケがプレイしていたファンタジーゲームの様に、教会に行けば司祭に生き返らせてもらうことは出来ず、都合の良い復活魔法やアイテムはない。
故に、どんな戦いでも安定して勝つ力が必要になる。
「土台を育てる、ですか」
「その通りです!! ヌレールア様が、全く戦闘経験がないとは思いません。しかし、何事も慎重にいかなければなりません!!!!」
我儘ではあるが、自分の教えを信じすぎて死んでしまう未来だけは回避したい。
「ヌレールア様、ソウスケさんの言う通り、強くなる為には慎重にいかなければなりません」
「それは……その、避けられない戦いであっても、ですか」
「そういった戦いに遭遇してしまった時に、逃げ出さないで立ち向かえる様に、その時まで土台を作り、力を蓄えなければなりません」
「な、なるほど」
解っている様で解ってない顔を浮かべるヌレールアに、ソウスケは真剣な表情のまま……一番重要なことを伝える。
「ヌレールア様……死んでしまったら、そこまでです」
「っ……」
「ヌレールア様が、強くなって何をしたいのか、それを行う前に死んでしまっては、これまでの努力が全て水の泡になってしまいます。それは、望むところではないでしょう」
「…………はい! 僕は……強くなれないまま、死にたくは、ありません」
死にたくない。
それは強くなりたいと願う者として、男として口にするのはいかがなものかと思ってしまう……それは無理もない。
ヌレールアもなんとか振り絞り、言葉に出した。
「そうです。それで良いんですよ、ヌレールア様。人生、死んだら終わりなんですから」
先生と敬意を表する人物にそう言われると、気持ち心が軽くなる。
それでも、本当にそれで良いのかという気持ちは残っていた。
「ありがとう、ございます……でも、本当にこんな気持ちで、心構えで良いのでしょうか」
「俺だって死ぬのは怖いですよ。けど……だからこそ、こうして必死で鍛えるんじゃないですか」
「それ、は………………そう、ですね」
考えてみれば、当たり前の事である。
「勿論、世の中幸運、不幸などの差によって努力が、研鑽が続けられる差はあると思います」
これまた、当たり前の事実である。
平民だけという事はなく、貴族であっても街外で……下手すれば屋敷内で死ぬ可能性だってある。
「加えて、ヌレールア様はもう、時間という存在が非常に重要であることを理解されてる筈です」
「っ……絶対に、無駄に出来ません!!!」
自分が伝えたい事が既に伝わっていると解り、思いっきり素の笑みが零れるソウスケ。
その後、今日はまだ外に連れ出すことはないが……庭に幾つもの、高さがバラバラの土柱を、地面が平らではない空間を作り……再度模擬戦を始めた。
ソウスケたち人では、半分以上が人型ではないモンスターの仮想相手にならないが、外に出れば障害物があり、地面も平らだとは限らない。
基本的に街に出てなかったヌレールアには、良いリハビリとなる。
当然というべきか、何度か思いっきりすっころび、額を土柱にぶつけてしまうことはあったが……早速始めていた魔力操作の訓練の効果が出たのか、瞬間的に額に魔力を集め、幸いにも意識が飛ぶ大怪我に繋がることはなかった。
そして三日目…………いよいよ実戦訓練が始まる。
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