1,006 / 1,259
千四十七話 慣れず、削られ続ける
しおりを挟む
「すいません、お持たせしました」
「いえいえ、お気になさらず。ヌレールア様が強くなる……それが目的の実戦ですから」
「……ありがとうございます」
礼の言葉なら、既に貰っている。
だが、ソウスケはそれを口にすることはなく、素直に受け入れた。
「それでは、また手頃なモンスターを探しましょう」
深い場所に向かわず、新米の冒険者たちが多く訪れる場所をうろちょろしていれば、数十分後にはまた手頃なモンスターと遭遇できる。
「フゥ、フゥ……ブボォオオオッ!!!!」
オークと同じく、パワーがあるイノシシ系のモンスター、
「キキ、ゥキャァオオッ!!!!」
パワーはそこまでないが、機動力に優れた猿系のモンスター。
Eランク……時にはDランクのモンスターと戦い、時には青痣ができ、切傷が……骨にヒビが入ることもあった。
そんな中、ヌレールアは苦悶の声を零すことはあれど、泣き言は一切吐かなかった。
(前衛の奴らは、こんな戦いを、いつもしてたんだな!!!)
魔法至上主義、といった考えはヌレールアにはない。
心の奥底で、実は武器や素手による攻撃などよりも魔法の方が全面的に優れてるよな~~、なんて考えもなかった。
ただ……前衛で戦う者たちが何を考え、何を感じて戦っていたのかは、全く知らなかった。
(焦るな、良く、見るんだ!!)
オークとの戦いの際もそうだったが、今日が初めての接近戦デビューであるヌレールアは……モンスターと戦う度に、これまで感じたことがなかったプレッシャーを向けられ、メンタルをゴリゴリに削られていた。
一度オークとの戦闘に勝利すれば、オークより弱いモンスターとの戦闘は戦い易くなる?
人によってはそういった強メンタルを持つ者はいるが、残念ながらヌレールアはそちら側に分類されるタイプではない。
寧ろ、これまで後方から魔法を発動して戦うのがメインだったこともあり、至近距離から本気の戦意を、殺意を向けられることには慣れてなかった。
「せ、ヤッ!!!!」
「ギャバっ!?」
だからこそ、ヌレールアは必死でソウスケたちに教わった接近戦に関する心構えを復唱していた。
綺麗に戦おうとするのではなく、勝つ事だけに意識を向ける。
そうして戦いを重ねて重ね、日が暮れるまでの間戦い続けた結果……ヌレールアは相変わらずメンタルは削られた状態であり、最後の戦いでも切傷や青痣がいくつも体に刻まれてしまったが、それでも全勝することが出来た。
「本当にお疲れ様です、ヌレールア」
「ソウスケ先生たちが居てくれた、お陰です」
Dランク以上のモンスターが現れないエリアを探索していたが、それでも例外は起こる。
今日は一度だけだったが、Cランクのモンスターと遭遇。
一体だけであれば護衛の騎士だけでも対応出来たが、数が五、六……十と増えれば、ヌレールアを守れない可能性が高くなる。
「どうも……では、屋敷に到着したら直ぐにベッドにダイブしたくなるかもしれませんが、その前にしっかりと栄養満点の夕食を食べてください」
ソウスケたちが泊っている宿に到着し、馬車から降りようとしたタイミングで金貨が一枚、護衛の騎士に放られた。
「それ、ポーションの代金に使ってください」
「っ、ソウスケ殿。気遣いは嬉しいが、イスタンダル家はあなた達に依頼している立場だ」
「ヌレールア様が討伐した素材を全て売却すれば、それぐらいの金額になります」
戦闘が終わる度に、怪我した部分をポーションで回復する。
それは冒険者や騎士であってもおかしくないが、強くなる為に実戦を重ねるのであれば……そういった不利になる状況を重ねながら、次の戦闘に臨むのも一つの方法。
毎回負った傷にポーションを使うのは甘え……と考える者はいる。
だが、まだそこではないとソウスケは判断した。
「では、また明日」
ソウスケは騎士の言葉をそれ以上聞かず、宿へと戻った。
「いえいえ、お気になさらず。ヌレールア様が強くなる……それが目的の実戦ですから」
「……ありがとうございます」
礼の言葉なら、既に貰っている。
だが、ソウスケはそれを口にすることはなく、素直に受け入れた。
「それでは、また手頃なモンスターを探しましょう」
深い場所に向かわず、新米の冒険者たちが多く訪れる場所をうろちょろしていれば、数十分後にはまた手頃なモンスターと遭遇できる。
「フゥ、フゥ……ブボォオオオッ!!!!」
オークと同じく、パワーがあるイノシシ系のモンスター、
「キキ、ゥキャァオオッ!!!!」
パワーはそこまでないが、機動力に優れた猿系のモンスター。
Eランク……時にはDランクのモンスターと戦い、時には青痣ができ、切傷が……骨にヒビが入ることもあった。
そんな中、ヌレールアは苦悶の声を零すことはあれど、泣き言は一切吐かなかった。
(前衛の奴らは、こんな戦いを、いつもしてたんだな!!!)
魔法至上主義、といった考えはヌレールアにはない。
心の奥底で、実は武器や素手による攻撃などよりも魔法の方が全面的に優れてるよな~~、なんて考えもなかった。
ただ……前衛で戦う者たちが何を考え、何を感じて戦っていたのかは、全く知らなかった。
(焦るな、良く、見るんだ!!)
オークとの戦いの際もそうだったが、今日が初めての接近戦デビューであるヌレールアは……モンスターと戦う度に、これまで感じたことがなかったプレッシャーを向けられ、メンタルをゴリゴリに削られていた。
一度オークとの戦闘に勝利すれば、オークより弱いモンスターとの戦闘は戦い易くなる?
人によってはそういった強メンタルを持つ者はいるが、残念ながらヌレールアはそちら側に分類されるタイプではない。
寧ろ、これまで後方から魔法を発動して戦うのがメインだったこともあり、至近距離から本気の戦意を、殺意を向けられることには慣れてなかった。
「せ、ヤッ!!!!」
「ギャバっ!?」
だからこそ、ヌレールアは必死でソウスケたちに教わった接近戦に関する心構えを復唱していた。
綺麗に戦おうとするのではなく、勝つ事だけに意識を向ける。
そうして戦いを重ねて重ね、日が暮れるまでの間戦い続けた結果……ヌレールアは相変わらずメンタルは削られた状態であり、最後の戦いでも切傷や青痣がいくつも体に刻まれてしまったが、それでも全勝することが出来た。
「本当にお疲れ様です、ヌレールア」
「ソウスケ先生たちが居てくれた、お陰です」
Dランク以上のモンスターが現れないエリアを探索していたが、それでも例外は起こる。
今日は一度だけだったが、Cランクのモンスターと遭遇。
一体だけであれば護衛の騎士だけでも対応出来たが、数が五、六……十と増えれば、ヌレールアを守れない可能性が高くなる。
「どうも……では、屋敷に到着したら直ぐにベッドにダイブしたくなるかもしれませんが、その前にしっかりと栄養満点の夕食を食べてください」
ソウスケたちが泊っている宿に到着し、馬車から降りようとしたタイミングで金貨が一枚、護衛の騎士に放られた。
「それ、ポーションの代金に使ってください」
「っ、ソウスケ殿。気遣いは嬉しいが、イスタンダル家はあなた達に依頼している立場だ」
「ヌレールア様が討伐した素材を全て売却すれば、それぐらいの金額になります」
戦闘が終わる度に、怪我した部分をポーションで回復する。
それは冒険者や騎士であってもおかしくないが、強くなる為に実戦を重ねるのであれば……そういった不利になる状況を重ねながら、次の戦闘に臨むのも一つの方法。
毎回負った傷にポーションを使うのは甘え……と考える者はいる。
だが、まだそこではないとソウスケは判断した。
「では、また明日」
ソウスケは騎士の言葉をそれ以上聞かず、宿へと戻った。
126
あなたにおすすめの小説
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる