転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千六十二話 卒業祝い?

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「そ、ソウスケさん。本当に良いんですか?」

「良いに決まってるじゃないですか」

ヌレールアが槍使いのリザードマンにタイマンで勝利した祝勝会が終わった後……ソウスケはヌレールアを夜の街に連れ出していた。

勿論、変装用のマジックアイテムは使用している。

「もっと自覚した方が良いですよ。簡単に成し遂げられる内容ではない功績を得たと」

「っ、そう言ってくれるのは嬉しいですけど……なんて言うか、あまりはしゃぎすぎても良いのかなって思いもあって」

ソウスケだけではなく、ミレアナやザハークもヌレールアの戦いっぷりを褒めた。
従者たちも盛大にヌレールアの活躍を褒め……嬉しさで一杯ではあったものの、ヌレールアが目指すゴールに辿り着いたわけではない。

「そういう慢心しない気持ちは大切だと思います。でも、既にその気持ちに気付けてるって事が、凄い重要で……それだけで、前に進めてると思います」

「そ、そうですか?」

敬意を抱いてるソウスケにそこまで褒められると、さすがにヌレールアも笑みを零してしまう。

「慢心しないようにする。それはとても大事ですが、それでも今日……確実に一歩前に進んだという事実に変わりはありません。ですので、今日一日は……その喜びに浸っても良いかと」

「……へへ、分かりました」

何だかんだで、ヌレールアも一人でリザードマンという強敵と相手に、持久戦という戦法を選びはしたが……己の力だけで倒せた事実には、嬉しさで一杯だった。

「金は全部俺が出すんで、今日は存分に楽しみましょう」

「はい!!!」

宣言通り、二人は存分に夜の街で楽しみ尽くし……屋敷に戻って来たヌレールアはこれまでの人生の中で、一番の睡眠を味わった。


そして翌日、指導期間が終了したため、最後の挨拶をと思っていたヌレールアに……ソウスケたちからプレゼントが送られた。

「こいつは俺が造った大剣だ」

「えっ…………ほ、本当に、良いん、ですか」

ザハークが趣味で武器や防具造りを行っていたという話は聞いていた。

しかし、自分の為に武器を造っていたという話は全く聞いていなかった。

「良いに決まってるだろ。お前の為に造った武器だ……あれだ、卒業祝い……というべきなのか、ソウスケさん」

「はっはっは!!!! そういう感じで合ってるよ。はい、ヌレールア様。俺からはロングソードと双剣です」

「………………」

受け取った、受け取りはしたものの……ヌレールアは言葉が出てこなかった。

元々接近戦系の武器に触れてこなかったものの、物を視る眼は養われていた。
だからこそ、ザハークが造った大剣、ソウスケが造ったロングソードと双剣が……明らかに並ではなく、自分が持つにはまだ早いと解る一品であると、鑑定系のマジックアイテムを使わずとも感じ取れた。

「私からはこれらを。今よりも強くなると志したヌレールア様であれば、必ず必要になります」

「あ、ありがとう……ございます」

ミレアナからのプレゼントは、木箱に入った大量のポーション。

これらのポーションも並の品質ではなく、回復する速度、回復出来る傷の範囲が一級品の物ばかり。
勿論、これらを造ったのはミレアナ。

ミレアナとしては素材の品質に頼っただけのポーションであり、本当の意味で一級品ではないと思っているが……使用する素材の質を腐らせることなく昇華させるのも腕の一つ。

「あの……本当に、貰って良いんですか」

「えぇ、勿論ですよ。俺達が貰って欲しいって思ってヌレールア様の為に造ったんですから」

大剣にロングソードと双剣、各種ポーション。
それらは……傍にいる護衛の騎士たちから見ても、思わずつばを飲み込むほど……欲しいと思ってしまう品質の物ばかり。

「ヌレールア様。この二十日間で、ヌレールア様がどれだけ自分を変えることに、上を目指すことに真剣なのかは分かりました。なので、最後にその心を忘れないように、とは言いません」

ソウスケが最後に伝えたい言葉は、別にあった。

「どうか、休むことも忘れないように」

「っ……は、はい!!!!」

最後まで伝えられてソウスケの優しさに、ヌレールアは涙を流しながら応えた。
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