転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千七十二話 誰が立てた?

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「……ソウスケさん」

「なんだ、ミレアナ」

「先程ザハークが喋った内容が……いわゆるフラグというやつになったのでしょうか」

イルザスたちがトロールシャーマンを探し始めてから、一日目に再びトロールシャーマンと再戦することに成功。

しかし……今現在戦闘中であるイルザスたちの会話などから、明らかに自分たちが先日戦ったトロールシャーマンよりも強くなっていることが判明。

「えっと………………そんな事はないと、思うよ? ほら、イルザスさんたちが討伐を一度失敗したって聞いた時、俺たちも似た様な考えてたし…………考えてたよね???」

「そう、ですね。もしかしたら、考えていたかもしれません」

であれば、自分たちの会話がフラグになってしまった!!!??? といった考えが芽生え、更にテンションが落ちる二人。

そんなソウスケとミレアナとは対照的に、ザハークはややテンション高めの様子でイルザスたちとトロールシャーマンの戦闘を眺めていた。

「トロールらしい体形は変ってないが、それなりに動けるようだな。前回から変わったらしい? ところを考えると、魔法をメインに戦うタイプのデメリットを消せるぐらいの速さを手に入れられた、という事か」

ザハークの期待していた進化先とは違い、トロールシャーマンはしっかりとシャーマンの要素を引き継いだ方向に成長していた。

だが、それでも一応ザハークの希望通り……イルザスたちと戦った時よりも成長していた。

「……魔力による防御壁? を展開するのが速いな。ソウスケさんやミレアナはあぁいった技術を使わないが……あの速度で的確に展開出来るのは、やはり凄いのか?」

「多分、凄いと思う。魔力障壁の堅さもそれなりにあると思うけど、見た目に反して判断速度が速い。技術力は……一流レベルだろうね」

イルザスの仲間にも女性魔術師がいるが、彼女の腕は……まだ一流には届かず、一流半といったところ。
魔力量と身体能力も負けてしまっているが……彼女一人で戦っている訳ではない。

四対一で戦っているため、必ずしもイルザスたちが負けるとは限らない。

(うん……本当に、かなり解らないね。イルザスさんのパーティーにはタンクがいる。ちゃんと受け止めたり受け流したり出来る。それにあの盾……多分、魔法対策に特化した盾、だよね? トロールシャーマンの防御力も思っていた以上に高いけど、イルザスさんたちの防御力もかなり高い)

タンクの冒険者は竜人族の男であり、非常に全体が見えている。

そして高いのは防御力だけではなく、成長したトロールシャーマンにも届く攻撃力をイルザスたちは有している。

「あれだけレベルの高いタンクがいれば……六対四ほどでイルザスさん達の方が有利ですね」

優秀なタンクがいれば、タンクが攻撃を引き付けている間に他のメンバーは傷を癒し、魔力量を回復できる。

「……七対三じゃないんだな」

「えぇ。タンクのレベルは高く、接近戦の攻撃力……遠距離の攻撃力も一定以上の高さを有しています。ただ……トロールシャーマンの魔力量を考えると、長丁場になるでしょう」

トロールシャーマンがただの攻撃力だけではなく、デバフ……呪いが籠った攻撃も行うため、全くもって油断出来ない時間が続く。

「加えて……あのトロールシャーマン、まだ本気を出していない様に見えます」

「ん~~~~~…………確かに、焦ってるようには見えない、かな。でも舐めプをしてるようには見えないな」

「同感です。ですので、あのトロールシャーマンは何かしらの切り札を持っているかと」

「切り札か~~。魔力を大きく消費するのか、それとも体力を大きく消費するのか。そういうデメリットがあるから使わないのか……確かに、リスクを取らずに倒せるならそれに越したことはないか」

二人が冷静に目の前の戦況を観察するのか……ザハークは是非ともその切り札が見てみたいと、そこそこ不謹慎なことを考えていた。
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