転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
1,035 / 1,259

千七十六話 どういった経緯で?

しおりを挟む
「ん? …………なぁ、ミレアナ。俺の見間違いかな……割と、ザハークが怪我してる様に見えるんだけど」

「私も同じように見えてるので、ソウスケさんの見間違いではありません」

大きな衝撃音が聞こえた場所まで向かうと、そこには青痣だけではなく、ところどころから血を流しているザハークが立っていた。

「ソウスケとミレアナか。終わったぞ」

「いや、うん……とりあえずお疲れ様」

勿論、ザハークはシェイプアップしたトロールシャーマンとの戦いに勝利しており、地面には右腕がバキバキに折れ……頭部が思いっきり凹んでいる死体が転がっていた。

「勝ったのは解るんだけどさ、なんでそんなにボコボコになってるの?」

ソウスケから見て、シェイプアップしたトロールシャーマンは、確かに強敵なのは間違いなかった。

ただ、これまでザハークが戦ってきた相手の中でも……トップ三、五には入らない。
なんとかトップ十には入るかもしれないといったところ。

ザハークが体術だけで戦うという縛りを課して戦っていたとしても、現在のように青痣や出血がところどころにあるほど、負傷することはない。

「ソウスケさん……呪い、デバフと言うのか? あれは凄いな」

「あぁ~~~…………そういう事、か?」

デバフによって全体的に身体能力を下げられた。

トロールシャーマンが成長し、前回イルザスたちと戦った時よりも強化されていることを考えれば、デバフ関連の力が向上していてもおかしくない。

それは……解らなくもない。
魔力総量が増加し、呪いの力も強くなっている。
そういったトロールシャーマンの変化は解るものの、正直なところ……だからといって、ザハークがここまでダメージを受けるとは思わなかった。

「ザハーク、あなた……興味本位で、わざとトロールシャーマンのデバフを受けたのではありませんか?」

「いや、わざとは受けていない。楽しんでいたら、食らってしまっていた」

「「「「…………」」」」

「まっ、そういう事もあるか」

「「「「っ!!!???」」」」

トロールシャーマンを相手に楽しんで戦っていた、その結果デバフを食らってしまった。
戦闘者として失格……あり得ない失態であるに、イルザスたちはなんとも言えない表情を浮かべるも……ザハークの主人であるソウスケが「そういう事もあるよな」と軽く流したことに驚きを隠せなかった。

「その時に、まず良い一撃を食らってしまったな」

「不意を突かれ、更に身体能力が下がった……一応、納得は出来ますね」

強敵との戦闘を心の底から楽しんでいる。

そんなザハークの性格をよ~~く知っているミレアナは、今更そこに関してツッコむことはなかった。

「最初のデバフ以降も、何度か食らったですか?」

「そうだな。良い一撃を貰った後に何度か食らった。そしたら……丁度良い感じになったのだ」

丁度良い感じになった。
この言葉に、またイルザスたちは理解出来ず、首を傾げる。

「そこからは食らわない様に気を付けながらも前に出て戦った」

「デバフの攻撃は躱し続けたけど、打撃までは躱せなかった。って感じであってる?」

「あぁ、イルザスたちとの戦いを観ていて解ったつもりだったが、こいつは非常に上手かった」

デバフを発動しながら、身体能力がダウンしたとはいえ、ザハークの格闘戦に付いていくだけの動きが出来る。
そういった技術に限定すれば、ザハークがこれまで戦ってきた相手の中でもトップクラスの腕前だった。

「……はぁ~~~~~~。一応納得は出来たよ。でもさ、ザハークのそのデバフ……なんとかして弾き飛ばせなかったの?」

ソウスケは何故武器をツッコまなかったのかった。
相手が高い身体能力を持っており、杖という少し武器としての攻撃力には欠ける得物だけしか持っていないのであれば、肉弾戦で挑むのがザハークである。

「………………その発想には至らなかったな」

(……嘘くせ~~~~~~~~)

眼を逸らして答えるザハークに呆れの眼を向けるも、ソウスケはそれがザハークらしくもあると思い、ポーションを渡した。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」 勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、 ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。 追放すらできない規約のせいで、 “事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。 だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。 《超記録》―― 敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。 生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。 努力で《成長》スキルを獲得し、 記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。 やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。 対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、 記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。 一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。 さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。 街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。 優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。 捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。 爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...