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千八十四話 鎖にしてはならない
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(提示してくれた内容は、冒険者に対するスカウトと考えれば、かなり破格のもの……何か、他にも目的があるのか?)
ソウスケは自分が大多数の冒険者よりも強く、冒険者としてそれなりの数の功績を残していると理解している。
ただ、それでも今のところ、立場は変わらず冒険者は。
それを考えれば、ラグラスが提示した内容は本当に破格の内容。
しかし……ソウスケという人間をある程度調べているのであれば、ソウスケたちが基本的にスカウトを断っているという情報を持っていてもおかしくない。
(……多分、元々俺が騎士に興味がないのは知ってそうだと思うんだけど…………もしかしなくとも、それでもスカウトしようと思った理由があるのかな)
ソウスケは目の前のラグラス・トル―バという騎士と出会ったのは、今回が初めて。
まだ知らないところが多くあるが……それでも、これまでこの世界で出会ってきた人間の中でも、ラグラスという人間は信用出来る人物だと感じた。
「ラグラス、もしかして何かお困りの事があるんですか?」
「っ、顔に出ていただろうか」
「いえ、なんとなくそう思って……スカウトが失敗すれば、当然気落ちするとは思いますが、ラグラスはそれだけではなく、どこか……心配そうな顔をしていたので」
「…………個人的な話になってしまうが、よろしいだろうか」
ソウスケが頷き、ラグラスはぽつぽつと語り始めた。
先日、未来の団長候補と考えていた騎士が雷竜との戦闘の際に仲間の騎士を庇い、亡くなってしまった。
ラグラス自身、まだまだ騎士として戦い続けるつもりではあるが、肉体的には既に全盛期を過ぎている自覚はある。
血繋騎士団が拠点としている街、ベルブスはドラゴニックバレーかそう遠くない位置にある。
故に、以前ミレアナが討伐した毒竜、ヴェノレイクのような存在がドラゴニックバレーでの生存競争に敗れ、流れてくるドラゴンが多い。
急速的に戦力が落ちている訳ではない。
団長候補の騎士が亡くなったからといって、連携がボロボロになることはなく、団員たちが絶望に追い込まれている訳でもない。
ただ……団を纏める立場であるラグラスとしては、どうしても心配な気持ちが抜けない。
(親は、子供が成人して大人になっても、子供だと思ってしまう……って感じのことなのかな)
ラグラスの個人的な話を聞き、男女二人は……先程のようにやらかしてしまわないよう、グッと悔しさを押し殺し、顔に出ない様にしていた。
とはいえ、それはそれで何かを我慢しているという気持ちは、ソウスケたちに伝わっていた。
「…………何かの足しになるかは分かりませんが」
以前、アマンダが団長を務める騎士団に伝えた訓練方法を、ソウスケはラグラスに教えた。
ダンジョンがあるなら、遠征させて無理のない範囲でモンスターに挑み、手に入れた素材や宝箱に入っていた硬貨やマジックアイテムは、自分たちが強くなる為に使う。
ソウスケはそれを細かく伝え、ラグラスたちにとっては危険性はあるものの、有難い内容ではある……いつ流れのドラゴンが襲来するか、解らないというベルブスの不確定要素を除けば。
「やはりそうですね………………そうなると、ラグラスたちがそのドラゴンたちとどの様にして戦っているかは解りませんが、もし騎士らしく正面から堂々と、狩りを行うように、狡猾に戦う戦略を取り入れた方がよろしいかと」
「…………すぅーーーーーー、ふぅーーーーーーーーーー……相手は、同じ騎士ではない。冒険者の様な、同じ人間でもない。相手は……我々を脅かす怪物だと、そう認識するべきだと。そういうことか」
「理解が早くて助かります。ラグラスさんたちが持つ騎士としての誇りは、とても大事なものだと思います。ただ、それを自身の動きを縛る鎖に変えてしまってはダメだと思います」
己を縛る鎖に変えてはならない。
その言葉に、ラグラスを含む三人は決して小さくない衝撃を受けた。
ソウスケは自分が大多数の冒険者よりも強く、冒険者としてそれなりの数の功績を残していると理解している。
ただ、それでも今のところ、立場は変わらず冒険者は。
それを考えれば、ラグラスが提示した内容は本当に破格の内容。
しかし……ソウスケという人間をある程度調べているのであれば、ソウスケたちが基本的にスカウトを断っているという情報を持っていてもおかしくない。
(……多分、元々俺が騎士に興味がないのは知ってそうだと思うんだけど…………もしかしなくとも、それでもスカウトしようと思った理由があるのかな)
ソウスケは目の前のラグラス・トル―バという騎士と出会ったのは、今回が初めて。
まだ知らないところが多くあるが……それでも、これまでこの世界で出会ってきた人間の中でも、ラグラスという人間は信用出来る人物だと感じた。
「ラグラス、もしかして何かお困りの事があるんですか?」
「っ、顔に出ていただろうか」
「いえ、なんとなくそう思って……スカウトが失敗すれば、当然気落ちするとは思いますが、ラグラスはそれだけではなく、どこか……心配そうな顔をしていたので」
「…………個人的な話になってしまうが、よろしいだろうか」
ソウスケが頷き、ラグラスはぽつぽつと語り始めた。
先日、未来の団長候補と考えていた騎士が雷竜との戦闘の際に仲間の騎士を庇い、亡くなってしまった。
ラグラス自身、まだまだ騎士として戦い続けるつもりではあるが、肉体的には既に全盛期を過ぎている自覚はある。
血繋騎士団が拠点としている街、ベルブスはドラゴニックバレーかそう遠くない位置にある。
故に、以前ミレアナが討伐した毒竜、ヴェノレイクのような存在がドラゴニックバレーでの生存競争に敗れ、流れてくるドラゴンが多い。
急速的に戦力が落ちている訳ではない。
団長候補の騎士が亡くなったからといって、連携がボロボロになることはなく、団員たちが絶望に追い込まれている訳でもない。
ただ……団を纏める立場であるラグラスとしては、どうしても心配な気持ちが抜けない。
(親は、子供が成人して大人になっても、子供だと思ってしまう……って感じのことなのかな)
ラグラスの個人的な話を聞き、男女二人は……先程のようにやらかしてしまわないよう、グッと悔しさを押し殺し、顔に出ない様にしていた。
とはいえ、それはそれで何かを我慢しているという気持ちは、ソウスケたちに伝わっていた。
「…………何かの足しになるかは分かりませんが」
以前、アマンダが団長を務める騎士団に伝えた訓練方法を、ソウスケはラグラスに教えた。
ダンジョンがあるなら、遠征させて無理のない範囲でモンスターに挑み、手に入れた素材や宝箱に入っていた硬貨やマジックアイテムは、自分たちが強くなる為に使う。
ソウスケはそれを細かく伝え、ラグラスたちにとっては危険性はあるものの、有難い内容ではある……いつ流れのドラゴンが襲来するか、解らないというベルブスの不確定要素を除けば。
「やはりそうですね………………そうなると、ラグラスたちがそのドラゴンたちとどの様にして戦っているかは解りませんが、もし騎士らしく正面から堂々と、狩りを行うように、狡猾に戦う戦略を取り入れた方がよろしいかと」
「…………すぅーーーーーー、ふぅーーーーーーーーーー……相手は、同じ騎士ではない。冒険者の様な、同じ人間でもない。相手は……我々を脅かす怪物だと、そう認識するべきだと。そういうことか」
「理解が早くて助かります。ラグラスさんたちが持つ騎士としての誇りは、とても大事なものだと思います。ただ、それを自身の動きを縛る鎖に変えてしまってはダメだと思います」
己を縛る鎖に変えてはならない。
その言葉に、ラグラスを含む三人は決して小さくない衝撃を受けた。
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