転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百二話 価値観の違い

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ソウスケはグロードが持ってきた瓶の中に何が入っているのか解らなかった。
ただ……なんとなく、アルコールの匂いを感じ取った。

そして鑑定を使い、いったい中に何が入っているのか確認したところ……瓶の中に入っている物が、火酒・業火であることが解った。

「えっと………………これは、ドワーフであるグロードさんにとって、至高のお酒では?」

「そうだな。俺の大切なコレクションの一つだ」

「さすがに、そんな大切な物頂けませんよ」

ソウスケはランク九の武器を二つ、ランク八の武器をグロードに見せただけである。
決して上げる訳ではない。

ただ見せただけで、武器のランクに換算すれば、五以上は確定しているお酒を貰う訳にはいかなかった。

「気にするな。見合った礼の品だ」

「いや、でも俺は武器を見せただけですし」

「…………まぁ、使用者である小僧からすれば、そういう価値観なのかもしれんな。だが、鍛冶師として生きている俺からすれば、これだけの品を見れる…………それだけで大金を払う価値があるというもの」

グロードはランク九の武器を造れる鍛冶師ということもあり……その事実は伏せているが、それでも顧客と言える者たちがいるため、それなりに懐は温かい。

なので現金で支払うことも出来たが、三人の強さをある程度把握しているグロードは、強さがある=大金を持っていることを知っているため、それならば大金を持っているだけでは中々手に入らない自分のコレクションの一つを礼として渡すことにした。

「今日、小僧たちに出会え、お前が持つ武器を見れて、大いに刺激を受けた。創作意欲が湧いてきたんだ……解かるか、この感覚?」

「……何も気にせず、強敵を相手に立ち向かえる感覚に、近いかなと」

「はっはっは!!! そうだな。死をも気にせず、自分の持てる力をぶつけられる。戦闘に置き換えれば、そういった感覚に近いかもしれないな」

つまり、中々感じられない刺激、感覚。

それを得ることが出来たからこその、火酒・業火という酒を礼の品として渡した。

「…………分かりました。では、礼の品として頂きます」

「日持ちする瓶だから、ゆっくり飲んでも構わん。それと、あまり強くないのであれば、一気に大量に呑むなよ」

「……喉がやけて、声が出なくなるから、ですか?」

「その通りだ」

(…………な、名前に違わぬ度数を持ってるってことか)

もしや爆弾と変わらない? なんてことを思いながら火酒・業火を亜空間にしまい、三人はグロードと別れた。

その別れ際、ソウスケは気になっていた事を訊いた。

「あっ、そういえばグロードさん。あの大剣の素材……何を使ったのか、伺ってもいいですか」

「……ふっふっふ。ドラゴニックバレーに生息しているドラゴンの素材だ。今は生息してるか解らんがな」

店に戻ると、他の客が店内にいたため、グロードは敢えて濁して伝えた。

ただ、ソウスケとしてはそれだけ教えてもらえれば十分だった。

「いったいどんなドラゴンの素材なのでしょうね」

「現在のドラゴニックバレーには生息していないかもしれないと言っていたな」

「言い換えれば、過去に間違いなくドラゴニックバレーに生息してたって事だよね」

「そうなりますね………………とはいえ、そう簡単に思い付きませんね」

ソウスケも大剣に鑑定を使用して視た際、ランクや大剣の名前などは解ったが、名前などから使用されている素材を推察できなかった。

「……二つの属性を持つドラゴン、とかか?」

「なるほど。可能性としては、ありえそうですね」

ミレアナはその様なドラゴンがいたという話は聞いたことはないが、それでもドラゴニックバレーという多数のドラゴンがいる環境であれば、そういった通常では考えられない個体が生まれてもおかしくないと考えられる。

だが、ソウスケの頭に浮かんだ予想は二人と違った。
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