転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百三話 アンタッチャブル?

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「俺は……古龍の素材が使われたんじゃないかって思うな」

「っ!!!!????? そ、それは、さすがに…………でも……そうですね。あのランクの武器となれば……」

「???」

ミレアナは当然、ソウスケが口にした古龍という存在を知っていたが、モンスターであるザハークは古龍というのがいったいどの様なドラゴンなのか知らなかった。

「ミレアナがそこまで驚くほどの竜種なのか?」

「古龍とは、そもそも存在数が極端に少ないドラゴンなの」

「……歳を取っただけ、繫殖力が低いだけのドラゴンというわけではないのだな」

「そうね。ただ、実際のところどう説明するのが正解なのかは、私も解らないわ」

ただ、普通のドラゴンと比べ物にならないほどの戦闘力を持つドラゴン。

それこそ、小国であれば古龍と敵対するとなると……国単位で討伐しなければならない。

「色々と謎が多いドラゴンということか」

「なんとなくそうかもしれないって俺も、古龍に関しては詳しくないんだけど、ミレアナの反応からしてやっぱりドラゴンの最上位種、みたいな認識で合ってるみたいだな」

「その認識で間違いないかと……ドラゴニックバレーに関する歴史は知りませんが、かつて存在していてもおかしくはないでしょう」

「古龍、か………………俺たちなら、勝てるだろうか」

なんとも、バカな考えである。

ドラゴニックバレーから一番近い街、レイウルには確かに強さ自慢の猛者たちが多く集まる。
その猛者たちは一人でBランクを、パーティーでならAランクのドラゴンだって殺れると語り合う。

だが……その殺れる対象の中で、基本的に古龍というAランクよりも更に上に位置するドラゴンは、まず入ってこない。

「…………どうでしょうね。ソウスケさんが蛇腹剣を、水龍の蒼剣を使うのであれば、可能性はあるのではないでしょうか」

「どれだけ強いのか、あまり想像出来ないけど……そうだね。あいつらを使えば、とりあえず戦えるかもしれないね。でも、最初の一撃はレヴァルグを思いっきり投擲するのが一番良さそうじゃないかな」

「開戦の火蓋を切るには、それが一番良さそうですね」

レヴァルグは水龍の蒼剣と同じく、ランク九の超が二つや三つでは足りない程の名槍。

「とはいえ、基本的に存在が確認されても、向こうが動かない限り、こちらから手を出してはならないでしょう」

「? 古龍に対しては、そういった暗黙のルールというのがあるのか?」

「そういったものがあるのかは知りませんが、手を出し……討伐に失敗すれば、街どころか国が消えかねないでしょう」

ミレアナの言葉は決して大袈裟、誇張などではなく……歴史を遡れば古龍に限らず、Sランクモンスターの討伐に失敗して国が滅んだという記録が存在する。

そのため、基本的には一冒険者が、一組の冒険者パーティーが挑むことは許されない。

バカが起こした行動で国が亡ぶなど、関係無い者たちにとってはたまったものではない。

「国が、か……それは確かに、容易に手出しできないな」

「……これは私の勝手な憶測ですが、古龍が動き出せば、その他のモンスターが便乗して街を攻め始めるかもしれません」

「それは…………あり得そうだね。古龍って、モンスターの中ではカリスマ性半端なさそうだし……特に、同じドラゴンたちが調子に乗って暴れ回りそうだね」

あの古龍さんが人の街や国を襲い始めたんだから、俺たちもこのビックウェーブになるしかねぇだろ!!!! ……といった気分になるかは不明だが、少なくともドラゴンや他のモンスターたちからすれば、勝ち戦への参加。

そういった認識を強く持ち、戦闘者たちへの対処がそちらにも割かれることになると……更にリアルに、国が亡ぶイメージが浮かんでしまう。

とはいえ、今のところ目撃情報はなく、ダンジョンにも現れないモンスターであるため、三人が古龍と激突する予定はなかった。
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